岸田前首相、麻生氏らが参院選“過半数割れ”にらみ活発化…森山幹事長は「尻に火」で問われる石破政権の“負け方”

 参院選(7月20日投開票)が中盤戦にさしかかった7月9日、自民党は森山裕幹事長と木原誠二選挙対策委員長の連名で、“異例”の通達を党所属国会議員と衆議院選挙区支部長宛てに出した。  文書の左上には赤字で「重要」と印字され、《第27回参議院議員通常選挙〜『期日前投票徹底週間』の実施について〜》とタイトルが打たれている。  文書は《この戦いを制するためには、「全て」の支持者に「確実」に投票に行っていただくことが不可欠です。》とし、こう続く。 《期日前投票は、昨年秋の衆議院総選挙においても投票総数の4割近くを占めるなど、既に多くの有権者に定着してきており、この選挙を勝ち抜くためには、特に「期日前投票」の「徹底実施」を運動の中心に据えなければなりません。つきましては、今週、ラストサンデーの13日(日)までの活動量を倍増させた上で、来週には、党を挙げて期日前投票の促進に努めていきますので、今後の運動を以下の段取りで、強力に進めていただきますようお願い申し上げます》  そして、その下に赤の二重線で囲んだ部分では、こう強調している。 《来週1週間を「毎日が投票日」と位置づけ、特に14日(月)〜19日(土)を「期日前投票徹底週間」と設定して、あらゆる運動を期日前投票促進と連動させ、全ての支持者が残らず投票に行っていただくよう徹底すること。》  この通達文書を見た自民党のベテラン秘書が言う。 「こういう文書はあまり見た記憶がないですね。最近の選挙情勢では自公で過半数の50議席獲得が厳しいとみられていますから、選挙の責任者である森山さんと木原さんの尻に火がついているのは確かです。  文書を見たある衆議院の先生は『これ、どうしたものかね』と悩んでいました。衆院議員は今回は自分の選挙ではありませんから。この通達どおりに、死にもの狂いで自民党支持者に電話作戦を展開する衆院議員がどれだけいるのかわかりませんが、『どうしたものかね』と悩んでいるのを見る限り、徹底した期日前投票作戦は“不発”に終わるような気がしてなりません」  衆議院では自公が少数与党となっていることもあり、参院選で自公が過半数に達する50議席を獲得できるかどうかが、最大の焦点になっている。参議院でも自公が少数となった場合は、自公政権の継続は長続きしないとみられており、政権の枠組みが大きく変わる可能性も出てくる。  政治担当記者が言う。 「共同通信が7月5日と6日に実施した世論調査では、参院選で自公の与党が過半数割れした方がいい、と答えた人は49.9%と約半数で、過半数割れしない方がいいに比べて39.8%と約10ポイント上回っています。  また、参院選後の政権の枠組みについては、自公による政権は15.0%と最も低く、自公政権に一部の野党が加わった政権が31.2%、政界再編による新たな枠組みの政権が29.8%、野党による政権が17.6%などとなっていて、世論は自公政権の継続を望んでいないことがわかります」  そうした状況を予測していたためなのか、参院選の公示(7月3日)の前に参院選後をにらみ、麻生太郎自民党最高顧問や岸田文雄前首相らの動きが活発化していた。  麻生氏は6月18日夜、東京・赤坂の料亭で岸田氏と会食。さらに麻生氏は6月26日夜、都内のフランス料理店で派閥パーティー券の裏金問題で離党した世耕弘成衆院議員(前党参院幹事長)、末松信介元文科相や山本順三元国家公安委員長ら旧安倍派の参院議員と会食。6月30日には、麻生氏は岸田氏と茂木敏充前幹事長と都内の日本料理店で会食した。  政治部デスクが言う。 「参院選で自公が50議席を割り込み、参院過半数を維持できなくなる可能性は確かに高まっていると思います。参院選後に50議席に達しなかった場合に石破首相を下ろし、麻生氏が岸田前首相を担ぎ出すべく動いているとの噂が流れたようですが、それはまったく違うと思います。  麻生氏が世耕氏ら参院安倍派と会食したり、茂木氏との会食以外にも、岸田氏と個別に会食をしたりしているのは事実ですが、麻生氏や岸田氏は、『ポスト石破』に向けた政局でキャスティングボートを握ろうと共闘しているというのが実態ではないかと思います。ですから、岸田氏自身が再登板する可能性はないと思います」  自民党中堅議員もこう話す。 「最近、岸田さんは『今の状況では多少まずくても石破にやってもらうしかない。高市(早苗前経済安全保障担当相)なんかにするわけにいかない』と言っていました。また、『どうしても石破が辞めなければならなくなったときには世代交代だ』とも話しています。  参院選後に岸田さんに変わったとしても、首相在任中には『増税メガネ』と批判されて支持率が2割に落ち込み退陣になった事実は変わりませんし、実務的には岸田さんならうまく国政を回すとは思いますが、自民党が次の衆院選に勝つ道筋は見えませんから。岸田さんもその辺りは十分に理解しているはずです」  自公で50議席を獲得できなかったとしても、すぐに石破政権が崩壊するというわけではなさそうだ。その“負け方”次第で状況は変わってくるという。 「自公が50議席に届かなかった場合、即座に石破が退陣を表明するかというと、少し時間がかかると思います。自民党執行部は現在も活発に工作していますが、保守系無所属と維新の一部と連立のような状態に持ち込み、何とか政権を維持できないか模索するはずです。  ただ、自民が大敗するような結果になれば、仮に下準備で協力の確約が得られていたとしても、世論の動きを踏まえ、自民に協力しづらい環境ができる可能性が高いですから、この万策尽きた時に、石破氏は退陣に追い込まれるという流れになると思います」(前出のデスク)  では、“石破おろし”が始まる自公の獲得議席のデッドラインはどのあたりなのか。  別の自民党関係者が言う。 「石破さんが物価高対策として現金給付を一度否定した後に、それを覆し給付すると言った点などについては、党内からも批判が出ていたことは確かです。ただ、党内では自公で45議席前後が獲れれば、石破さんは続投だという声が多い。そうなれば『石破さんの責任は問えない。自民党全体の責任だ』という声が有力です。その場合は、石破さんは関係がいい日本維新の会の前原誠司共同代表との連立を模索するかもしれません」  参院選後に“ポスト石破”に向けた政局で、キャスティングボートを握ろうとしている岸田氏の動きについて、前出の中堅議員はこう推察する。 「岸田さんの念頭には、話しぶりからすると“ポスト石破”として小泉進次郎農水相が頭にあるのではないかと思います。岸田さんの側近である木原誠二氏は昨年の総裁選で進次郎陣営に行き、今でもかなり濃密に付き合っています。  また、参院選で議席を大幅に伸ばしそうな国民民主党と自民党との間の信頼関係は、現在霧消している状況です。特に森山幹事長が蛇蝎のごとく国民民主を嫌っています。ただし、自公が大きく負けた場合は、石破さんや森山さんの責任論が大きくなり、完全退陣となる可能性が大きい。その場合は連立に向けた環境が変わるかもしれませんが、岸田さん自身も『あんな国民民主の野放図な減税なんかできるわけないだろ』と言っていました。国民民主が大勝するならまた別ですが、現状では参院選後に国民民主党と連立を組むことは、非現実的だと思います」  自公政権が少数与党になったため、野党第一党の立憲民主党との連立が噂されたこともあった。しかし、立憲のベテラン秘書はこう言う。 「野田佳彦代表がどう判断するかはわかりませんが、党内で自公との連立に賛成している議員は少ないはずです。なぜなら、2024年10月の総選挙で98議席から148議席と大幅に衆院の議席を増やしたばかり。ここで自公と連立を組めば、次の衆院選で支持者からそっぽを向かれ、大幅な議席減につながりかねません。大事なのは次の衆院選なのです」  ポスト石破について、小泉進次郎氏の名前があがっていることについて、前述のベテラン秘書はこう苦言を呈する。 「小泉さんは、農水相として備蓄米の放出に素早く対応したことで党内外から一定の評価を受けましたが、まだまだ首相になれる器ではないというのが、党内での共通した見方です。  岸田さんが何を考えているかはよく分かりませんが、小泉さんは今でも党内では人寄せパンダ的な存在だと思っている人が少なくない。ポスト石破が小泉さんでは、次の衆院選は心もとない気がします」  7月20日の投票結果次第で、永田町は戦国時代へと突入することになりそうだ。

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