鳥取・島根と徳島・高知に合区導入10年、いまだ「隣県の候補者に親しみ湧かない」「無理がある」

 参院選で鳥取・島根、徳島・高知の選挙区を統合する「合区」を盛り込んだ改正公職選挙法が成立して今年で10年となる。  「1票の格差」の是正が目的だが、選挙区が拡大し、有権者からは「候補者に親しみが湧かない」との声もあり、20日投開票の参院選でも低投票率が懸念されている。(徳島支局 三浦孝仁、鳥取支局 山内浩平)  ◆合区=有権者の少ない複数の選挙区を統合すること。1票の重みになるべく格差が生じないよう、議員1人あたりの有権者数を平等に近づける狙いがある。最高裁は2010年と13年の参院選は「違憲状態」だと指摘したが、合区導入後の16年は「合憲」と判断した。 今回も低投票率の懸念  「地方を代表するのが参院議員。地域の実情を知る人が仕事をしないといけない」。徳島・高知選挙区の候補者は8日、徳島県内で開いた集会でそう力説した。  この候補者は高知県が地盤で、前日に高知市内から直線距離で約110キロ離れた徳島県内に移動し、8日も同県を回った。選挙区は広大でどうしても移動に時間がかかるが、「少しでも有権者に身近に感じてもらいたい」と話す。  2015年に成立した改正公選法は16年の参院選から適用された。高知県は16年参院選で投票率が全国最下位、徳島県は46位だった。徳島は19年と22年参院選では最下位となった。  候補者がどちらの県を地盤とするかも影響しており、高知を地盤とする候補者同士の争いとなった23年の補欠選挙は高知の投票率が40・75%だったのに対し、徳島は半分近い23・92%だった。  徳島県吉野川市の女性(74)は「二つの県から1人の代表を選ぶのは違和感がある。高知の人が徳島のことを代弁するのは無理があるし、候補者の拠点が高知だと、徳島の人には高知中心の選挙だと映ってしまう」と話す。  今回の徳島・高知選挙区の候補者は、4人全員が高知出身または在住だ。徳島県選挙管理委員会の担当者は「今回も投票率が低下するのではと懸念している。若者や子育て層に関心を持ってもらえるよう、啓発に力を入れたい」と話す。  鳥取・島根選挙区では、特に鳥取県の投票率低下が目立つ。合区適用前の13年は全国3位だったが、22年は32位まで低下した。今回は立候補した5人全員が鳥取に地盤がなく、県選管の担当者は「何とか投票率アップを目指したいが、地元の候補者が一人もいないのは厳しい」と語る。  自民党や立憲民主党は、今回の参院選の公約に「合区解消」を盛り込んでいる。  四国知事会は6月4日の会合で、「多様な地方の意見が国政に届き、しっかり反映される必要がある」として、国に合区解消などを求める緊急提言をまとめた。高知県の浜田省司知事は同6日の記者会見で「投票率が顕著に低下し、決して望ましい形になっていない」と述べた。  国会では、参院改革協議会が「現行の合区の不合理は解消すべきとする意見が大勢」とする報告書をまとめ、参院議長に提出した。今回の選挙後、28年の参院選に向けた協議の場を速やかに設けることを求めている。 鳥取・島根では「特定枠」でも曲折  鳥取・島根選挙区では、比例選で優先的に当選できる「特定枠」を巡る曲折があった。  自民党は特定枠が導入された2019年参院選から、選挙区ではじかれた候補者の救済策として利用している。19年に特定枠で当選した島根出身の現職、三浦靖氏は今回も特定枠での立候補を予定していた。しかし、党本部が1月、「特定枠での立候補は原則1回限り」との方針を示し、19年は選挙区で当選した鳥取出身の現職との入れ替えを提案した。  島根県連は「選挙の半年前に言われても、鳥取で浸透するには時間はない」と反発し、調整は難航。最終的に三浦氏は立候補を断念し、選挙区には島根を地盤とする新人が立候補した。  特定枠は自民のほか、れいわ新選組が利用している。

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