ローソンが「増量、値引き」で大躍進…コンビニ業界「セブン一強時代」の終わりが訪れた舞台裏

創業50周年を迎えたローソンの業績が絶好調だ。2025年2月期では2期連続で過去最高益を記録、25年6月には創業50周年に合わせ、50%増量の「盛りすぎチャレンジ大作戦!」を実施したことも記憶に新しい。 一方で、伸び悩んでいるのがセブン-イレブンジャパンだ。2024年には“上げ底問題”もSNSで話題になるなど割高感が客離れを招いたのか直近1年の業績は前年同期比99〜101%と横ばいだ。 かつて“セブン一強”と言われたコンビニ業界。その勢力図にどのような変化が起こっているのか。 過去最高益に ローソンが発表した2025年2月期決算によれば、営業収益、当期利益、チェーン全店売上高のいずれも前年度に続いて過去最高を更新した。各項目では、営業収益1兆1707億3500万円(前期比7.6%増)、当期利益は599億4400万円(14.9%増)、チェーン全店売上高は2兆8918億円(5.1%増)を記録した。 一方で、セブン-イレブンは足踏みしている。セブン&アイ・ホールディングスの2025年2月期決算によれば、国内コンビニエンスストア事業の営業収益は9041億5200万円(1.9%減)、営業利益は2335億5400万円(6.8%減)に着地した。 振り返れば、1990年代後半から現在まで、コンビニ業界はセブン-イレブン一強の構図が続いてきた。1995年に店舗数でローソンを抜いて首位に立つと、その後は売上も業績も他2社との差を広げていった。2020年には、セブン-イレブンが店舗数約2万1000店・売上高約4.9兆円に対して、ローソンは約1万4400店・約2.2兆円、ファミリーマートは約1万6600店・約3.2兆円となり、セブン-イレブンの独走状態が続いていた。 それが一転、冒頭で示した決算の通り、“一人勝ち”の構図が崩れつつある。 セブン独走が崩れつつある理由 その背景を示唆する興味深いデータが、日経BPコンサルティングが発表した「ブランド・ジャパン 2025」だ。これは国内外の1000ブランドを対象に、「フレンドリー(親近性)」「コンビニエント(利便性)」「アウトスタンディング(卓越性)」「イノベーティブ(革新性)」という4指標で、ブランド価値をアンケート形式で算出。いわば消費者からどれだけ好感度があり、日常づかいされているブランドかを表している。 この中でローソンは、2024年の40位から3位へと飛躍。4位の無印良品、5位のユニクロを抑え、一気に国内企業トップに躍り出た。慢性的な物価高の中でも、増量キャンペーンの『盛りすぎチャレンジ』を敢行するなど、来店客のワクワク感を醸成する施策が奏功した。 対してセブン-イレブンは、2024年の28位から45位にランクダウン。昨年は“上げ底”がネット上でネガティブなトピックになったうえ、グループ企業であるイトーヨーカドーの大量閉店が話題となり、どこか後ろ向きな印象が先行する結果となった。 経営学者の小川孔輔氏は、前出のデータを引用しつつ、業界の勢力図が変わりつつある背景を分析する。 「ローソンは近年、次々と面白い施策を打ち出しており、顧客満足度の向上が顕著に見て取れます。増量キャンペーン『盛りすぎチャレンジ』を筆頭に、弁当やお惣菜を店内調理する『まちかど厨房』、AIによる発注・値引き販売システムの導入、書店併設型やクレーンゲームを設置した店舗、冷凍おにぎりの販売など、良い意味で従来のシステム化されたコンビニ像を裏切る施策が奏功しています。 セブン-イレブンも今年5月に『感謝祭 お値段そのまま!人気商品増量祭』、さらに7月には『おかわりクーポン祭り』を実施しました。しかしランキング結果を見ると、消費者には“後追い”の印象が強く残ったようです。 加えて、セブン-イレブンは今年秋に、『地域共創型店舗』と銘打って、過疎地や高齢化が進む地域への出店を予定しています。これは惣菜やコーヒーの販売や、行政との連携を通して、地域活性化を促進する取り組みを行っていくものです。 ただ、過疎地への出店も、元々はローソンが行っていた施策です(2023年に北海道稚内市に4店舗を出店)。意図的か偶発的かはともかく、ローソンが先んじたプロジェクトをセブン-イレブンが後追いすることで、消費者からは“またセブンがコピーしている”と見えてしまう。 こうした小さな積み重ねにより、業界のリーダーだったセブンの経営がイノベーションに欠ける印象になった。それが顧客イメージや業績にも反映されているのではないでしょうか」 ローソンがコンビニ業界を変える ローソンがいち早く革新的な施策を打ってきた背景には、長年セブン-イレブンの後塵を拝してきた過去が関係している。 「ローソンの担当者に聞けば、かつては、同じエリアでセブン-イレブンとローソンがバッテイングすると、ローソンが圧倒的に競争で負けていたそうです。日販もセブン-イレブンが約70万円に対して、ローソンは50万円台後半と大きく水をあけられていました。 そこでローソンは、加盟店オーナーの手取りや、クルーの働き方を改善させようと策を練るわけです。その一例が、先ほど話した“値引きによるフードロス削減の取り組み”です。 それまでコンビニでは、セブン-イレブンの経営陣を主として、値引きをタブー視していました。売り逃しを防ぐために、ある程度ロスを前提に入れて発注を行い、廃棄分の半分以上を加盟店が負担するのが通例だった訳です。 しかし、世間的にフードロスの問題が取り沙汰されるようになり、ローソンは2019年に「アナザーチョイス」の実験で、消費期限が迫った商品を購入したお客様にポイント還元することを始めます。また同年に、一人のオーナーが独自に値引きの実験を始めます。その後、本部が次世代発注システムを導入するに至り、ローソンでは日販の増加とフードロスの削減が同時に実現しました。 この値引き制度を筆頭に、ローソンでは画面越しにオペレーターが接客する“アバター接客”や、1人のオーナーが複数店舗を経営するMO(マネジメント・オーナー)制度などを導入、セブン-イレブンがリードして作ってきたコンビニの仕組みを大きく変えていきます」 従来コンビニでは、値下げによる粗利減少や、“24時間同じ商品が買える”というブランド価値毀損の懸念から、値引きは敬遠されてきた。 そうしたなかローソンは、加盟店オーナーや従業員の待遇改善を図るため、いち早く値引き制度を実証。ひいてはそれが、売上改善による加盟店オーナーの給与上昇、発注を行う工程の省人化、フードロス削減につながったわけだ。 今後コンビニは“地域拠点”に 2025年6月23日には、高輪ゲートウェイシティに、「Real×Tech LAWSON」の1号店が開業した。店名の通り「Real×Tech LAWSON」は、ロボットによる商品陳列・調理・清掃や、AIによる商品の補充率やスタッフ配置の管理、3Dアバター接客による年齢確認などをはじめ、これまでの先進的な取り組みを集約した店舗となる。 この「Real×Tech LAWSON」を土台として、ローソンは将来的に、買い物が不便な過疎地へ出店攻勢をかけると公表している。人口減が深刻化する地方部に、ドローンによる商材や薬の配送や、訪問看護ステーションや介護相談窓口の併設、自動運転バスや宅配サービスとの連携など、テック技術を搭載した店舗開業を計画。「ハッピーローソン・タウン」構想と銘打って、地域の拠点となる取り組みを進めている。 こうしたローソンの変革は、「今後コンビニとして求められていく姿に近い」と小川氏は続ける。 「今後ローソンは、単なる小売に留まらず、生活を支えるインフラとしての側面を帯びていくでしょう。人口数千人の小さな町や村では今後、役所や医療センター、図書館が担ってきた公的機関をフルスペックで機能させるのは難しくなる。そうした地域で、コンビニが行政などの役割を一部代替し、町の文化やコミュニティに通ずる機能を引き受けることが期待されています。 こうして見ると、『ハッピーローソン・タウン』構想は、かつて昭和の小さな町に点在していた“萬屋(よろずや)”を彷彿とさせます。生鮮食品から駄菓子、金物、おもちゃ、ちょっとした衣類まで、生活に必要なものがなんでも揃っていたうえ、住民が自然に集まる憩いの場所でもあったのです。いずれ長い目で見るとローソンは、地域のハブやコミュニティの中心的な役割を担う業態に姿を変えていくと見ています。 言うなれば“リアルテック萬屋”として進化し、ロボットやAIで自動化、遠隔接客で公的サービスも担い、その分の浮いたリソースで地域の公共事業を支える。ローソンはこれまで競合に追いつけ追い越されだった構図から脱却して、顧客や地域社会のニーズに即していく姿に、コンビニを変えようとしつつあるのではないでしょうか」 コンビニが日本に上陸してから半世紀以上。当初は「近くて便利な小売店」として急速に拡大してきたコンビニは、次第に公共料金の支払い、ATMの設置、宅配便の受け取り、チケット発券などの機能を搭載するようになった。 そして目下、ローソンはより色濃く、生活を密に支える業態として変貌を遂げつつある。一見、仰々しく聞こえるが、直近のローソンとセブン-イレブンの業績を比較すると、今後求められるコンビニ像も変わっていくことが伺える。 「自分が本当に虐待されているように錯覚して…」日本アカデミー賞最年少受賞の「天才子役」が芸能界を去った「本当の理由」

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