「二階VS世耕」第2ラウンド白熱…「思いを一番受け継いでいる」「和歌山の空気を入れ替えてくれ」

 参院選の和歌山選挙区では「二階VS世耕」の第2ラウンドが白熱している。  「地方の課題を引き受け、モデル的にチャレンジしていく和歌山を世耕先生と作っていく」  9日夜、御坊市の商工会館で開いた集会。無所属で出馬した前有田市長の望月良男(53)はこう決意を語った。これに先立ち、前自民党参院幹事長で、衆院議員の世耕弘成(62)は「和歌山の政治の空気を入れ替えてくれ。これが県民の多くが感じている気持ちだ」と熱弁をふるった。  御坊市は歴代最長の5年超にわたって自民幹事長を務めた二階俊博(86)の出身地。世耕はそこに乗り込み、選挙戦で初めて表立ってマイクを握った。  自民派閥の政治資金問題で離党勧告処分を受け、昨年4月に離党。10月の衆院選では、参院からくら替えして同市を含む和歌山2区から無所属で出馬し、俊博の三男で、自民公認の伸康(47)を3万票差で下した。  自民県連は今回、和歌山選挙区の候補者を公募した。世耕に近い望月と伸康が選考に残り、2月に地方議員らが投票した結果は、望月46票、伸康82票だった。  公認を得た伸康は、靴底がぼろぼろにすり切れるまで1人で大票田の和歌山市内で辻立ちを行った。父の「候補者はもがいている姿を見せるものや」という言葉を実践した。  公示後は組織戦を展開しており、8日夕には御坊市内のJA(農業協同組合)の施設で「パンダの繁殖研究の再開を目指して、動きたい」と力説した。  白浜町のテーマパークで飼育されていたジャイアントパンダ全4頭は6月に中国に返還されたばかりだ。中国と深いパイプを持つ父を見習って、パンダを呼び戻す決意を示した。  応援に駆けつけた首相の石破茂(68)も「二階先生の思いを一番受け継いでいるのが伸康さんだ」と持ち上げてみせた。  衆院選から続く保守分裂は、修復不可能な段階まで進んでいる。  望月は公募の際、「選ばれた候補を応援する」とした誓約書を県連に提出しており、参院選には離党届を提出して臨んだ。同様の誓約をしている自民の地方議員は処分を恐れてか、表で望月を推す動きは見られない。  代わりに世耕の秘書らが全面支援に回り、世耕は「比例は公明」と呼びかけ、自主投票を決めた公明党に秋波を送っている。  伸康は農業や建設業などの支持固めを徹底する。連立を組む公明の推薦は得られず、伸康の演説会に参加した元県議は「石にかじりつき、はいつくばり、泣きながら、戦う以外ない」と訴える。  選挙戦では別の不安要素も降ってわいた。地元選出で伸康を支える参院議員の鶴保庸介(58)が8日、和歌山市の演説会で「運のいいことに能登で地震があった」と失言したことだ。  陣営の危機感がピークに達すると、俊博が動き出した。10日に世界遺産・熊野那智大社のある那智勝浦町、11日には田辺市を相次いで訪問し、「みんなで力を合わせてやりましょう」などと頭を下げた。  幹事長の森山裕(80)は15日、みなべ町での会合で、世耕や望月陣営を念頭に、こうくぎを刺した。「弘法大師が真言宗をお開きになった和歌山にふさわしい政治行動が行われることを願う」  一方、野党は立憲民主党と日本維新の会が候補者を一本化したものの、協力態勢までは築けなかった。  維新新人の浦平美博(53)は9日、和歌山市の街頭で「社会保険料の問題にしっかりとメスを入れない限り、手取りが増えない」と声をからした。  立民は、維新が野党候補を一本化するために提唱した「予備選」に応じ、公認候補予定者を取り下げた。全国でほかに実現したのは岐阜だけだ。世論調査の上位者を勝者とする仕組みで、敗者に応援義務はない。  維新共同代表の前原誠司(63)は7日、同市に応援に入った際、こう強調した。「二階、世耕両氏の代理戦争はもう懲り懲りだ。政治の流れを変えよう」  とはいえ、立民と維新の協力もうまくはいかなかった。維新内には立民の支援を期待する向きもあったが、浦平を応援する動きは見られない。自主投票を決めている立民の支持母体である連合和歌山の幹部も「維新は大阪で公務員労働組合とバチバチやった。票は行かないだろう」とみている。(敬称略)(太田晶久、和歌山支局 豆塚円香)

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