新DCユニバース初の劇場公開作となる『スーパーマン』は、ジェームズ・ガンの持ち味である明るさやケレン味がたっぷり効いた作品だ。スーパーマンは希望の象徴として街を襲う巨大怪獣と戦う。おまけに、キュートな愛犬クリプトもワンワン大活躍する。 当然ながら、ザック・スナイダー監督とヘンリー・カヴィルによる前シリーズの印象とは異なる。『マン・オブ・スティール』(2013)でのスーパーマンはキリスト的に描かれ、映画は神話的な荘厳さを放っていた。スーツの彩度も控えられ、キレのあるモダンヒーロー像を追求した。 新スーパーマンを演じるデヴィッド・コレンスウェットは、実は彼が起用されるよりずっと前の2019年に、たまたまスーパーマンの将来をことがある。「僕の実現しそうにない野望は、間違いなくスーパーマンを演じること。明るい、以前のようなスーパーマンを誰かが演じるのを見てみたいんです。ヘンリー・カヴィルのダークでリアルなバージョンも大好きですが、次はすごく明るくて楽観的なのを見たいですね」と話していたのだ。 その野望が見事に叶い、コレンスウェットは運命の役を引き寄せていた……で終わればよい話なのだが、そうならないのが現代ファンダムの少々ややこしいところ。この発言は、前スナイダーシリーズの一部のカルト的なファンに「カヴィル版への批判」と受け取られたのだ。 「あれは僕が言える中でも一番面白くない発言でした」と、コレンスウェットは米のインタビューで振り返る。カヴィル版とは違った印象を求めたことについて、真意を捕捉せざるを得なかった。 「単純に、スーパーマンのような偉大なキャラクターであれば、その可能性を探究できる素晴らしいアーティストやライター、俳優が必要ですよね。同じことを何度も何度も繰り返していたら、それではつまらないものになってしまう。だからこそクリス・ノーランは、バットマンをダークで地に足着いたものにしたし、ザック・スナイダーとヘンリー・カヴィルはまだ大スクリーンで探求されたことのないスーパーマンの一面を掘り下げた。 だから僕が言いたかったのは、みんなすごく上手くやってるってこと。完了したら、次は全く逆の方向に進んで、また違った一面を見たい。同様に、クリス・ノーランのバットマン映画や、マット・リーブスとロバート・パティンソンの後も、“面白くて、けばけばしくて、幻想的なバットマンはどこに行ったんだ?”と言う方もたくさんいましたから。」 実際に、本作のスーパーマンが目指したのはクールなヒーローというより、フレンドリーな存在だ。「スーパーマンは“ポリアンナ”(=能天気で楽観的な人物)と思われがちなんですよ」とはジェームズ・ガンの弁。 「“どうすればスーパーマンをクールにできる?”という発想です。もし90年代なら、マレットへアにしたことでしょう。でもね、そもそも彼はクールじゃないんですよ。彼は優しんです。子どもたちが大好きで、子どもたちにも好かれたいと思っている。大事なのは、そういう彼を受け入れて、それでいいんだと思うこと。無理やり“イマっぽく”する必要はないんです」。 この精神は、今回のスーパーマンのスーツ・デザインにも反映されている。カヴィル版のように、“ユニフォーム”としての実用性を優先。赤いトランクスの採用は明らかに賛否を招くが、そこには「人々に好かれたい、希望やボジティブさの象徴になりたいために、あえてプロレスラーのような格好をする」というがある。「スーパーマンのコスチュームの根底にくだらなさがないように装って、シリアスな見た目にしようとするのは、馬鹿馬鹿しいことだと思います。なぜなら、彼はスーパーヒーローだから。色鮮やかな最初の存在なのであり、それが彼なのだから」と、ガンはこだわりを徹底させた。 『スーパーマン』は2025年7月11日、日米同時公開。