温泉旅館で食べる豪華な夕食を楽しみにしている方も多いと思いますが、宿で食事をとらず、マチに繰り出して食べる「泊食分離」というスタイルが、北海道内でも徐々に広がり始めています。 その理由を探りました。 おいしい食事と温泉を楽しむ「1泊2食」の旅… 定番の過ごし方に"変化” (閻魔様)「わしは地獄の王 閻魔じゃ」 鬼が住む地獄のような光景から名付けられた「地獄谷」。 その恐ろしい名前とは裏腹に人々を癒すのがー そう!温泉です。 こちらは国内有数の温泉地・登別温泉の「第一滝本館」です。 国内にある10種類の泉質のうち、硫黄泉や食塩泉など5つの泉質を楽しむことができるといいます。 (千歳から来た人)「温泉の種類がものすごくたくさんあるのと、自分は硫黄泉が好きなのでよく利用しています」 (函館から来た人)「やはり景色ですよね。お風呂の数もたくさんあるので1日いても飽きない」 温泉で疲れを癒した後は、豪華な食事を楽しむ1泊2食の旅。 そんな定番の温泉宿での過ごし方に、いま「ある変化」が起きています。 (青柳記者)「素泊まりです」 (スタッフ)「夕食はどちらかお決めですか?」 (青柳記者)「決めていないです」 (スタッフ)「当館からそのまま商店街におりていただくと、『いせくら』という焼き肉とラーメンがおすすめの居酒屋があります」 宿泊と食事を切り離して考える「泊食分離」というスタイルです。 温泉街の飲食店は大盛況 広がる「泊食分離」 さっそく、教えてもらった温泉街の居酒屋を訪ねました。 (店員)「鶏もものザンギになります」 人気メニューは北海道名物の「ザンギ」に、道産の牛乳を使ったラーメンです。 夜になると店内は大混雑。 客の多くは近くの温泉旅館に泊まっているといいますが… (札幌から来た人)「地元のおいしいものが食べられたりするし、自分スタイルの食べ方ができる。こういうの(メニュー)見ながらとか」 (スイスから来た人)「ご当地のレストランを楽しむ方が(ホテルの食事よりも)魅力的」 (インドネシアから来た人)「たくさんの選択肢があるから。ラーメン、焼き肉、おいしそうに見えた」 食べるものを自分で選びたいという声が多く聞かれました。 別の店を訪ねるとー (宮城から来た人)「マチを楽しみたくて繰り出してみました」 (宮城から来た人)「マチの雰囲気がすごく楽しそうで、雰囲気もすごくよかったので来れてよかった」 温泉街を散策することも旅の魅力だといいます。 飲食店はこうした動きを歓迎しています。 (炭焼き&ラーメンいせくら 神誠人店長)「ありがたいですね、店にとっては。売り上げも伸びていますし、マチにお客様が出てくるということで、マチ全体が活性化すると思います」 温泉宿でも「泊食分離」を楽しむ素泊まり客が増えているといいます。 (第一滝本館 南智子社長)「昨年でいいますと全体で25パーセント・4分の1くらいのお客様が館内で夕食をとらないお客様になります。コロナ明け、泊食分離・夕食なしのプランを販売し始めて徐々に増えてきたという感じです」 さらにー 素泊まり客がターゲットのホテルも (青柳記者)「第一滝本館の目の前にあるこちらの施設は、素泊まりメインの施設として生まれ変わりました」 素泊まり客をターゲットにしたホテルも誕生。 テイクアウト可能なパンなどを販売していますが、食事を提供するレストランはありません。 部屋を見せてもらうとー (第一滝本館 千葉雄介さん)「アクティビティを楽しんでいただくために、比較的シンプルな造りになっています。特徴としてハンギングウォールですね。アウトドアギア(装備品)を好きな場所にかけていただくことができます」 登別の魅力は温泉だけにとどまりません。 近くには大湯沼や倶多楽湖といった雄大な自然を楽しめるスポットがあります。 アウトドアを楽しむ人が利用しやすいようにと、2024年8月に客室を改装しました。 また、ホテルの隣にある店舗ではアウトドア用品の販売のほか、ガイドが案内するアドベンチャー体験も受け付けています。 (第一滝本館 南智子社長)「朝早く出かけたり、夜遅く帰ってきたりご都合があるので、1泊2食という形よりは素泊まりのホテルにして。登別温泉に1泊ではなくてできれば2泊3泊していただいて、いろんなところを見てもらいたい」 インバウンドでにぎわうニセコも「泊食分離」 マチの活性化に インバウンドでにぎわうリゾート地・ニセコ町でも「泊食分離」の動きが進んでいます。 ニセコ町にあるスープカレー店です。 外国人に人気というのが、油で揚げた骨付きチキンと野菜のスープカレー。 厨房で腕を振るうのはオーナーの五味澤淳さんです。 (五味澤淳さん)「電話でホテルからの予約という感じですね。宿泊のお客さまの予約をお願いしますという感じですね」 特にスキー客が訪れる冬の間、町内のホテルから夕食の予約が入るといいます。 (五味澤淳さん)「人がやっぱり冬の場合多すぎて追いついていないんじゃないですかね、ホテルのレストランも。この辺はお店も少ないので昔はいなかったかもしれないですけど、最近は結構冬もいろんな方が出歩いていると思います」 こうした動きを受け、ニセコ町と商工会は2年前、町内の飲食店やカフェなどをまとめたデジタルマップを作成しました。 (ニセコ町役場 米田舜さん)「長期滞在になってくるとどうしてもホテルや旅館の食事以外にもマチに繰り出したいというニーズ自体はあると思うので、デジタル化することによってリアルタイムでの情報発信ですとか、より広く周知をしていければというので導入をしました」 「泊食分離」のスタイルは全国的な傾向だと専門家は分析します。 (航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん)「宿自慢の料理を食べたい、一方で、その周辺のものも含めて外で食べる、予算に応じて食べたい、食事選びに関しても2極化が進んでくる。マチの食堂やレストランについても利用が増えるということで、経済効果という部分においてもプラスになるというところがあります」 マチの活性化にもつながる「泊食分離」。 宿泊客の食のニーズにあわせた取り組みが道内でも徐々に広がりをみせています。