【東海道新幹線】生活・経済支える大動脈も近年の“豪雨”で運転影響頻発…リスク減らす研究最前線(静岡)

熱帯低気圧の影響で、14日夜は大雨となる可能性があり、状況によっては新幹線の運行にも影響が出かねません。これまでも大雨で度々、運転を見合わせてきましたが、今後はその回数が減少するかもしれません。その研究の最前線を取材しました。 熱帯低気圧の影響で14日夜から大雨が心配されますが、先週にも関東地方などでは猛烈な雨が降り続き数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨が降ったとして、「記録的短時間大雨情報」が発表されたほか、大雨の影響により横浜市ではマンホールが吹き飛ぶ被害も。東海道新幹線は、品川―新横浜駅間の上下線で約1時間にわたり運転を見合わせました。 近年では、これまでにない異常とも言える雨が増え、被害も甚大化しています。 静岡県内でも記憶に新しいのが、2024年8月に発生した「台風10号」。動きが遅く「ノロノロ台風」とも呼ばれ、各地に長い時間影響を及ぼしました。 (記者) 「雷の落ちる大きな音が聞こえました」 静岡県内では局地的な大雨による大規模な冠水が発生。 (投稿者) 「車まじ水没する」 「家の前だけどやばい」 特に被害の大きかった焼津市内の国道150号・八楠交差点では、複数の車が立ち往生。歩行者用の地下道も流れ込んだ水で満たされ通行が完全に遮断。他にも焼津市内では約50台の車が水没しました。 この台風は鉄道や新幹線にも大きな影響を与えました。 (澤井 志帆 キャスター) 「午後8時前のJR静岡駅です。東海道新幹線は一時間ほど前に全線運転取りやめとなり駅構内そして駅の外にも困惑する人たちであふれかえっています」 JR東海は、7日間で在来線2359本を運転見合わせ、新幹線は初めて3日連続の計画運休を実施したのです。 これほど大規模な影響が出たのは、例えば在来線の場合、列車の運行には、1時間当たりの降水量と土壌に含まれる雨量がともに規制値を下回っている必要がありますが、この時は焼津市で連日、短時間の大雨が何度も降ったことにより、土壌に含まれる雨量が減らず、規制値の165ミリを大きく上回る過去最高の雨量を観測するなど長期間にわたり運転再開ができない状況が続いたのです。 しかし、鉄道や新幹線が動かないと私たちの生活や経済活動にも大きな影響が生じます。そのような状況を少しでも減らすために、JRでは日々研究が進められています。 その拠点なるのが愛知県にあるJR東海「小牧研究施設」。 ここでは、東海道新幹線の列車部品の開発や脱線防止技術の向上などにより、これまで開業から60年以上乗車中の客の運行上のトラブルによる死亡事故ゼロという世界トップレベルの安全輸送を支えています。そんな施設で、今、力を入れているのが…。 (記者) 「東海道新幹線の走行路の多くがこの盛り土ですが、激甚化する豪雨に対応すべく、この施設で研究が進められています」 盛り土は、大雨などにより内部に大量の水を含むと崩壊したり流出したりするリスクがあります。この盛り土の部分が東海道新幹線には多いため、そのリスクを減らすための研究がここで行われているのです。 (JR東海 総合技術本部 吉田 幸司さん) 「こちらの施設は試験盛り土と呼んでいて、東海道新幹線の実物サイズの盛り土を再現したものになります。近年非常に雨が激甚化しておりまして、これまでいろいろな対策を行ってきましたけれども、いかにちゃんと機能しているか。降った雨がどのように浸透していくかといったところを実際サイズで実験をして、対策に結びつけようという意味でやっております」 東海道新幹線は約60年前に開業しましたが、東京オリンピックに間に合わせるために、かなり急ピッチで建設が行われました。そんな事情もあり、当時の技術では、高架橋よりも盛り土の方が短期間で建設できたこともあり、東海道新幹線は全体の44%の区間が盛り土の上を走っています。 そのため雨の影響を受けやすく、1990年の台風19号では愛知県内で線路脇の盛り土が流出し、終日運転がストップするなど大きな混乱が発生。さらに続いてやってきた台風20号でも今度は神奈川県内で土砂崩れが発生しこのときも運休など、大きな影響が出ました。 そんな盛り土の弱点を補うため、排水性や遮水性を高める対策は国鉄時代から行われていましたが、近年の異常気象にも備えるため、さらなる安全を求めて、こちらの施設で研究が進められているのです。実験用の線路上に上ってみると…。 (JR東海 総合技術本部 吉田 幸司さん) 「こちらが実際に雨をこの盛り土上に降らせるように設置したもの。実際これ最大で1時間あたり200ミリの雨を降らすことができるもの」 日本でこれまでに降った1時間あたりの最高降水量は153ミリ。それを大きく上回る1時間に200ミリの雨とは、一体どれ程のものなのでしょうか。 一見、強く降っているようには見えませんが、中に入ってみると…。 (記者) 「周りの音が何も聞こえない」 大粒の雨が線路上に降り注いでいました。このように雨量や降り方の違いから、盛り土の中の土壌の変化を分析しているのです。そんな、これまでの研究をもとに、JR東海は6月から東海道新幹線の運転規制の判断基準を新たな指標に切り替えました。 これまでは、東京から新大阪間で一律に…。「1時間雨量が60ミリ以上」「1時間雨量40ミリ以上で24時間雨量が150ミリ以上」「24時間雨量が300ミリ以上で10分間に2ミリ以上」という3つの基準のいずれかを満たすと運転見合わせとしていましたが、近年では長時間降り続く大雨が増えているため、降った雨がどれだけ土壌に溜まっているかを示す「土壌雨量」を、新たな規制値として導入したのです。 さらに、地形の違いや過去の情報などから、59か所ある雨量計ごとにそれぞれ規制値を設けることで、これまでよりも細かく規制区間を設定できるといいます。 (JR東海 総合技術本部 吉田 幸司さん) 「土壌雨量という指標を使いまして、24時間に限定せず長い期間降った雨を適切に評価する指標に変えた。昨年非常に長く強い雨も降りましたので、そういったものを適切に評価し、合理的にかつ安全なオペレーションにつなげようということになっている」 JR東海のシミュレーションによると、過去5年間の降雨量を新たな規制値に当てはめた場合、運転見合わせの回数や時間は減る結果となっています。 私たちの社会活動に欠かせない新幹線。その最先端の研究により、今後ますます心配される異常な雨にも負けない安全性と利便性の向上が期待できそうです。

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