《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば″安心″だと思った」理由とは?

 日本でのオンラインカジノの国内利用者数は推計で約 196.7 万人、年間賭額の総額は約1兆2423億円にのぼる(警察庁、2025年1月公表)。規模が急拡大したことでオンラインカジノ、通称オンカジは違法だというだけでなく、大きな社会問題として急浮上、対策が急ピッチですすめられている。そんななか、オンカジを利用できるリアル店舗が摘発され、店舗側や客が現行犯逮捕された。ライターの宮添優氏が、店舗型オンカジ利用者の複雑な思いをレポートする。 【写真】警察庁公式Xでも警告されたオンカジに関する内容とは?  * * *  警視庁組織犯罪特別捜査隊は6月、東京都新宿区歌舞伎町のインターネットカジノ店Xを摘発し、店の責任者や従業員ら5人を現行犯逮捕した。ビルの一室に設置されたパソコンを使って、客に「オンラインカジノ」をさせた疑いを持たれている。このとき同時に20代から80代までの客の男女7人も現行犯逮捕され、12人全員が容疑を認めているという。  店舗型インターネットカジノ店という、リアルとネットがごっちゃになった表記に、そんなものが存在するのかと思うかもしれない。だが、そこは本当にインターネットカジノ、最近の呼び方ではオンラインカジノ、オンカジを利用するために開設された店舗だった。カジノ店Xを過去に利用した会社員男性が、なぜ店舗型オンカジを利用しようと思ったのかを語った。 「私が店に行ったのは2022年ごろ、コロナ禍の真っ只中でした。雑居ビルの一室で、一見するとカジノ店があるなんて絶対にわからない。店の入り口にはいくつか防犯カメラがあって、入店する際は事前の連絡と免許証などの顔写真付き身分証の提示が必須でした」(会社員の男性)  男性が店舗型のオンカジを利用するようになったのは、自分のスマホやパソコンから利用するよりも安心できると考えたからだった。この「安心」は、海外サイトへ接続する事で個人情報などが脅かされる恐れが小さくなる、という意味なのだという。 「海外でカジノ経験があり、日本国内に存在したバカラやポーカーなどの地下カジノ店に通っていましたが、それらの店も摘発されてなくなりました。当時はまだ、スマホで海外のオンカジにアクセスするのは気後れして、店舗型であれば”安心”だと思ったんです。店は、SNSの広告というか、カジノ系のインフルエンサー的な人の書き込みで知りました。怪しいとは思いましたけど、裏カジノの経験があったんで」(会社員の男性)  男性は、違法な地下カジノ店を利用することが罪であることは理解していた。だが、海外のオンカジ利用については「グレーだけど合法」と認識していたと話す。  男性が店舗型オンカジを利用した2022年当時、すでにスマホからでも気軽にアクセスでき、クレジットカード決済を用いて実際に金を賭けることができる海外のオンカジサイトはいくつか存在していた。といっても芸能人が広告に登場したり、一部メディアで広告が流れ始めるのはもうしばらく後のことで、まだまだアングラな雰囲気が強いものだった。その印象をもとに「オンカジ運営は、きっといかがわしい業者だから、クレカ情報など漏れるのが怖い」と男性は判断し、現金やプリペイドカードを使えば、業者に個人情報が漏れないのでは、と考えた。むろん、警察当局の目からも逃れられる可能性も高まる。だから、「店舗」を利用するのがメリットだったと語る。  グレー寄りの合法だと言う一方で、サイト運営者は怪しいと断じたり、男性のオンカジに対する思いは複雑であり、はっきり言えば支離滅裂だ。筆者は、これまでの取材で得られた情報を元に「オンカジはイカサマではないか」という持論をぶつけたが「公営ギャンブルだってインチキはある」と、言って口ごもるのだった。 店舗型オンカジの運営  いわゆる”オンカジ事件”を巡っては、芸能人から一流アスリート、さらには民放キー局の男性アナや社員の関与が相次いで発覚。事情聴取のみ、書類送検されたり逮捕に至る者など程度は様々だが、いずれも本人や所属先が謝罪や謹慎に追い込まれた。そして、オンカジをSNSなどで紹介することで報酬を得ていたインフルエンサーが常習賭博の疑いで逮捕され、今度は不特定多数にオンカジに興じる場を提供していた者たちが現行犯逮捕された。  6月18日には改正ギャンブル等依存症対策法が改正され、オンカジサイトやアプリの開設、運営はもちろん、誘導広告やSNSでの宣伝も違法となった。法整備とあわせるように、順次「摘発」の範囲が広がっているように見える。事件を取材する大手紙警察担当記者が説明する。 「オンカジ業者の全てが海外にあるため摘発は容易ではない。そのため、まず日本でのオンカジ利用が違法であること、摘発を進めることを当局が徹底的に周知した。まず反応したのは、近年、高いレベルのコンプラ重視が求められるようになったプロスポーツ界、芸能界でした。このときはまだ、有名人でなければ大丈夫だという雰囲気がオンカジ利用者にあったかもしれない。だが、オンカジを紹介していたインフルエンサーでもあった男やテレビ局社員も常習賭博で逮捕され、顔や名前が知られた有名人でなくともダメだと知らしめた。そして今回の店舗の摘発で利用者とオンカジの接点が、いよいよ全て切断される」(警察担当記者)  今回、摘発された新宿・歌舞伎町の店舗以外にも、全国の繁華街にオンカジを利用できる店舗型オンカジは無数にある。筆者がパッと思いつくだけでも都内であれば新宿、渋谷、上野、五反田、小岩といったように、簡単に名前を挙げられるほど存在している。多くの個人が「グレー」だけど大丈夫と思いつつも「利用は後ろめたい」からこそ自分のスマホは使いたくないため、店舗型オンカジも利用者数も急速に増えた。非合法な賭博にまつわるビジネスにはよくあることだが、こういった店舗の運営には大なり小なり、暴力団員や半グレなどの関係者が関与しており、反社会勢力の資金源になっていることは、以前より指摘されている。 「もちろん、さまざまなシステムを使って、日本国内から海外のオンカジサイトにアクセスすることは可能ですが、利用には必ずお金がかかりますので、金の流れなどを辿られて、金融機関にオンカジ利用がバレたら口座ごと利用できなくなる恐れもあり、一般生活に影響が出るリスクが極めて高まった。そして、オンカジ関連の最後の”清算”は、オンカジを紹介していたメディアの責任追及でしょう」(警察担当記者) メディアで宣伝していたから  利用者にしろ、インフルエンサーにしろ「場所」の提供者にしろ、オンカジに関与して摘発されたり処分された者全員が口を揃えて「合法だと思った」と言っている。その理由としても、また同様に口を揃えて「有名人が広告に出ていたから」「メディアで宣伝していたから」と言うのだ。 「有名人が出たりメディアが宣伝していたのは、オンカジサイトが提供する、金をかけない”カジノゲーム”サービスの広告だった、というのがメディア側の言い分であり姿勢でしょう。しかし、これだけ多くの違法な利用者を生み出すきっかけの大きな要因であったことは疑いようがない。芸能人やアスリートは謝罪していますが、オンカジの広告を出したり、関与していたメディアは声明をだしたが、謝罪や釈明というほどの内容ではない」(警察担当記者)  オンカジを世に知らしめたメディアが腹を切ってこそ”オンカジ問題”の総括は終わるのだ。

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