参院選の投開票日である２０日は、３連休のど真ん中。 　懸念されるのは投票率の低下だ。有権者に託された大切な一票を「何とか投じてもらいたい」と、山梨県内各地で様々な取り組みが広がっている。（大野琳華、前田智貴） 　山梨市小原西の中華料理店「白楽天」。創業約４０年の地域住民から愛される店が今回選で初めて導入したのは「選挙割」だ。 　割引の対象は定番メニューである「しょうゆラーメン」（税込み９００円）で、参院選で投票を済ませ、投票したことを示す「投票済証」を提示すれば、半額で味わうことができる。 　店主の川添一寛さん（５１）が、アルバイトの大学生とたまたま選挙について話した際、「投票しても意味がないから行かない」と言われたことに衝撃を受け、投票所に足を運ぶきっかけになればと今回選から選挙割を始めた。 　しょうゆラーメンは、先代が創業した約４０年前から味を変えない秘伝のしょうゆダレを鶏ガラスープで割ったもので麺との相性は抜群。川添さんは「選挙に行かなければ、政治は何も変わらない。まずは投票してみることが大切」と訴える。 　店を訪れた甲州市塩山下於曽、ブドウ農家の男性（５９）は「投票後にまたここでしょうゆラーメンを食べます」と話した。今月いっぱい続ける予定という。 　参院選での県内の投票率は、１９８６年に８３・０６％を記録して以降、下落傾向が続く。２０２２年の前回選では５６・２３％と、６割にも満たなかった。 　課題は「若者の選挙離れ」だ。前回選では６０〜７０歳代の約７割が投票したのに対し、１０〜２０歳代の投票率は約４割にとどまった。 　こうした中、県選挙管理委員会が、頼りにするのは「県専門インフルエンサー」のＭｏｍｏｋａさん。山梨の観光地やグルメなど魅力を発信する活動を行っており、若者らの人気も高い。今回は選挙について学べるクイズ動画を配信してもらうという。動画は投開票日までの間に、ユーチューブや、インスタグラムなどで２回ほど配信する予定だ。 　投開票日を含む３連休では、旅行など遠出をする有権者も多くいることが予想される。このため、期日前投票の活用を呼びかける動きも広がる。 　甲州市選管が活用するのは、多くの市民が訪れるスーパー「いちやまマート塩山店」だ。「移動期日前投票所」を設置して、買い物客に投票を呼びかける予定という。商業施設での期日前投票所の設置は県内初といい、１６日午前１０時〜１１時半、１８日午後３時半〜５時に受け付けるという。また、甲府市選管では、１０日に山梨大学甲府キャンパスで期日前投票を受け付ける。 　このほか、県選管は、ＪＲ甲府駅の駅ビル「セレオ甲府」などのデジタルサイネージ（電子看板）で啓発映像を映したり、サッカーＪ２・ヴァンフォーレ甲府の試合会場でサポーターらに投票を促したりするといい、県選管の堀込伸司・書記次長は「大切な権利を放棄せず、期日前投票を有効に使ってほしい」と話した。