14日、日本の企業の性的マイノリティーを取り巻く状況についての勉強会が開かれ、105の企業・団体から153人（オンライン含む、主催者発表）が参加しました。経営者の対談では、多様性の取り組みに厳しい姿勢を見せるトランプ大統領の政策に対する経営者たちのさまざまな声が聞かれました。 ■DEI（多様性・公平性・包摂性）とビジネスを議論「人権の問題、ぶれてはいけない」 勉強会を主催した「レインボービジネスネットワーク」は、企業同士が、性的マイノリティーに寄り添い支援する“アライ”企業としてつながることを目指し発足し、勉強会は今回5回目を迎えました。今回は、特にアメリカの状況を念頭に、「多様性・公平性・包摂性」を表す「DEI」に関する企業のアクションの現状について、登壇者らが語りました。 「DEIと経営」をテーマに行われた経営者の対談には、企業や団体の“格付け”を行うムーディーズ・ジャパンの代表取締役をつとめる清水直樹さんと、パナソニックコネクト株式会社の代表取締役CEOである樋口泰行さんが登壇しました。 アメリカ社会での反DEIの動きの広がりについての質問に対し、樋口さんは「なんのためにDEIをやっているかというと、基本的な人権の問題だからというのと企業競争力の2つ。“反DEI”というのは、“反人権”っていうことですか、と。これはもう、どんなシチュエーションでもどんな時でも、一貫した考えで守らなければならない。こと人権になると、それはぶれてはいけない」と述べました。 ■「いったん“一時停止”」「今は耐える時」米企業の苦しい胸の内も 司会者から、「トランプ大統領の発言により、かなりの企業がDEIをやめたり縮小したりというニュースがあったが、ビジネス上そういうことを変えないとまずい、というような話がアメリカから来たり、社員や経営者たちから質問が来たりしましたか？」という問いに対して樋口さんは、「それは全くないですね」とした上で、「報復が怖くてトーンを落としてしまうということはわからないでもない。特にそれによって会社がつぶれちゃう、対応しなかったらつぶした人になっちゃうみたいな感じだと、それによって社員も不幸になっちゃうけど、そこまでいかないケースだったら、それに屈するのはちょっと情けないな、と思いますね」と話しました。 ムーディーズ・ジャパンの清水さんは、アメリカに本社を置く会社という自社の状況に触れた上で、「より政府の意向が、息が吹きかかっているのであまり悠長なことは言えなくて、やはり姿勢としてはいったん“一時停止”。やめたわけでは全然なくて、後退しているわけでもなくて…」と、難しい判断が迫られる米国の現状について本音を吐露しました。その上で、当事者の社員たちは「正直あまり心配はしていない。会社が一生懸命、対外的に気をつかいながら、今は“耐える時”なんだねっていう教育は行きわたっていると私は見ています」と話しました。 ■先進的な企業の取り組みも紹介「当事者が声をあげられる環境が大事」 勉強会の後半では、性的マイノリティーに対して先進的な取り組みを実施している企業の担当者らが登壇しました。性別適合医療を受ける社員に対して休暇や費用のサポートを行うなど、長年にわたり性的マイノリティー当事者に対して先進的な福利厚生制度を実現してきたセールスフォースの嶋ピーターさんは、「当事者の従業員が声をあげられるいい環境になってきている。それが大事」と話しました。