いま日本で謎の死が増えている——。コロナ禍以降、有名人が癌で亡くなるニュースが相次ぎ、癌の死亡者数が急増しているのはなぜなのか。効果が疑わしいワクチンや無意味な医療を、国や医療界が推奨し続ける背景には何があるのか。日本の医療界に潜む巨大な闇に、地域医療で奮闘する在野の医師がメスを入れる正義の一冊!6月5日発売の新刊『何かがおかしい 「がん急増」の謎』より抜粋・再編集して、内容の一部をお届けする。 『何かがおかしい 「がん急増」の謎』連載第30回 『コロナワクチンも都合の良いデータの切り取り?…製薬会社による「データ捏造」と薬事分科会による「ザル審査」の闇』より続く。 医師への営業が重要 「医療利権」の実態は、一般の方が考える以上にひどいものがあります。 製薬企業には「MR」という職種があります。「MR」は「Medical Representative」、日本語で「医薬情報担当者」という意味で、もともとは医師や薬剤師に薬の情報を提供する仕事です。ただ、医療の世界で、病院の医師は「薬を買う側」であり、医師と接点を持つMRは事実上、セールスマン、営業職です。 市販薬の場合は、薬局に並べて消費者に売るので、いわゆる「BtoC」のビジネスモデルですが、製薬企業の売り上げの多くは「処方薬」が稼いでいます。医師の処方が必要な薬のほうが儲かるわけです。そして処方薬は医師が処方箋を書いて初めて売れるので、売るためには医師への働きかけが必要になってきます。 また処方薬には、テレビCMで商品名を宣伝してはならない、という制約もあるので、ますます医師への営業が重要になってきます。 医師への盛んな接待 ちなみに、「お医者さんに相談」という広告がありますが、あれは商品名を表示できないことを逆手に取ったものです。たとえば「AGA(男性ホルモン型脱毛症)」の場合、治療薬の選択肢はほとんどないので、「お医者さんに相談」すれば、ほぼ間違いなく同じ薬が出ます。だからあれで十分広告になっているのです。 こうした事情があるので、MRは医師に対してさかんに接待をかけます。普通の仕事でも取引先を接待することはあると思いますが、MRによる医師の接待はちょっとレベルが違いました。 医師のちょっとした飲み会のお金も、MRが出してくれましたし、もちろん、その辺の居酒屋などならまだしも、銀座の高級クラブとか、超一流レストランのこともあるので、一人10万円以上という場合もありました。また休日に医師の奥さんの買い物を手伝ったり、費用は製薬企業もちでゴルフコンペを開催したりと、やりたい放題でした。 MRによる接待があまりにもひどかったので、2012年4月の「医療用医薬品製造販売業公正競争規約」の改定により、製薬業界の自主規制として、MRによる接待は原則不可能になりました。飲食の提供は一人あたり5,000円までに制限されたほか、茶菓・弁当代も一人あたり上限3,000円、旅行や観戦、観劇、ゴルフ、釣りの費用を出すことも禁止になっています。 ただ、代わりに講演料を支払ったり、さまざまな名目で慰労会・懇親会などとして処理したりするなど、抜け道があるのも事実です。製薬企業から医師への利益供与は水面下で続いているでしょう。 医師が製薬企業のお金にタカる 大きな病院に行くと、医師が待機する「医局」という部屋があるのですが、医局や院長室の前に行くと、MRがズラッと並んで待っていることがあります。 要するに医師に営業をかけるために、戻ってくるのを何時間も待っているわけです。 ただ、コロナ禍で感染防止が叫ばれ、こうしたMRの「出待ち」ができなくなったのですが、かつてはどこの病院でもあった光景です。いまはMRの人数を減らしているそうですが、その分、オンラインでの営業活動に重点を移していると言われています。 製薬企業のMRは、医師に対してものすごくへりくだるのが普通です。営業マンなので当然といえば当然ですが、その分医師のほうではMRを見下していることが多いです。 ですが、実際にお金を持っているのは、製薬企業のほうです。悪い言い方をすれば、多くの医師が製薬企業のお金にタカっているわけです。 医師と製薬企業の間には、こういう持ちつ持たれつの癒着関係が成り立っているわけです。 医師の感覚は麻痺している 医師はどこに行っても製薬企業から接待漬けにされ、持ち上げられているので、もはや感覚が麻痺しています。普通に考えて、食事や飲み会の世話までしてもらうのはよくないわけですが、良し悪しを考えることもなく、当たり前になってしまっています。 製薬企業が提供するのは、お金やモノだけではありません。たとえば、医師はよく学会を作って、互いに交流しているのですが、その学会の運営にも製薬企業が関わっています。学会とは、「同人クラブ」のようなところがあるので、運営は医師たち自身の仕事です。ただ、製薬企業に頼めば、学会の事務局の仕事など雑務を丸投げできるのです。会場としてホテルの宴会場も押さえてくれるし、ビュッフェ形式の懇親会も用意してくれます。もちろん費用は製薬企業持ちです。 その代わりに製薬企業は学会の合間に、ランチョンセミナーといって、食事付きのセミナーを開催し、そこで薬をガンガン宣伝します。もちろん「学会で宣伝できれば、大勢の医師が処方箋を書いてくれる」から引き受けているわけです。結局は利益供与にほかなりません。ですが、こういうサービスが当たり前になりすぎていて、多くの医師は良し悪しを考えたことすらないのが実状です。 さらに、製薬企業が開催するイベントに、講師として登壇した医師には、1回数十万〜数百万円という高額の講演料が支払われていますし、製薬企業の広告などに登場する場合も、もちろんギャラが発生しています。 こうした医師と製薬企業の癒着が、薬事審査にも、「ワクチン推進の言論」にも、大いに影響したのは間違いありません。 【前回の記事を読む】コロナワクチンも都合の良いデータの切り取り?…製薬会社による「データ捏造」と薬事分科会による「ザル審査」の闇