『木の上の軍隊』平一紘監督、山田裕貴が外国特派員協会で会見 「ウジ虫も食べた」役作りへの覚悟を語る

 沖縄県伊江島での激しい攻防戦を背景に、終戦を知らずに2年間、木の上で生き延びた2人の日本兵の実話をもとにした映画『木の上の軍隊』。その監督・平一紘と主演俳優・山田裕貴が7日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見を行った。 【写真】日本外国特派員協会で記者会見を行った山田裕貴  井上ひさし原案の舞台を映画化した本作は、全編沖縄ロケを敢行し、沖縄戦の悲劇を現代に伝える意欲作。会見では、終戦80年の今年にこの映画を届ける意義や、作品を通じて伝えたい思いをそれぞれが語った。  平監督は用意した英語メモを読み上げながら「終戦80年の年にこの映画を届けられる意義は大きい」とあいさつ。会場に集まった日本に駐在する外国報道機関の記者たちに向けて、「戦争が生む悲劇は最も弱い者に向かう。子ども、力のない市民、あるいは大国同士の争いの最前線に立たされる辺境の人々が犠牲になる。日本とアメリカの戦争を描いたというよりも、国家同士の衝突の狭間で、小さな人間たちがどう生き延びるかを描きました。世界中の“辺境”に生きる人々に届いてほしい」と呼びかけた。  本作で沖縄出身の新兵・安慶名セイジュンを演じた山田も、まずは英語で「こうして世界に向けて発信する機会をいただき、心より感謝しています」とあいさつ。続きは日本語で、「この作品は誰が味方で誰が敵かを描いた戦争映画ではなく、誰もが望む平和な未来を信じています」と強調し、「戦争の偉業よりも、苦難の中での人間の弱さや滑稽さを描き、それでも生きようとすることの大切さを伝える、祈りのような作品です」と語った。  記者から「若い世代に何を伝えたいか」と問われた際には、山田が自身の思いを次のように語った。  「どの作品でも、若者だけでなく、どうすればより多くの人に見てもらえるかを意識していますし、そのプレッシャーを感じています。今回、安慶名を演じるにあたっては、平和を祈る気持ちを込めました。安慶名はただ家に帰りたかったし、お母さんに会いたかった。友達と海を眺めるだけで幸せだった。現代を生きる僕らと同じなんだということを感じてもらいたい。若者に『これは戦争映画です』と言うと構えてしまう人が多いと思います。でも、これは年齢制限のない映画です。だからこそ、若い子どもたちにも届けられる作品だと思います。世界中の皆さんにも力を貸していただいて、たくさんの人に観てもらいたい。これは“日本のお話”ではなく“人間の心の話”です。ハートの問題、人としての心を伝えたい。大人だけでなく、世界中の子どもたちにも伝わってほしい」と熱く訴えた。  あわせて山田は「モデルになった佐次田秀順さんがどんな思いでいたのかを考え続けました。虫が大嫌いな僕が、撮影で木の上にいる間は虫も平気になったし、ウジ虫を食べるシーンも実際にかんで飲み込みました。それは“ウジ虫を食べた”ことがすごいのではなく、自分がどこまで本物に近づけるかの勝負だったからです」と役作りへの覚悟も明かした。  現代のSNSなどでの言葉の攻撃にも触れ、「平和とは何かを考えてほしい。銃やミサイルを使った戦争も、言葉での攻撃も、平和ではない」と呼びかけた。  山田が話し終えると、通訳が英訳を始める前から会場には拍手が起こり、英訳を終えた後にも再び拍手がわき起こった。  沖縄出身の平監督には「どのような思いで沖縄戦を描いた作品を手がけたのか」という質問も寄せられた。これに平監督は、「この映画の話をいただいたのは2年前、33歳の時でした。正直、沖縄に生まれ育って、平和教育を受けていたとはいえ、沖縄戦と真正面から向き合ってこなかった自分が、この映画を引き受けていいのかという迷いもありました」と打ち明けた。  「この映画を準備する中で初めて真剣に沖縄戦を調べ、取材を重ねました。調べるほどにつらい証言ばかりでしたが、これまで沖縄戦に目を背けてきた自分のような人にこそ、この映画を届けたいと思いました。沖縄には毎年6月23日に『慰霊の日』があり、正午に黙祷(もくとう)します。それを当たり前だと思っていたけれど、今年初めて東京で迎えた慰霊の日の黙祷では涙が止まりませんでした。この映画を通じて初めて本気で沖縄戦と向き合い、この作品を通して一番成長させられたのは自分自身だと思っています」と語っ。  映画『木の上の軍隊』は、現在先行公開中の沖縄県に続き、7月25日から全国で公開される。

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