夫のせいで認可保育園に入れなかった妻の冷静な反撃。我慢し続ける生活からの脱却

相談者の傷ついた心もサポートしたい 「依頼者の今後の人生を、より良いものにするために、傷ついた心のサポートをしたい。そこで探偵になるために心理を学んだのです」 キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんはメンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。 探偵が心理アドバイザーやカウンセラーの資格を持つ理由は、山村さんが探偵になりたかった理由が「困っている人を助けたい」と思ったからだ。調査をして、その結果を出すだけではなく、依頼者によりそって必要ならば医師や弁護士といった専門家を紹介し、困っている人がよい人生に向かうように考えている。そのためにも依頼者と向き合う時点でメンタルケアの知識が必要なのだという。 2025年7月6日、フジテレビ系で『検証 フジテレビ問題 〜反省と再生・改革〜』が放送された。専門知識を持っていないアナウンス部の部長が被害女性の窓口を一任されたことが改めてクローズアップされ、第三者委員会の指摘通り、間違いだったと反省する部分があった。メンタルケアは専門的知識に基づいて行う必要があるからだ。 山村さんににはパートナーの浮気調査依頼が多い。苦楽や人生を共にし、信頼している相手からの浮気という裏切りは、心に深いダメージを与える。そして、事実を知った後も、人は生きていく。山村さんは、ダメージから立ち上がり、前を向くための手助けをするために、心理カウンセラーの資格を取ることにしたのだ。 「探偵はカウンセラー」の連載でクローズアップするのは、心の問題だ。個人が特定されないように配慮をしながら、多くの人のヒントとなる実例を紹介していく。 今回山村さんのところに相談に来たのは40歳の会社員・由美さん(仮名)。彼女は、2歳の娘を通園させている無認可保育園の閉園が決まり、次は認可保育園に入れたいと考えている。しかし、夫は最初の保育園申請時に就業証明書を出さず、それによって認可保育園の申請ができなかった。今回も協力を求めても無視される可能性が高い。さらに「夫が私と娘の生活費を10万円減額し、女性にハイブランドのプレゼントを購入したんです。これは、浮気だと思います」と山村さんに連絡をしてきたのだ。経済DVやモラハラの匂いもする中、2歳の娘と共に健やかに生活できるようになるために必要なことは。 モラハラの連鎖 今回の依頼者・由美さんは、一度結婚後に夫の求めで妊娠を機に専業主婦となり、このままでは危ないと産後仕事をみつけたガッツのある人です。夫は5歳年上の45歳で外資系メーカー勤務。結婚5年で2歳の娘がいます。由美さんと夫は10年前に同郷の友人が主催する飲み会で出会い、5年間の友人期間を経てコロナ禍を機に結婚します。 3年前に妊娠し、切迫早産になったことと、特別退職金が出るタイミングが重なり、それまで勤務していた大手企業を退職し、専業主婦になりました。住まいは夫の持ち家であるマンション、光熱費は夫持ち、それに加えて生活費20万円を渡されるという、ゆとりある生活でした。 しかし、そこからモラハラがひどくなります。 夫は専業主婦である前に、切迫早産になった妊婦の由美さんに「どうせ、仕事していないでしょ」という言葉を投げつけて家事を丸投げ。さらに、「仕事をしているよりは楽でしょ」と、夫の母の心のケアも任せてきます。 義母は、モラハラの夫と、無理解の一人息子である由美さんの夫の中で孤立して生きてきました。それまでの孤独を埋めるように、由美さんには1日に何十回もLINEして、気持ちを吐き出してきたのです。由美さんはそれも受け止め、寄り添います。 娘が生まれても義母のLINEは相変わらず、加えて夫に存在を軽んじられているように感じたこともあり、由美さんは社会復帰を決意。1年前に就職活動を始め、3ヵ月目にして今の会計事務所にパートとして採用されます。 産後の仕事復帰は保育園入園とセットが必須です。認可保育園入園のために由美さんは夫の就労証明書を頼みましたが、「明日するよ」と先延ばしにし、結局取ってきてくれず入ることができませんでした。その結果、無認可保育園に入れましたが、保護者の就労証明が揃っていないと、補助は受けられません。 しかも由美さんが働き始めうると、「生活費、10万でいいでしょ」と夫は家に入れるお金を減額。不満を抱えていた由美さんは、その時に夫に離婚話を持ちかけます。すると夫は「絶対に離婚しない」とキレて暴れたのです。 由美さんが離婚を考えたきっかけは、生活費減額もありますが、それと同時に夫の作業机の上にハイブランドの紙袋を見たことがあります。由美さんはそれを見て、自分へのプレゼントだと思いましたが、夫は「身の程を知れ! これはお前みたいな女が持っていいものではない」と一喝。袋を持って出勤した日の帰宅は遅く、ポケットの中に長い髪の毛が入っていたのです。 夫が浮気をしていることを、7ヵ月も抱え続けた由美さんの心は傷つき、疲れている。きちんと有責を認めさせた離婚を実現するためには証拠をそろえなければなりません。 仕事のあとにビジネスホテルに… 由美さんにいただいた画像を見ると、夫は小柄で細く、繊細そうな印象です。頭髪はやや薄くなっていますが、軽くパーマをかけたヘアスタイルと、銀縁メガネが醸し出す雰囲気もあり、哲学者や研究者といった雰囲気です。 ひとまず、夫が遅くなる金曜日に、自宅である低層マンションで張り込みを開始します。夫は朝8時に出てくると、10分かけて駅に向かい、都心に向かう電車に乗ります。そして横浜近辺のオフィス街がある駅で降りると、ひとつのビルに入って行きました。 15時にビルから出てくると、駅前のシェアオフィスのブースで作業をしています。ここは会員の企業でないと入れない施設なので、私たちは1階のエントランスで待機します。18時に出てきた夫は、そのまま電車で都心に向かい、新橋駅の近くにあるビジネスホテルにチェックイン。 夫が一人だと思っていたら、横からスッと黒髪の女性が合流し、寄り添うようにエレベーターへ。私たちがそこに乗り込んだからでしょうか、2人は無言。ただ、しっかりと手を握っていました。 夫が用意していたブランドの財布を 夫も女性も160センチ程度の同じ身長で、女性の方は鍛えているのか、スタイルがよく、腕には筋肉の筋が走っていました。二人は周りを気にすることなく、同じ部屋に入って行きます。 集音と録音の設備を整え、私たちも近くの部屋にチェックイン。女性と夫の性交渉を行っている音声、お互いの名前を呼んでいるところなどを確認できました。 22時に女性が出てきたので、私が後を追います。ペアの探偵は、22時30分に出てきた夫を尾行。夫は1万円程度のホテルのデイユース費用を精算し、電車で自宅に帰りました。 女性は、地下鉄に乗り、下町方面にある駅で下車。電車の中で見ると、女性は40代半ばといったところ。いかにもキャリアウーマンで、持っているものは全てブランド品でした。 女性が持っていた新しい財布が、由美さんが見かけたブランドのものだったので、夫のプレゼントだと察知。公式サイトで値段を調べると、7万円もしていました。自分の妻である由美さんには、生活費を10万円減額し、浮気相手には7万円の財布と、ホテル代を出す。いったいどういうことなのだと思ってしまいました。 女性は古いマンションに「ただいま」と言いながら入って行きます。ここは外階段でオートロックがありません。しばらく外で動きを見ていると、頭髪が寂しくなった小柄な男性と女性が犬を連れて出てきました。2人は夫婦のようで、1キロほど自宅周辺を周り、コンビニで水やアイスクリームを購入して家に戻りました。 由美さんにこの話をすると、「毎週金曜日に遅いので、きっとこの女性と会っていると思います」と怒りと悲しみを抑えたような声で話していました。音声を取ったとはいえ、ラブホテルではなくビジネスホテルの浮気は、不貞として認められない可能性もあるので、法廷で争う場合に備え、2回の証拠を取ることにしました。 そこで、翌週の金曜日は、夫の会社の前で同じように張り込み、撮影と録音に成功。ただ、2回目は、女性が「あのしょぼいホテルは嫌だ」とより高級なホテルに入りました。夫はデイユース使用に2万円以上も支払ったのです。 由美さんは「こんな女性のために、私は7ヵ月も苦しんでいたのですね」と泣いていましたが、どこかすっきりした印象でした。 追加で女性のことを調べると、夫が新卒で勤務していた日本系機械メーカーの同期で、1年前から男女の関係にあることがわかりました。女性は結婚しており、高校生の娘がいます。 「私が我慢すればいい」と思ってた 由美さんは、「実際に写真で見ると、すごい軽い。浮気ってすごく軽いんですね」と冷静に受け止めていました。浮気の証拠を得て、感情的になって、夫と接してしまうと、離婚の交渉やその後の人生が、望むようにならないことが多いです。そのことを由美さんにも説明をしました。由美さんはひたすら冷静に事態を把握していました。 「調査を頼んだときは、離婚したい一心で証拠が欲しかった。慰謝料と養育費をもらって、別れたかったんです。でも、こんな女性のために、私と娘の人生が不安定になるのもバカみたい」 また、女性が夫に対して、わがまま放題ともいえる態度をとっていたことにも何か感じることがあったようです。おそらく、由美さんは「自分だけが我慢すればいい」というマインドで、すべてを受け入れてしまうところがあります。 聞けば、義母の愚痴LINEの問題、夫が就労証明書を会社に申請しないこと、生活費を減額することなどに対して、明確な抗議をしなかったそうです。 「私は3人きょうだいの長女だったこともあり、母から、“我慢しなさい”“反論はするな”と言われて育ちました。我慢しないと食事を抜かれたり、叩かれたりしていたので、“自分の意見は言ってはダメだ”と思い込んでいたところがありました」 産前に勤務していた大企業でも、いろんな人の仕事を引き受けてしまい、パンク状態で退職したことも話してくれました。 「誰かに助けを求めること」は、とても重要です。「自分だけ我慢すればいい」「自分だけ我慢すればいい」と思うことで、自分を追いつめてしまうと、心身にも影響しますし、結果、会社や家族が機能不全になってしまうこともあるのです。そこで私は「夫さんに、由美さんがしてほしいことを伝えることはできますか?」と聞きました。 「難しいけれど、やってみます。離婚するのは簡単ですが、それでは夫がちょっとした悲しみを味わっただけで、結果的に楽をするだけ。私は夫に家事と育児に参加してほしい。さらにお金と夫の財産が欲しい。そうなると夫婦でいることが圧倒的に有利なので、離婚しない方向も考えます。夫への接し方を変えてみます」 そうおっしゃっていました。ただ、私は経験上、40代を超えて性格を変えることはかなり難しいことを知っています。さらに由美さんは傷ついている。これは医師のプロの力も必要だと思い、由美さん自身のケアのためにも心療内科への通院を提案しました。 半年後の決断 それから半年後、結果的に由美さんは離婚します。やはり、自分たちの生活費を減額してまで女性と会い、関係を持っていることが生理的に受け付けらなかったのです。心療内科に通い、自分が不安に感じていたその原因そのものが夫の行動だったことも改めて感じ、「一緒にいて自分の体調が良くなることはないのでは」と感じたようです。さらに離婚に強い女性の弁護士を立て、慰謝料1千万円に養育費月20万円で交渉を進めます。 浮気相手の女性には200万円を請求したところ、その日のうちに振り込まれたとのこと。女性は自分の夫と娘に浮気がバレることを恐れていたそうです。 「夫は、証拠を見せても“離婚だけはやめてほしい”と言われましたが、顔を見るのも嫌になっていました。よく考えたらもともと夫は好みではないんです。今回の現実を見て、私と娘を軽んじて女性にお金を貢ぐキモいおっさんなんだと感じ、一緒に生活しているのが耐えられなくなりました」 夫は「絶対に離婚しない」の一点張りでしたが、調停に進むというと、観念して離婚に応じます。有責配偶者なので、圧倒的に不利。弁護士と話すうちに「勝ち目はない」と察したのです。 由美さんは、浮気調査をきっかけに、「私がガマンすれば、丸くおさまる」という性格に気づき、そこを改善することにより、人生を望む方向に開拓することに気づきました。仕事にも邁進し、正規職員になるために、頑張っているそうです。夫のことも心配になります。なぜ由美さんから離婚を言われたのか認識しなければ、また別の結婚をしたとしても、相手の女性が苦しむことになり、ひいては自分自身が苦しくなってしまいます。むしろ、妻に対し「従属する相手」として見下す人は、その人にも心療内科のサポートが必要だと感じます。もしかしたら外では仕事で苦しんでいるのかもしれません。 相手を軽んじない。尊重する。そんなシンプルなことが家族関係でどれだけ大切なのか改めて感じる調査となりました。 調査料金は30万円(経費別)です。 【前編】夫が就労証明書を出さず認可保育園に入れなかった妻が2歳の娘を連れ離婚を決意するまで

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