品川区役所で「部長級3割がパワハラを経験」…!「超ポジティブ思考」森澤恭子区長(46歳)のもとで何が起きているのか…疲弊する「区役所幹部の実態」

学校給食、制服、修学旅行の無償化など「子育て支援策」を次々に打ち出して人気の高い森澤恭子品川区長(46歳)の足元でパワーハラスメントが進行し、区政を揺るがせている。 6月27日の令和7年第2回定例本会議ではこの問題が取り上げられ、西本たか子議員(無所属)が、「議会として見過ごすことができない。第三者委員会の設置を求めます」と追及した。奇しくも森澤区長は、『AERA』(朝日新聞出版・7月14日号)の看板企画「現代の肖像」に登場し、「超ポジティブ思考の前向きな政治家としての姿勢」を評価されている。光と影が交錯する森澤区政を追った——。 部長級3割がパワハラを経験 パワハラの発覚は、75年の歴史を誇る自治体専門紙『都政新報』(6月10日付)が、「部長級3割がパワハラを経験」と報じたことだった。区が昨年実施した「ハラスメントに関するアンケート調査」をスッパ抜いたもので、部長職がパワハラによって強いストレスを感じていることが窺える。 約3割が「人前での感情的な叱責」を受け、約2割が「あいさつや話しかけを無視」され、「身体を小突く、ものを投げつける」といった行為についても全ての階層を上回ったという。 局長職のない品川区では一般行政職のトップが部長であり、構成比は全職員の約1.4%で人数は20数名に過ぎない。役人人生の最終章にあたる50代後半で、普通ならパワハラをすることはあってもされることはない。 上司といえるのは、森澤区長、都庁出身の新井康副区長、区職員OBの堀越明副区長の3名のみ。西本議員もこのことを重視して「部長級の上司となれば、区長、副区長ということになります。該当者は3名ということです」とパワハラ対象を絞った。 本会議で追及された森澤区長は、次のように答弁した。 「29.4%の部長職が『されたことがある』と回答した項目がございました。この結果については真摯に受け止め、ハラスメントのない1人ひとりがその持てる力を発揮できる働きやすい職場環境の整備に引き続き努めていく所存です」 また森澤区長は、ハラスメントの防止と対応についてこう続けた。 「人権ジェンダー平等推進課や人事課等に内部相談窓口を設置しているほか、令和5年からは新たに弁護士による外部相談窓口も設置しております」 体制は整えているということである。ただ、パワハラにせよセクハラにせよ、ハラスメント問題の調査は難しい。兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラや贈収賄疑惑を記した内部告発文書をマスコミなどに提供した元幹部が自死し、その後、今につながる混乱に発展したように、何があったかを正確にあぶり出し、正しく処分するのは容易ではない。 調査する側とされる側の力関係によって事態は容易に変わる。また告発が取り上げられず、逆に権力者に恨まれて左遷などの憂き目に遭う可能性もある。 干された幹部もいる 区議会でパワハラ対応に関して答弁に立った区長室長は、アンケート結果が所管部局の了承なくして外部(都政新報)に流出したことは問題だとして、「地方公務員法第34条の規定(公務員の守秘義務)に抵触するものとして、区として厳正に対処する」と告発者を牽制した。 従って、報ずるにあたりメディア側も神経を使う。筆者はこの問題に関して取材を続けた結果、パワハラが生じた経緯とその詳細について納得できる証言を得ている。しかし、誰がどの局面で誰に対してどのような発言を行ったかを記すことはできない。プライバシーが絡む上に2次被害が発生することもある。 ただ、その“詰め方”は相当に激しい。部長級幹部が語る。 「口答えは許されません。『文句を言わずにサッサとやれよ!』と突き放され、難しさを口にしようものなら『才能ないな!』『なんとかするのがお前の仕事だろ!』と面罵される。もっと怒ると目が血走り、口を利かずににらみつける。その挙句に遠ざけられ、干された幹部もいます」 ソフトな人当たりと包み込む笑顔で知られる森澤区長が直接、パワハラに走ることはないしその必要もない。それは区長を支える幹部の側の仕事である。幹部OBは、「その構図を理解するには区政の歴史を知る必要がある」という。 「今の職員は、区政を熟知する区役所職員上がりの区長の元で働いてきました。1987年から5期務めたのが終戦直後に区役所に入所して、総務部長を経て助役を経験した高橋(久二)さんで、その後任が2006〜2022年10月まで4期務めた濱野(健)さん。濱野さんは企画部長などを経て高橋区政の最後に助役を務めていました。 区政を隅々まで熟知した二人の区長と違い、森澤さんは都議を6年やっただけの人。区政はわからず、手足となる側近も頼りになる指導者もいない。副区長などの幹部を頼らざるを得ない」 森澤区長の独自政策 森澤区長は日本テレビで記者職を経験、PRコンサルタント会社のトレンダーズ、不動産の森ビルなどを経て、一時、専業主婦となった。その後、小池百合子東京都知事に惹かれて「希望の塾」の塾生となり、都民ファーストの会公認を得て、2017年、都議選品川選挙区でトップ当選を果たした。 運営を巡る意見の相違から都民ファーストの会を離れ、2期目は無所属で立候補して2位当選。それも束の間、濱野退任を受けて行われた品川区長選で混戦を勝ち抜き2022年12月、品川区長となった。 「身内が区長」に慣れた区職員にとっては、初めて迎える外様の区長で、しばらくは「様子見」が続く。動き出したのは2023年10月、都庁で政策局部長だった新井氏を副区長に迎えてからで、次第に「森澤色」が出せるようになった。最初は2024年1月に発表した「ウェルビーイング予算」だろう。 品川区の全事業を点検のうえ再評価し、一部事業を見直して予算を縮小。捻出した資金を区民の幸福感に向けた事業に振り分けた。コロナ対策で高評価を得たニュージーランドの女性首相アーダーン氏(当時)が提唱したもので、ウェルビーイングとは心身ともに満たされた状態を意味する。品川区では区立小中学校の学用品の無償化、大災害への備えとして携帯トイレの配布などに使った。 今年2月の施政方針演説で「弱者を生まない社会の仕組み」を訴えた森澤区長が、現実策として区民に提供しているのが「子育て支援」だ。昨年10月26日、都内で開かれた「朝日地球会議2024」(朝日新聞社主催)で講演し、小中学校の学校給食費の無償化や前述の学用品の無償化に加え、区内の全小学校での「朝の学童保育」、区内在住の大学生に対して所得制限のない「給付型の奨学金制度」の創設などを発表した。 その後も、中学校の制服や修学旅行費の無償化(いずれも所得制限はなし)と子育て支援は続く。 ただ、今年2月5日の「給食の全野菜を有機農産物(オーガニック)にする」という発表は、やり過ぎ感があるとして評判が悪く、ホリエモンこと堀江貴文氏が「税金の無駄遣い。首長が勝手に自分の家でやればいい」と批判した。 部長級幹部の疲弊につながっているとすれば… とはいえ、「女性目線の子育て支援」は朝日の論調と親和性が高く、朝日新聞は森澤区政をもれなく好意的に伝えるし、品川区は「朝日地球会議」に440万円を支出し協賛している。その延長線上に『AERA』の「現代の肖像」があるというべきだろう。 もちろん助役が区長となり、予定調和のような手堅いが面白みも独自性もない区政に比べ、森澤色あふれる区政には魅力がありメディア受けするし、それが区民のウェルビーイングにつながるのであれば言うことはない。ただ、それが部長級幹部を疲弊させるパワハラにつながっているのだとすれば、大いなる矛盾である。 「気持ちが区民ではなく、区長や副区長などに向かい顔色をうかがっている。その結果、よどんだ職場環境になっている」(区幹部職員)というから深刻だ。 任命責任も含めパワハラ環境の責任は森澤区長に着せられる。そこで戦略広報課を通じて森澤区長宛に質問書を送り、書面での回答を得た。 まず、『都政新報』や議会で指摘されたハラスメント環境について。 〈個別具体のハラスメント被害を申し出る庁内および外部第三者窓口には、そうした事実や端緒を示すような情報は寄せられていません〉 ——「逆らって飛ばされた」という事例も指摘されるなか相談窓口に駆け込む部長職はいるだろうか。いればその人数を示されたい。 〈逆らって飛ばされた、あるいは(区長に)逆らった、といったケースは、少なくとも現区長就任以降、見当りませんでした。なお、部長職からの上司に関する訴えの件数は0件です〉 ——朝日新聞との関係が密接で「朝日地球会議」にも協賛しているが、それが互いの“支援”につながっていないか。 〈朝日地球会議は朝日新聞社のメディア事業本部より講演の依頼を受けたものです。編集部門は事業部門とは独立した存在として編集権を有しており、「優遇」や「支援」はなく、当区についても「特定メディアを使った情報戦略」は一切、行っておりません〉 組織も人も「光」があれば「闇」もある。パワハラを生む土壌があるとすれば、その「闇」を解き明かすべきだが、それを自分たちの手で行うのは難しく、メディアも名誉毀損や2次被害を怖れてなかなか踏み込めない。西本区議は「第三者委員会の設置」を要求したが、確かに区との関係がまったくない第三者の手で解明されるべき段階にきている。 あわせて読む『【独自】《松井一郎は呆然》「乳首に歯型つけられた」「キスマークだらけ」…大阪維新の議員が告発された「ヤバすぎるハラスメント行為」の中身』 【独自】《松井一郎は呆然》「乳首に歯型つけられた」「キスマークだらけ」…大阪維新の議員が告発された「ヤバすぎるハラスメント行為」の中身

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