学校予算の使い道を決めるのは生徒…主権者意識育む狙い、東京都中野区や山形県南陽市で制度始める

 学校や自治体の予算の使い道を子どもたちが決める取り組みが広がっている。  裁量を与えることで、学校や社会の運営に参画する意識を育むのが狙いだ。選挙権年齢が引き下げられ、子どもの時期から主権者意識を育てる必要性が高まっていることが背景にある。(渡辺光彦) 各中学校に30万円  東京都中野区立北中野中学校で6月24日、生徒会の会議が開かれた。議題は7月下旬に開かれる「北中フェスタ」のプログラムだ。生徒がスポーツ教室や理科実験などを行い、地域の子どもや保護者に同校の魅力を伝える。  昨年は教員がプログラムを作ったが、今年は生徒会が主体だ。アイデアを出し合い、新たに「写真撮影コーナー」を設けることや、子どもに人気の「縁日コーナー」を拡大し、前回は不足した玩具を多めに購入することなどを決めた。  生徒会長の3年生(14)は「小学生が北中に入りたいと思ってくれるような行事にしたい」と意気込む。  こうした自発的な活動に充てられるのが、区立小中学校に中野区が計上している予算だ。児童会や生徒会などが、学校の特色を出せるよう主体的に使い道を決めることができ、各小学校に20万円、中学校に30万円を充てている。  山形県南陽市では、公募した中高生約10人が、市予算のうち50万円の使途を決める「南陽みらい議会」を2023年度から始めた。初年度は、市内の公園で世代間交流イベントを開催。24年度は市の魅力を伝える動画を作った。 10代で「大人」に  取り組みの背景にあるのが、「大人」の年齢の変更だ。16年には選挙権年齢が、22年には民法上の成人年齢が、いずれも18歳以上となった。高校生でも投票できるようになり、自らの判断で売買契約やローンを組むことも可能になった。早い時期から社会課題について自ら考え、判断する力を育む必要性が高まっている。  淑徳大の矢尾板俊平教授(総合政策)は「年齢の引き下げで、子どもたちが自己決定を積み重ねる機会が活発に設けられるようになった」とみている。 投票行動に影響  18歳選挙権の実施以降、補欠選挙を除く国政選は計6回行われた。しかし、10代の投票率はいずれも全体の投票率を下回り、今回の参院選でも課題となっている。  ただ、子ども時代にルール作りに関わる経験は、投票率向上につながる可能性がある。  第一生命経済研究所(東京)が今年3月、18〜69歳の男女を対象に行ったインターネット調査(有効回答数1万人)では、生徒会活動など、学校のルール決めに関わった経験がある人で、「普段から投票に行っている」人は72・3%だった。一方、関わった経験がない人では53・0%だった。  調査を担当した西野偉彦主任研究員は「既存の仕組みを主体的に変える体験をすることが、社会への関心につながり、投票行動に表れているのだろう」と話す。

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