坪3000万円の1Kマンション 2023年11月に開業した東京・港区「麻布台ヒルズ」。広大な施設の中にそびえたつ賃貸・分譲タワーマンション「麻布台ヒルズレジデンス」だが、一部物件が不動産・住宅サイトに「新築マンション」として掲載され、SNS上で話題になった。 「なかでも目をひくのが、専有面積32.68平米(9.88坪)の1Kの物件で、価格は2億9800万円。坪単価約3016万円と、3000万円を超える金額になっています」(不動産業者) 都内のマンション価格が高騰を続けているのは、ご承知おきのことだろう。同じく「ヒルズ」がある六本木、永遠の高級住宅街白金、タワマン人気で注目の芝浦エリアなどを擁する港区は特に高止まりが顕著だ。東京カンテイの市場調査によると、25年4月の中古マンション価格(70平米)は平均2億1741万円。23区では千代田区についで2位となった。 これまで割安と言われていた葛飾区、墨田区の2区にくわえて、〈東京・大田区の「マンション価格」に異変が…「最新のマンション価格」のデータが示す「東京23区の意外な現実」〉にあるように、大田区も人気が殺到。都心5区(港、千代田、渋谷、中央、新宿)のバブル感を避ける影響が波紋のように広がっている。 件の麻布台ヒルズについては、最寄駅の東京メトロ日比谷線神谷町駅に直結しているとはいえ、中央広場がある森JPタワー、そしてレジデンス棟まではかなりの距離がある。「現代ビジネス」の記事〈オープンから半年、観光客から見放され…麻布台ヒルズの「インバウンド戦略」が失敗していた〉のように、話題性やブランディングに対して、客足の鈍化や暮らす街としてのポテンシャルの乏しさを指摘する向きは多かった。 プレミアム感を求める富裕層 「麻布台ヒルズレジデンスはA棟とB棟があり、A棟は発売されるや買いが殺到しました。その後転売され、3LDKで30億円、坪単価は5000万円以上という物件も出てきています。 地上64階建て970戸のB棟は、工事の遅れもあり2025年8月以降の引き渡しになっています。またB棟の物件は地権者および設計の森ビルが所有しているとされます」(前出の不動産業者) 改めて不動産・住宅サイトを見ると、B棟の9階の2LDK(約67平米)が5億9800万円、20階の(約95平米)が14億5000万円で掲載されている。もちろん「新築」として。 未入居の地権者物件が次々と売りに出ている理由はなんなのか。そして、買い手はつくのだろうか。マンショントレンド評論家の日下部理絵氏はこのように説明する。 「入居時期が大幅にずれこみ、住めなかった間に価格が高騰した結果、売りの判断を下した地権者が多いのでしょう。では1Kで約3億円の資産価値があるのかどうかですが、まず麻布台にあり、新築の地権者物件というステータスにはプレミアムがあります。 また、森ビルが同棟の一部を所有していることから、資産価値を下げないように維持管理を徹底してくれるのではないか、将来建て替えなどの話もスムーズに合意形成がされるのではないかと期待する購入者もいるでしょう。 他エリアでタワマンを買っても、今後市況がどうなるかはわからない。多少イニシャルの売買価格が高くても、資産家にとっては意外と盤石な買い物です。ただの金持ちでは手に入らない、超一等地のプレミアムマンションが欲しいという中国人の資産家もいると思います」 1Kマンションに3億円投じられる資産家は、その先を見ているようだ。 【あわせて読む】観光地として失敗している「麻布台ヒルズ」…住む場所としても残念な場所になっている理由 【あわせて読む】観光地として失敗している「麻布台ヒルズ」…住む場所としても残念な場所になっている理由