熱中症による救急搬送者が1週間で1万人を超えた。総務省消防庁の発表によると、6月30日〜7月6日までの全国の熱中症による救急搬送者数は10048人、そのうち8人が死亡した。また搬送者の構成比では65歳以上の高齢者が全体の約6割、18歳以上65歳未満の成人が3割強、18歳未満が1割弱。半数近くが65歳未満なので、高齢者ばかりが気をつけるものでもない。 【写真】まさか! 人気のひんやり系「熱中症対策グッズ」で逆にリスク増大してしまう場合も!? 2年連続で“観測史上もっとも暑い夏”となった2023年、2024年の夏。今年2025年はこの2年間には及ばないものの、平年よりは気温が高く、最高気温が35度以上の猛暑日が続くことが予想されている。梅雨明け後には、熱中症による救急搬送者数が約1.5倍に増加した昨年の例もあり、これからの暑さに備えて、より一層、熱中症対策に注力をせねばならないようだ。 スポドリをイッキにゴクゴク! 夏にCMで見かけそうな光景だが… 「熱中症は高温環境で体温調節がうまくいかず、体温が異常に上昇することで生じる健康障害の総称です。熱中症の予防には、こまめな水分・塩分補給や、涼しい環境で過ごすこと、暑さを避けること、衣服を工夫すること、適度な運動と身体づくりやこまめな休憩、熱中症指数や気温・湿度をチェックすること、睡眠環境の工夫などが求められます」 そう教えてくれたのは、同志社大学生命医科学部の市川寛教授だ。 甘い飲み物は“がぶ飲みキケン”! 「熱中症を引き起こすきっかけとなるのが、体内の水分や塩分が不足した状態、つまり脱水症ですので、こまめな水分・塩分補給は重要な項目となります。ただし、熱中症にならないようにと、連日スポーツドリンクをがぶ飲みするのは危険。“ペットボトル症候群”を引き起こすおそれがあります」(市川教授、以下同) がぶ飲みで発症してしまうペットボトル症候群とは。なにやらおそろしげな名前だが……。 「コーラなどの炭酸飲料、ジュース、缶コーヒー、そしてスポーツドリンクなどの甘いソフトドリンクを大量に摂取することで発症する病気で、糖尿病によく似た症状が起きます。別名をソフトドリンク・ケトーシス、または清涼飲料水ケトーシスともいいます」 例えば、500ミリリットルのペットボトルの『コカ・コーラ』には角砂糖17個分、意外だが、代表的なスポーツドリンク『ポカリスエット』にも角砂糖10個分の糖分が含まれている。スポドリなどは甘い飲み物という認識もなく健康的なイメージで、ついつい水代わりに何本も飲んでしまう人も多そうだが……。 「基本的な症状は糖尿病と同じ。軽度では倦怠感やイライラ感、重症化すると意識障害が起こります。また過剰な糖質を薄めようと身体が水分を欲してのどが渇きますが、ここで甘い飲み物を飲んでしまうと悪循環です」 連日2〜3リットルの清涼飲料水を飲んでいた男子高校生が、重篤な意識障害を起こし即入院となったことで、その危険性が世に知られることとなったペットボトル症候群。ペットボトルからのがぶ飲み、イッキ飲みをしがちな10代〜30代男性はとくに注意が必要だ。 「最悪の場合、昏睡や死亡にまで至ることも。意識障害や昏睡で搬送された場合は、糖尿病と同じ、インスリンの点滴による治療をします。軽く考えず、まずは受診させることをおすすめします」 1日の水分の出入りは2.5リットル 厚生労働省の『健康のため水を飲もう講座』によれば《体重60キロの成人男性の場合、約36キロが水分》であり、1日の水分排出量は《尿・便1.6リットル、呼吸や汗0.9リットル》の計2.5リットルだ。それに対して、1日の水分摂取量は《食事1.0リットル、体内で作られる水0.3リットル》、計1.3リットルなので、意識して飲むべき(足りていない)水分量は《1.2リットル》となる。その“1.2リットル”はいったいどんな水分をとるべきなのだろうか? 「例えばイッキ飲みで血糖値を爆上げするとかでなければ、スポーツドリンクでも大丈夫ですよ! ポイントは“こまめに少しずつ飲む”ということ。がぶがぶ飲みがちな人ならスポーツドリンクなら粉で買ってきて、薄めに作っておくなども手かもしれませんね」 スポーツドリンクの粉を薄めて飲む方法は家計的にもありがたい。“少しずつ飲めば”発症しないというなら、より糖質の多い『コカ・コーラ』や缶コーヒーなどでも大丈夫? 「コーラでもコーヒーでもなんでも、甘いからといって避けるよりは、水分としてとったほうがいい。ただし少量ずつですが。この猛暑では脱水になってしまうのが一番怖いですからね。ただしコーラ・ゼロなどの人工甘味料を使ったものは、長い目で見るとその他の病気の原因になる。生体に悪影響がありますから。ゼロカロをうたうものは、なるべくちょっと……自分なら避けます(笑)。熱中症などの脱水症状によいとすれば、麦茶や水、それに梅干や塩分チャージの飴ちゃんなどをとるのがいいですよ!」 なにより怖いのは脱水だという。尿の色が濃い、尿が出ない、水分が飲めなくなってくるのが脱水症状のサインだ。 「さらに脱水が進んで、頭痛がして体温が上がってくるなどすると、いろんな臓器がやられてしまう。外で働く若い人はまわりから健康そうに見られてしまって危ない。高齢者も遠慮しがちな人が多く、救急車を呼びたがらない。どちらも外から見て異常を感じたら、一刻も早く受診させてあげてほしいです」 デイリー新潮編集部