生活苦にあえぐ現役世代が「自公」「立民」ではなく「参政党」を支持する理由…もはや「無為無策」と「現状維持」に耐えられないという切実な声

 第1回【エンゲル係数は43年ぶりの高水準で「世帯年収1000万円超」でも“生活が苦しい”…参院選を左右する「日本が先進国ではトップクラスの貧困層」に転落した背景】からの続き──。参院選は7月20日に投開票が行われる。XなどのSNSでも選挙を巡って“舌戦”が盛んだが、興味深い動きがある。(全2回の第2回)  *** 【写真を見る】「暴れん坊将軍みたい」と言われたという神谷氏の和装姿。オレンジではなく意外なカラーの着物で登場  SNSでは与党の自民党と公明党だけでなく、野党第一党の立憲民主党も全て“反日”と決めつけ、3党を激しく批判する投稿が相当な数に達しているのだ。  その論調は極端に国粋主義的なものが多い。3党は長い歴史を持ち、支持基盤も強固だ。つまり新興政党や泡沫政党でないからこそ、一部の有権者が強い不信感を抱いていると考えられる。担当記者が言う。 参政党の神谷氏 「Xに3党の名前と『消費税』の単語を加えて検索すると、今度は生活苦の観点から批判する有権者の存在が浮かび上がります。自民党と公明党は公約で消費税減税に触れず、自民党は給付金を前面に打ち出しています。立民は『原則1年間、食品にかかる消費税をゼロ』と訴えていますが、国民民主党や参政党ほどは強く減税を主張していません。この結果、生活に苦しむ有権者は3党を批判しているのです。中には『3党が参院選で勝利すると、大連立を組んで消費税増税に踏み切る』と、少なくとも現時点ではデマと言わざるを得ない投稿も拡散しています」  自民党と公明党だけでなく、立憲民主党も現役世代の支持を集められていない。なぜ3党に批判が集中しているのか、政治アナリストの伊藤惇夫氏に話を聞いた。 「まず与党の2党に関しては、“失われた30年”のツケが一気に回ってきたということでしょう。景気浮揚という観点を考えれば、現在に到るまで与党2党は全くの無為無策です。例えばアメリカではこの30年間で賃金は約2・8倍、イギリスも2倍強の上昇となりました。両国の国民は激しいインフレに悩まされているとはいえ、日本の生活苦に比べれば賃金上昇のメリットも享受できていると言えます」 大企業だけを優遇してきた与党  日本の場合、大企業の社員だけなら賃金は上昇している。だが中小・零細企業では非常に厳しい状況だ。そして中小・零細企業で働く人のほうが圧倒的多数派であることは言うまでもない。  2001年、日本の一人あたりの名目GDPは世界5位だった。ところが2024年には世界38位まで転落してしまった。  伊藤氏は「一人あたりのGDPを見れば、改めて与党2党の無為無策が浮かび上がります。ただし、これまで有権者は無為無策を許す傾向があったことも事実です」と言う。 「経済がデフレ基調だったので物価が比較的安く、有権者は賃金が据え置かれても何とか生活が成り立っていました。今回の参院選で有権者が強い怒りを表明するようになったのは賃金が上昇しないことに加え、新しく物価高が襲いかかったからです。さらに与党は大企業だけを政策で優遇し、国民生活には冷淡だったことも事実でしょう」  自公両党が大企業だけを優遇してきた証拠として、伊藤氏は内部留保と補助金の問題を指摘する。 「大企業は収益を得ても国内投資には回さず、社員にも還元しませんでした。ひたすら貯め込んだことで内部留保が増加し、与党2党はこれを座視していたわけです。ならば『内部留保の積立は企業の自由であり、政治は無力なのか?』と問えば、もちろん『違う』という答えになります」(同・伊藤氏) 自民と立民の共通点  与党が内部留保を投資に回させる政策を示せなかったのは単に大企業に配慮し、立案しなかったからではないか──? 「さらに、政府は今でも数兆円単位の租税特別措置という名の補助金を大企業に出しています。打ち切れば財界から猛抗議が来るのは当然でしょう。しかしながら大企業の財務状況を見れば、政府の支援が必要なはずもありません。補助金をカットし、その分を国民生活の底上げのために回すことは検討に値するはずですが、与党が補助金見直しに手を付ける気配は全く感じられません」(同・伊藤氏)  一部の有権者は与党の自民党と公明党を批判するだけでなく、野党の立憲民主党にも強い不満を訴えている。これは支持基盤に原因があるという。 「立憲民主党の支持基盤は労働組合の連合であり、それも国家公務員・地方公務員・公共企業体職員などの労働組合、いわゆる官公労が中核です。官公労は公務員の利害を重視しますから、ある面では与党より安定志向であり、保守的な政策を好んで改革には否定的という傾向もあります。官公労の立場から考えると、消費税は現状のままが一番いいのでしょう。結果、立憲民主党は生活苦を実感している“民間の現役世代”が関心を持つような政策ビジョンを提示できていないのです」(同・伊藤氏) ビジョンを示さないトップ  参政党や国民民主党は政党の規模が小さく、関係団体とのしがらみも少ない。そのため大胆な政策を掲げることができる。ただし、その分、実現性は低いという弱点を持つ。 「特に参政党の主張には首を傾げるものも目立ちます。しかし参政党の支持者に『あなたの支持政党は間違っている』と指摘することは可能かもしれませんが、参政党を支持する有権者の気持ちは相当数の人が理解できるのではないでしょうか。なぜ参政党が躍進しているのか、これは結局、自民党がだらしないからでしょう。失われた30年を招いてしまった責任について何も総括していません。さらに私が注目したいのは、最近の自民党総裁は国家に対するビジョンを打ち出せていないことです。例えば田中角栄さんは賛否両論ありましたが日本列島改造を主張し、日本海側と太平洋側を交通網で結ぶ“国家改造”を提唱しました。大平正芳さんは田園都市構想を発表し、都市部と農村部の連携を訴えました。近年の自民党総裁は『私は日本をこういう国家にする』という強い意欲が感じられないリーダーばかりになっており、これでは有権者の支持を得られなくて当然だと思います」(同・伊藤氏)  石破首相の責任も大きい。特に総裁選の時に繰り広げていた主張を全て“封印”してしまったことで有権者の失望を招いてしまった。 石破首相の判断ミス 「党内で支持基盤の脆弱な自民党総裁は、首相になると世論を味方に付けるのが政治の常道です。総裁選の時、石破さんの主張に耳を傾ける有権者は決して少なくなかったはずです。ところが総裁選に勝利すると、石破さんは党内の支持基盤を固めるために妥協し、自分の主張を引っ込めてしまいました。従来の総理総裁と同じ政策スタンスを無批判に踏襲したことで、落胆した有権者は相当な数に達しました。この判断ミスにより、現在に至るまで石破内閣と自民党支持率が伸び悩んでいると考えられます」(同・伊藤氏)  第1回【エンゲル係数は43年ぶりの高水準で「世帯年収1000万円超」でも“生活が苦しい”…参院選を左右する「日本が先進国ではトップクラスの貧困層」に転落した背景】では、年収が高い世帯こそ生活に苦しみ、参院選の投票行動に大きな影響を与える可能性について詳細に報じている──。 デイリー新潮編集部

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