地方で活躍できない女性が流出、男女不均衡から婚姻率と出生率が低下…「静かなる有事」に自治体危機感

[参院選2025]地方と女性<中>  「出生率の問題に加えて、女性の県外流出が大きな課題で、『静かなる有事』だ」——。  栃木県が設置した「県人口未来会議」の4月の初会合で、出席したアドバイザーが述べた言葉には危機感が込められていた。  政府は2023年の統計を基に、男性の賃金を100とした時の女性の賃金水準を「男女間賃金格差」として都道府県別に算出している。格差が最大なのが栃木県の71・0。平均勤続年数の男女差が大きいことや、管理職に占める女性の割合が低いことが原因と分析されている。  栃木県から東京圏に流出する女性は多い。20年の20〜34歳の未婚者の男女比は、女性1に対して男性1・32と多くなっている。  人口減少への対策を検討するため、栃木県が設置したのが県人口未来会議だ。転出超過などを解消するため、「男女間賃金格差の是正」「女性のキャリア形成支援」など各分野で取り組むべき行動を示したチャートを作り、企業などに行動を促すことにしている。  また、賃金を5%以上引き上げた上で、女性の管理職比率の改善や非正規雇用の正規化などの格差是正にも取り組んだ企業を支援する制度を新設した。この制度では、賃金を引き上げた従業員1人につき5万円を支給する。  首相補佐官として賃金と雇用問題に取り組み、3月に退任した矢田稚子さんは、「賃金格差は男女の活躍度に差がある結果だ。活躍できていない女性が、地域の外で活躍する女性の姿をSNSなどで見て、『地元では活躍できない』と思って流出する。賃金格差と流出には緩やかな相関関係がある」と指摘する。  そのうえで「賃金格差は、女性の流出と男女の人口の不均衡、婚姻率の低下、出生率の低下につながっていく。そうすると地域の活力が低下し、女性が活躍できる場所がなくなるという悪循環が起きる」と分析。「女性に選ばれる地域を作らなければ人口減少は止まらない。女性が活躍できる地域を作ることは、地域の持続のためにも重要だ」と話している。 ◇  男女間の賃金格差の縮小には、23年の統計で格差が大きかった他の自治体も取り組んでいる。  茨城県は24年11月、経済団体に対し、管理職への女性の登用促進や、結婚や出産の後も女性が働き続けられるように、柔軟な働き方の導入、長時間労働の是正を要請した。女性管理職を増やそうと、県経営者協会は、企業の女性リーダーやリーダー候補同士が研さんできる交流の場を設けている。  長野県では24年12月、企業や団体、住民などで作る県民会議が「人口の自然減を止めるためには、若者や女性に選ばれる職場が必要」という内容の「信州未来共創戦略」を策定した。戦略では「2050年にありたい姿」として「行政や企業の役員や管理職の男女バランスが均衡」「男女の賃金格差がゼロ」を掲げており、各分野で取り組むことにしている。

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