ブラッド・ピットがひたすらカッコいい『F1(R)/エフワン』 本物にこだわった“体験映像”も圧巻

 『トップガン マーヴェリック』(2022)の製作チームと、ブラッド・ピット主演で贈る映画『F1(R)/エフワン』が公開中だ。これまでもF1(R)が舞台の映画はいくつか制作されているが、主にドキュメンタリー作品が中心で、劇映画となれば、クリス・ヘムズワース主演の『ラッシュ/プライドと友情』(2013)以来となる。公平性を厳守するモータースポーツF1(R)が、文字通り全面協力と言える規模で撮影に協力するのは異例中の異例であり、前例は約60年前、1966年公開のジェームズ・ガーナー主演の名作『グラン・プリ』まで遡る。そんな本作の大きな魅力は、圧倒的臨場感の映像、そして主人公である伝説のドライバーを演じた、ブラッド・ピットのキャリア最高レベルのカッコよさだ。『トップガン マーヴェリック』で大きな飛躍を遂げたジョセフ・コシンスキー監督と、世界的映画スター、ブラッド・ピットによって、新たなスポーツ映画の傑作が誕生した。 【写真】とにかくブラピがかっこいい! 魅力あふれる『F1(R)/エフワン』フォトギャラリー ■ストーリーが単純明快な理由  本作のストーリーは単純そのもの。売却の危機に陥った弱小F1(R)チーム” エイペックスGP”は、切り札としてかつて名を馳せた破天荒な超ベテランドライバーを招聘(へい)し、無謀とも思える再起を図る……という内容だ。若いチームメイトとのライバル関係、首脳陣との衝突、女性チームスタッフとの恋愛も織り込みながら、ブラッド演じる主人公の圧倒的な才能と経験による説得力で、徐々にチームは一致団結していく。まさにスポーツ版『トップガン マーヴェリック』と言えよう。  ここで、ベタなストーリーの理由を考えてみる。そもそもF1(R)というスポーツは、およそ10ヵ月以上をかけて世界各地(2025年は24カ所)を転戦していくという世界でも類を見ないグローバルプロスポーツだ。劇中でも、世界中のさまざまな都市で次々と開催されるレースを描いていくため、話を複雑にしてしまうと各レースの魅力を損なうことにもつながる。そのためエンタメ性を重視し、F1(R)を初めて見る人でも理解できるベタな内容にとどめたのは正解だろう。  もう少し裏事情に踏み込むと、そもそもこの映画が実現した大きな要因のひとつに、現在の北米におけるF1(R)人気の高さがある。実は北米ではNETFLIXの『Formula 1: 栄光のグランプリ』が大変な注目を集めており、F1(R)人気が急上昇中。その証拠に、2025年は原則1カ国1開催のレースがアメリカだけで3ヵ所も開催されているのだ。映画史上まれにみるハリウッドへの全面協力体制は、この上昇気流に乗ってさらなる市場拡大を画策するF1(R)側の大きな狙いもあったのだ。 ■圧倒的な“体験映像”はいかにして実現したのか  本作最大の魅力は、文字通り”実際に乗っているかのような映像体験”である。宣伝でも大々的に謳われているものの、それ自体使い古された表現で説得力に欠けてしまうが、実際のところ、本作はこれまでのカーアクション映画の撮影とは比較にならないくらい、というよりも、アプローチそのものが違っていた。  通常のカーアクションは、撮影許可された公道にカメラを置き、用意した車をさまざまなアングルから撮影、時には車内にカメラを置いて臨場感を演出する。しかし本作が描くのは映画的カーアクションではなく、実際のF1(R)レースの内部である。数台のカメラを搭載した撮影用のF1カー(実際にはF2マシンの改造車)を製造し、F1世界選手権が行われる各国の実際のサーキットを走行しながら撮影されている。それはサーキット内にとどまらず、カメラはレース場のピット内部や戦略会議、マシン開発部、ドライブシミュレーターにまで踏み込んでいく。  実際のレース場では、メルセデスやフェラーリなど錚々たるレーシングチームのガレージがズラリと並ぶ中に、映画の架空のチーム” エイペックスGP”のガレージまで用意されたというから驚きだ。普通こんなことは許可されないので、そもそもほかの映画にマネできるものではない。  さらに本作には7度のワールドチャンピオンに輝いた現役レジェンドドライバーのルイス・ハミルトンが、出演だけでなく製作総指揮という形でも参加。ハミルトンはストーリーの構築から、映画の効果音に至るまで細かく製作陣にアドバイスしており、そのことがこの映画のリアリティに大きく貢献している。  そして、本作を楽しむうえで”音”も非常に重要な要素であることを付け加えたい。エンジンの轟音、タイヤの擦れる音、ブレーキ音、アクセルやギアチェンジの音、そして観客の大歓声。『デューン 砂の惑星PART2』でアカデミー賞を受賞した音響ガレス・ジョンが、「最も難しかった」とするF1(R)サーキットのレースシーンは、マシンに大量のマイクを仕込むことで、さまざまな音が入り混じる環境の中でもマシンの動きを正確に把握し、スピード感の演出に大きな役割を果たした。  筆者は本作をIMAX劇場で鑑賞したが、これまでのレース映画が目指した臨場感を超えて、まさに本物のサーキットでF1カーに乗り、ドライバー目線で時速320キロを体感する映像に圧倒された。その上で、フレキシブルに動き回る映画ならではのアングルや、エンジンをはじめとした各種の効果音に乗せられ、座席で何度かブレーキを踏みそうになったほど。抜きつ抜かれつのレースシーンでは、気が付くとひじ掛けをしっかりつかんでいた…。  本作はさまざまなラージフォーマットで上映されているので、少しでも上映設備のいい劇場でご覧いただくことを強く推奨する。 ■とにかくブラッド・ピットがカッコいい! 改めて認識したスター性  「ブラピってカッコいいんだな、やっぱり」。  これが本作を見た筆者の率直な感想である。ブラッド・ピットがカッコいいなんてことは、世界の周知の事実ではあるのだが、とにかくこの映画は初めのカットから最後のカットまで、ずーっとブラッド・ピットがカッコいいのだ。  長身のイケメン俳優であることはもちろん、ワイルドさと茶目っ気が同居し、立っているだけでカッコいいのに汚れ役を好んで演じてきた俳優でもあるブラッド。ブレイクした『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)では、無垢なイケメンっぷりをいかんなく発揮したが、作品を選べる立場になった30代からは『セブン』(1995)、『12モンキーズ』(1995)、『ファイト・クラブ』(1999)、『スナッチ』(2000)など、もてはやされる容姿を逆手に取るようにやんちゃかつ危険な男を好演。さらに1994年にトム・クルーズと共演した『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』ではまさかの吸血鬼役など、演じる役柄はとにかくバラエティに富んでいる。  40代以降は“子供の親”を演じることも多くなり、イケメンではありつつも落ち着いた役が増えてくるが、それでも“カッコいいブラピを堪能する作品”というのはこれまでほとんどなかったように思う。  そして現在、ブラッド・ピットは61歳。2023年制作の『F1(R)/エフワン』撮影当時でも59歳くらいだろう。キャリアも晩年に差し掛かっていると言っても過言ではないこの2025年に、ブラッド・ピットがこれほどカッコいい俳優と改めて思い知らされるとは思わなかった。この映画『F1(R)/エフワン』における”カッコいいブラピ表現”の狙いは、監督のジョセフ・コシンスキーならではの”スター性の最大利用”だろう。  ご存じのように、コシンスキー監督の前作『トップガン マーヴェリック』の主人公はトム・クルーズ演じるマーヴェリック。しかし36年もの年月を経た続編において、コシンスキー監督はマーヴェリックという人物像に俳優トム・クルーズそのものを投影させ、それが大きな感動を呼んだのは記憶に新しい。本作の主人公ソニー・ヘイズもまさにブラッド・ピットという希代の俳優のスター性をそのまま役に落とし込んだキャラクター。頼りになってカリスマ性があるのに、どこか茶目っ気があって、多くを語らず、つかみどころのない男。地上版『トップガン』とも言われる本作だが、マーヴェリックとはまた違う、ブラッド自身を投影したソニーというキャラクターが、本作の魅力をさらに押し上げた大きな要素となっている。  先日行われた本作のロンドンプレミアには、トム・クルーズがサプライズ登場し、ブラッド・ピットと奇跡の2ショットを披露した。31年前の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』以来共演なしの2人だが、今後再びスクリーンで並ぶ2人を観られるのではとにわかに期待が高まった。ちなみに本作で13作目のタッグを組んだプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーと音楽のハンス・ジマーが初めて出会ったのは、トム主演のレース映画『デイズ・オブ・サンダー』(1990)だったという、奇妙なつながりも。まだまだ老け込まない、世界的大スター2人の共演をぜひとも観てみたいものである。(文:稲生D)  映画『F1(R)/エフワン』は公開中。

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