住宅ローンは「変動金利」か、「固定金利」か…金利上昇時代の賢い選び方【不動産コンサルタントが解説】

住宅ローンを組むときにもっとも迷うのが、「変動金利と固定金利、どちらを選ぶか」ではないだろうか? 金利上昇時代を迎えようとしている今、どちらが本当におトクなのか、不動産コンサルタントで、著書に『中古マンション これからの買い方・売り方』がある後藤一仁氏に、ズバリ答えていただいた。 「全期間固定金利」で組むと仮定する 住宅ローンの金利について、「変動金利と固定金利のどちらを選ぶか」も重要なポイントです。 年々激しさを増す金融機関同士の新規顧客獲得競争により、変動金利の優遇幅はどんどん拡大し、2024年には一部メガバンクの適用金利がかつてないほど低くなり、驚かされました。 適用金利とは実際の金利のことを指し、「基準(店頭)金利」から、契約者の属性・支払能力などによって個別に決まる「優遇幅」を引いたものです。 35年間金利を固定できる、全期間固定の金利も2025年1月時点では一時ほど低くはなくなったものの、それでもまだ物価安定目標(日銀が掲げる金融政策理念の一つで、消費者物価の前年比上昇率)である2%を切る1%台で借りられる状況です。 住宅ローンの原則的な考え方として、「全期間固定金利」でローンを組むと仮定することが基本と思われます。つまり、変動金利の超低金利をベースに計画を立てるのではなく、全期間固定の金利をベースとして考えるわけです。 そのうえで、戦略的にあえて「変動」にするのか、「全期間固定」にするのかを検討するのがよいと思います。 迷った末に「変動金利」を選ぶ人が多い 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2024年10月調査)」によれば、住宅ローンを利用する人たちが選択している金利タイプは「変動型」が約8割、当初のみ固定金利である「固定期間選択型」が約1割、「全期間固定型」は約1割です。 一方、「住宅ローン利用予定者調査(同年10月調査)」によれば、住宅ローンを利用する予定の人たちが検討している金利タイプは、変動型が38.7%で、固定期間選択型が33.3%、全期間固定型は28.0%で、検討段階では全期間固定型の割合が3割近くあります。 つまり、物件購入前の住宅ローンの検討段階では将来金利が上がるのが心配で全期間固定金利を利用しようと思っている人たちも、物件購入の売買契約を締結して、実際にローンを組む段階になると、全期間固定金利の返済額とあまりに低い適用金利の変動金利の毎月返済額とを見比べて、迷った末に当面月々の返済が低いほう(変動)をとる人が多い状況です。 たとえば、5000万円を借入期間35年(元利均等返済)で借りる場合、全期間固定金利1.8%のときでは月返済額は16万545円ですが、変動の適用金利が0.3%の場合では月12万5421円となり、月額に3万5124円の差があります。 この差額を知って「3万5000円も違うなら」と変動金利を選ぶケースが多いのです。 くわえて、不動産エージェントや銀行の担当者の「全体の約8割の方が変動金利で借りています」という話を聞いているうちに、「多くの人がそうなら自分もそうしておこう」という心理になる人もいるようです。 変動金利が上がっていく可能性も想定する 日銀は2024年3月の金融政策決定会合で、2016年から継続していた「マイナス金利政策」を解除し、2013年4月から開始した大規模金融緩和は事実上終了し、日本の金融政策は転換点を迎えることとなりました。 とはいえ、まだまだ景気回復しているとはいえない現在の日本の状況から、この数年で日銀がどんどん金利を上げるとはあまり考えにくい面もあります。 それでも、5年後、10年後、20年後にどうなっているのかは誰にもわかりません。日銀が政策金利を確実に上げていけば、変動金利が現在の全期間固定の金利水準を超えるまで上がっていく可能性も想定する必要はあるかと思います。 ちなみに日銀が2024年7月に実施した政策金利0.25%への利上げにより、各金融機関は金利を上げています。変動金利には多くの銀行で「5年ルール」があります。5年ルールは、「住宅ローンの変動金利の金利が上昇しても5年間は毎月の返済額が変わらないというルール」です。 変動金利の5年ルールを採用していない一部の銀行は実際の返済額も上がっています。銀行を選ぶ際にも5年ルールがあるかどうかも重要な判断基準の一つです。 上がり幅は借入額によってはまだ数千円ではあるものの、長いデフレの世の中しか知らず、住宅ローン金利が返済中に上がる経験をしたことのない人にとってみれば、金額の多寡より「このまま、ずっと返済額が上がり続けたらどうしよう」という精神的な不安のほうが大きいようです。 その後も日銀は2025年1月の金融政策決定会合で、政策金利の誘導目標をさらに0.25%引き上げ、17年ぶりに0.5%とすることを決定しています。 変動金利を選ぶならギリギリは避ける この状況においても、月々の住宅ローン返済額を安く印象づけたい不動産会社の営業マンからは、「他のほとんどのみなさまは変動金利でお借りになっています」と、変動金利をすすめられるかもしれません。 しかし、変動金利はその名の通り「変動」しますので、金利上昇リスクがあることから、きちんとしたリスクヘッジが必要となります。 今だけを見て「月々の返済額が低いから」「固定金利より変動金利のほうが借入額を増やせて価格が高い物件を買えるから」などの理由だけで、変動金利で返済能力ぎりぎりまでの額のローンを組むと、金利が上昇したときに支払いが難しくなり、ローン破綻の可能性も考えられます。 しかし、考え方のベースとして、本来「全期間固定金利」の返済額を支払うことができる人が、「全期間固定金利」で借りたつもりで「変動金利」で借り、その差額をきちんとプールしておくことにより、いつでも返せる状態をつくっておく、さらには、差額を毎月積立などで資産運用することができるのであればよいと思います。 また、資産性の高い物件を購入し、10年くらいで売却する可能性が高いなど、住宅ローン控除終了くらいのタイミングで一括返済するなどの方針であれば、全期間固定金利より金利が低い変動金利を選ぶのもよいかと思います。 ちなみに「固定金利の安心感はわかっているけど、変動金利の超低利の魅力も捨てがたい」という方は、ミックスローン(異なる金利タイプを組み合わせて借り入れる住宅ローン)という方法もあり、変動金利と固定金利の割合も自由に設定できます。 前述のローン利用者実態調査(2024年10月調査)では、ミックスローンの利用者は全体の12.8%で、そのなかでは変動金利タイプと固定金利タイプを同額ずつ借り入れるという利用方法が最も多い状況です。 *     *     * 住宅ローンの返済期間について知りたい方はもっと読む→「住宅ローン」の返済期間は長いほうがいい?短いほうがいい?返済で失敗しないために大事なこと【不動産コンサルタントが解説】 【もっと読む】「住宅ローン」の返済期間は長いほうがいい?短いほうがいい?返済で失敗しないために大事なこと【不動産コンサルタントが解説】

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