舛添要一氏、世論調査3位の参政党に愕然…排外主義を煽る日本の民主主義の「脆弱さ」への違和感

猛暑の中の参議院選挙である。自民党と公明党が過半数を確保できるかどうかは、微妙な状況である。前回、私は参政党について詳細に分析したが、その参政党が支持率を伸ばしている。 【はじめから読む】『「かなり右寄り」な参政党がここへきて”野党第三党”まで躍進を遂げた理由…あまりに対照的な既存政党の凋落』 参政党は世論調査で上位に 7月5、6日にANNが行った世論調査では、支持政党で、自民党30.2%、立憲民主党10.4%についで、参政党は6.6%と3位につけている。4位は国民民主党で6.4%、5位は公明党で5.2%、6位は日本維新の会で4.5%、7位は共産党で4.4%である。なお、内閣支持率は29.1%、不支持率は51.0%である。 同時の共同通信の調査では、比例代表投票先は、1位が自民で18.2%、参政党は2位に浮上し、8.1%、3位が国民で6.8%、4位が立民で6.6%、5位が公明で5.0%、6位がれいわ新選組で3.7%、7位が維新で3.4%である。内閣支持率は25.4%、不支持率は62.6%である。 参政党は、政策として、反LGBT、反ワクチン、反移民、反原発を唱え、食品添加物を拒否する。強烈なオーガニック信仰であり、外来のものは拒否する。まさに、排外主義的な保守で、スローガンとして「日本人ファースト」を掲げているが、これが有権者に受けている。 今回の参院選の最大のテーマは、物価高であるが、同時に、外国人に対する規制が一つの大きなテーマになっており、それが参政党の支持率を上げている。 ヨーロッパで進む外国人排斥 ドイツ、フランスなどでは、テロのような、移民による凶悪な犯罪が多発しており、それが移民排斥のムードを高めており、排外主義的な政治勢力を伸張させている。 ドイツでは、昨年8月にはゾーリンゲンでイベントの来場者をシリア難民の男が襲い、3人が死亡、12月にはマグデブルクのXmasマーケットにサウジアラビア国籍の男が車で突入し、6人が死亡した。 今年になってからも、1月22日にはバイエルンのアシャッフェンブルクでサウジアラビア難民の男が幼稚園児を襲い、2人が死亡。2月13日にはミュンヘンでアフガニスタン国籍の難民申請者が車で群衆に突っ込み、2人が死亡した。そして、2月21日にはベルリンでスペイン人観光客がシリア難民の男に刃物で襲撃され、重傷を負っている。わずか半年で、これだけ多くの殺傷事件が起こっているのである。 シリア内戦以来、ヨーロッパ、とりわけドイツを目指す難民が増えた。ドイツには、現在300万人を超える難民がおり、それは人口の4%を占めている。政府の財政負担も巨額である。そして治安が悪化している。 ドイツでは、「AfD(ドイツのための選択肢)」が伸張しており、今年2月に行われた総選挙では、保守野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に次ぐ2番目に多い票を得た。 フランスでも、旧植民地のアルジェリアなどからの移民の子どもや孫たちが、失業などを契機にイスラム過激派に賛同し、テロに走る事件が多発している。そのような状況下、極右の「国民連合(RN)」が勢力を拡大している。昨年の総選挙では、予想に反して、第一党になれず、左翼連合、マクロンの与党連合の後塵を拝して3位に沈んだが、2027年の次期大統領選では、RNの候補が当選する可能性がある。 日本の難民、移民の現状 それに対して、日本では、ドイツやフランスのような大事件は起こっていないし、そもそも流入する移民の数は限られている。2024年末で、日本には約377万人の外国人がいる。 労働力不足を補うために、技能実習生などの形で外国人労働者が増えている。たとえば、介護の現場やコンビニなどでは、外国人労働者が不可欠な存在になっている。 そこには目をやらずに、外国人との些細なトラブルに目くじらを立てるケースが多い。たとえば町内のゴミ出しルールを守らないことなどである。 今、マスコミで大きく取り上げられているのは、外国人が土地を購入すること、社会保障制度を悪用すること、日本の運転免許証が容易に取得できる(外国免許切替)ことなどである。 埼玉県川口市では、クルド人と地元住民の間で軋轢が生じているが、そこまでの摩擦になっているケースはほとんどない。 因みに、難民のほうは、2024年に申請を行ったのは1万2373人で、190人が認定されている。この数は、他の先進諸国に比べて、極めて少ない。 各党とも、外国人問題への対策を参院選の公約に掲げている。そして、外国人排斥をうたうヘイトスピーチを行う候補者もいる。外国人はそもそも生活保護を受ける権利はないのに、ある参政党の候補者は、「外国人が日本人より多く受給している」と演説している。これは全くのデマである。 外国人排斥の背景 ヨーロッパ諸国の移民排斥運動の背景には、先述したテロや犯罪の増加に加えて、経済情勢の悪化、格差の拡大、生活苦がある。それは、「アメリカを再び偉大に(MAGA)」を掲げ、アメリカ第一主義を貫こうとしているトランプ政権とも共通である。 欧米の労働者は、安い報酬で仕事を請け負う移民労働者が自分たちの職を奪っているという不満を抱いている。好景気のときには、人手不足を補うために、なりふりかまず移民を流入させておきながら、不況になると態度を変えるのである。 日本でも、新型コロナウイルスの流行、ウクライナ戦争と不況をもたらす事件が続き、庶民の生活が苦しくなっている。その不満が外国人排斥感情へとつながっているのである。 参院選初日の7月3日、銀座で第一声を上げた参政党の神谷代表は、外国人について、 「観光は構わない。でも安い労働力だといって野放図に入れていたら、日本人の賃金が上がらない。いい仕事に就けない外国人が集団で万引きとかをやって、大きな犯罪が生まれる」 と述べている。日本人の賃金が上がらないのは、外国人労働者のせいではない。これもデマである。ユダヤ人を「寄生虫」と称して弾圧したヒトラーを彷彿させる。 しかし、その訴えに頷く聴衆が増えており、それが参政党の支持率増加につながっている。 参政党への対抗の意味もあって、自民党は「違法外国人ゼロ」を、国民民主党は「外国人土地取得規制法」の制定、維新は外国人の受け入れ総量規制などを政策に掲げている。 ナチスによるユダヤ人虐殺の反省から、第二次世界大戦後、難民に対して寛容な姿勢をとってきたドイツの苦難の道を振りかえるとき、外国人との些細なトラブルで、「日本人ファースト」を唱えたり、排外主義を煽ったりする日本の民主主義の脆弱さに愕然とする。この国は、国際社会で生き残っていけるのであろうか。 【こちらも読む】『《参政党の聖地》熊本に潜入してわかった…「いったい誰が参政党を支持しているのか」に対する明確な答え』 【こちらも読む】《参政党の聖地》熊本に潜入してわかった…「いったい誰が参政党を支持しているのか」に対する明確な答え

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