日本特有の「クラス全員でひとりを無視する」タイプのいじめ…鴻上尚史さんが教える「いじめてきた奴らと戦う方法」

いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第58回 『「学校に行かなくてもいい」「とことん逃げ続けろ」…「いじめられている君へ」鴻上尚史さんが贈るメッセージ』より続く いじめた奴を「追い出す」べき 最近は、この文章に対して「どうしていじめられた人が逃げないといけないんだ。教室を去るのは、いじめた奴らだ」という意見が増えてきました。 ぼくはそれは、とてもいいことだと思います。 本来は、いじめられた人が「逃げ出す」のではなく、いじめた奴を「追い出す」のが当然なのです。 20年で着実にいじめに対する考えが変わったように、その当たり前の状態にきっとなると思います。一刻も早く、そうしないといけないとも思います。 ただ、今、君がいじめられているのなら、緊急事態ですから、まず学校を休む。そして、恥ずかしくても、親に言う。親を巻き込まないと一歩も進まないのです。 親と学校の話し合いの間も、君は学校を休みます。 いじめられたらするべきこと 家にいて、君がすることは、「どんなふうにいじめられてきたか」を正確に記録することです。 何月何日、何時ごろに誰からどんなことをされたか。なんという言葉をぶつけられたか。記録するのは、つらくてつらくてたまらないことですが、それは君自身を守るために必要なことです。 ひどいことを書いた紙とか、破られた教科書などの「証拠」があればなおいいですが、証拠がなくても大丈夫です。 思い出せるだけの「やられたこと・言われたこと」を順番に書き出します。 いじめが始まった時から、今まで、どんなことをされたか。どんなことを言われたか。 書き出したら、つらくて涙が止まらないかもしれません。吐くかもしれません。頭が痛くなって寝込むかもしれません。 それでも歯を食いしばってガマンして書いてください。学校を休んで、ゆっくりと時間をかけて、君がされたことを記録するのです。 それは、いじめた奴らと正式に戦う武器です。 つらいでしょうが、がんばって書き上げてください。 順番はどちらが先でもいい 親にいじめられていることを言えないなら、先に記録を書いてもいいでしょう。学校を休んで、とにかく記録を残すのです。 つらく悲しい気持ちを書くのではなく、「されたこと・言われたこと」を順番にメモしていくのです。 学校の態度が誠実ならいいのですが、もし、いじめを隠そうとか、問題を軽くしようとしていたら、親と君は学校に対して厳しい態度を取る必要が出てきます。 でも、記録があれば他の人と共に戦えます。 記録があることで、君と親と学校だけではなく、それ以外の人も巻き込むことができるのです。教育委員会の人か、弁護士かカウンセラーか、とにかく、君の記録が説得力を持つのです。 親が一人で学校に行き、不誠実な態度でうやむやにされそうになった時に、必ず必要なものなのです。 自分がされたつらいことは、一刻も早く忘れたいのが当たり前の感情です。でも、生き延びるためにがんばるのです。死なないために。 そして、どんなに苦しくても、君には最終的な武器があります。 「逃げること」です。苦しくてどうしようもなくなったら、とことん逃げてください。生きている限り、なんとかなります。 日本にしかないタイプのいじめ 世界中にいじめはあります。でも、日本にしかないいじめのタイプがあります。 それは、「クラス全員でひとりを無視する」というものです。 世界のいじめは、いじめる奴がいて、いじめられる奴がいて、いじめをとめようとする奴がいて、黙って見ている奴がいて、面白がっている奴がいて、無関心な奴がいて、先生に言う奴がいてとバラバラです。 日本のいじめだけが、「いじめている奴の空気を読んで、クラスがまとまる」ということが起こるのです。 これもまた、「世間」から生まれる「同調圧力」だとぼくは思っています。 いじめられている最中は、世界がもういじめだけで、他の世界は存在しないと思い込みがちです。 でも、それは、クラスという「世間」で生まれた「同調圧力」に過ぎないのです。 逃げることで、君は他の世界と出会うのです。ここしかないと思っていた世界以外に、別の世界が広がっていることを知るのです。 「世間」から逃げれば、君は「社会」と出会います。どんなにクラスや学校という「世間」に追い詰められても、君には「社会」があります。広くて多様な「社会」が存在するのです。 それは希望です。 希望がある限り、君は死ぬ必要なんかないのです。生きていくのです。 【前回の記事を読む】「学校に行かなくてもいい」「とことん逃げ続けろ」…「いじめられている君へ」鴻上尚史さんが贈るメッセージ

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