警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、SNSが苦手な人を狙ったセレブ詐欺について。 【写真】いかにもセレブ…な女医の白衣姿 * * * “ロマンス詐欺”といえば、SNSやマッチングアプリなどを通じて出会ったものと、実際に会うことなくやりとりを続けることで、恋愛感情や親近感を抱かせ、金銭等を騙し取るというものがある。警察庁・SOS47 特殊詐欺対策ページでは、SNS型ロマンス詐欺についてそのように書かれている。 SOS47とは、ストップ・オレオレ詐欺47〜家族の絆作戦〜プロジェクトチームの略称であり、全国で相次ぐ特殊詐欺の被害を食い止めるため、杉良太郎さんの呼び掛けで集まった著名人で結成されたプロジェクトチームだという。杉さんは国家公安委員会委員長から特別防犯対策監に委嘱され、伍代夏子さん、コロッケさんらメンバーは警察庁生活安全局長より、特別防犯支援官に委嘱されているという。 恋愛感情や結婚願望を利用して相手から金を詐取するという手口は、昔は直接会って交際している風を装い相手をだます結婚詐欺が中心だったが、今や主流は相手に会えないロマンス詐欺だ。「2人の将来のために金が必要」「結婚資金をためるため投資でお金を増やそう」という古い手口はもちろんのこと、「会いに行きたいから旅費を送金して」「荷物を送るから送料を払って」など、何かにつけて送金を求められる手口がほとんど。相手が海外にいる外国人や外国人を装う国際ロマンス詐欺も増えている。2025年1月にはAIで生成された画像などを使って米俳優ブラッド・ピットさんを装った詐欺師に、フランス人女性が約1億3300万円だまし取られる事件が起きた。女性は1年半に渡り、ブラピと交際していると思い込んでいたという。 これらのロマンス詐欺は、結婚願望がある人や独り身の人などで、日頃からスマホを使い、SNSでやり取りができる人を狙った詐欺だ。未だにガラケーのままの人や、スマホを持っていてもSNSでのやり取りが苦手という年配者は詐欺師の対象からは外されやすい。だがそんな年配者の恋愛感情や性的欲求を狙った詐欺がある。”セレブ詐欺”だ。 警察には相談しにくい 一般的にセレブ詐欺といえば、華族や貴族、資産家の子息や令嬢、有名人の隠し子などと偽って、「相続するまで手持ちがない」「いい情報があるから、一緒に投資しよう」などと偽り、裕福そうな相手から金を騙し取る手口である。しかし、ここでいうセレブ詐欺はそれとは違う。騙される相手はほとんどが独り身の年配の男性、「どこにでもいる孤独な爺ちゃんたちだよ」と、セレブ詐欺事件を扱ったことのある元刑事W氏はいう。 「一番被害が多かったのは、平成の後半。まずは詐欺師の片割れの女性が飲食店や競馬場などで、1人でいる高齢男性に目星をつけて声をかける。色々と世間話をしていくうちに、『素敵なお姉さんと交際してみませんか』と持ち掛ける。その誘い文句についフラッと心が動いてしまうような独り身の孤独な高齢男性がターゲットだ」とW氏。 詐欺師の片割れも女社長や女医などセレブを装っているという。「被害者たちはそういう金持ちのセレブ女性が集まる会があると紹介される。詐欺師は、彼女たちは稼いでいるからお金が欲しいわけではなく、交際できる男性を求めていると話す。『キレイなセレブのお姉さんと交際した上、会う度にお金がその都度5万円頂けます。交際10回コースは入会金50万円です』と勧誘する」(W氏) 被害男性たちは、キレイなセレブ女性に会える上に性的関係まで持てる可能性がある。独り身が長くなれば、人の肌が恋しくなることもあるだろう。一人孤独に食事をするより、キレイな女性と一緒なら楽しいと心が華やぐだろう。ワクワクするような魅惑的な誘いに、自分が声を掛けられた、そう思って舞い上がってしまうらしい。その上、会う度に5万円をもらえるとなれば50万円は惜しくない。引っかかる高齢男性はけっこういたという。 W氏によると「被害男性たちは、1回はセレブを装った女性と会って”いい思い”をしているようだが、それは1度きりのこと。あとはいくら連絡しても、”都合が合わない””仕事で急用ができた””海外で会議がある”などのらりくらりと言い訳が続き、そのうち詐欺師らはドロンだ」。 被害男性らも一度はいい思いをし、そこで金銭の受け渡しまでしているため、警察には相談しにくい。「交際相手のセレブ女性を装っていたのは風俗で働く女性などだが、目の前にはキレイな女性がいて、いい事ができると思い込んでいる爺ちゃんたちの頭の中はそればかりで、まさか自分が詐欺に合っているとこれっぽっちも思わない。連絡が取れなくなってそこで始めて、騙された…とわかるんだ」(W氏)。 この一連のセレブ詐欺は、当初、被害男性が他の事件に巻き込まれたことで発覚したという。詐欺師たちは騙す相手の立場や状況に応じて、様々な手口を使ってくる。W氏は「SNS型のロマンス詐欺が増えたが、セレブ詐欺もなくならない。うまい話や甘い話には裏がある。騙されないためには、声をかけられて有頂天にならず、こんなチャンス二度とないと思わず、自分に声をかけてきたなんてこれはおかしいと、まずは疑うことだ」。