「教育より外国人対策を」クルド人問題に近接する「さいたま市長選」で予兆が…「玉木」国民民主党の支持を奪う「参政党」躍進の秘密とは

 石破政権が与党過半数割れとなるか——。日本の未来を左右することになる運命の参院選が公示となった。都議選で惨敗を喫した自民党はどこまで議席を減らすのか。その結果を左右することになるのが神谷宗幣代表率いる参政党の動向だ。JX通信社代表取締役の米重克洋氏が「世論の傾向」を鋭く分析する。 【写真を見る】新たに参政党に加わり、旋風を起こしそうな女性議員とは 「物価高」への対策が評価されず  この参院選では先の都議選の結果がダイレクトに反映されると考えていいと思います。  特に都議選は、無党派層の動向が結果を左右する選挙です。日本の政治は都市化が進むにつれ、地縁・血縁で投票先が決まるようなことが薄れ、政策で投票する「争点投票」が進んでいます。東京は、その極地のような場所なので、毎回、結果がスイングしやすい。 参院選での躍進なるか  地方選挙で結果が出ると、その後の選挙に「アナウンスメント効果」という形で影響することが多い。報道各社の世論調査では参政党が明らかに伸びています。都議選のアナウンスメント効果の影響が大きいと思われます。  参院選は、自民党にとっては大変厳しい展開になるでしょう。  自民党は、「物価高」への対策が有権者から評価されていません。朝日新聞の6月の世論調査でも、物価高に対する首相の対応を評価する人はわずか18%に留まっています。一方、昨年の衆院選から一貫して有権者が最も重視している政策争点は「物価高対策」です。昨年の衆院選は、選挙報道では「政治とカネ」が最重要争点だとのイメージが強かったものの、実際に報道各社の世論調査をみると、有権者が関心を持つ争点としては物価高対策の方が「政治とカネ」より上位にきていました。  ところが、自民党は物価高対策に対してノーガードだった。その結果、物価高対策を訴えた数少ない政党である国民民主党が大きく躍進したのです。  今でも世論は物価高対策を一番重視しています。世界的にみても、物価高と高失業率の二つは政権に大きなダメージを与えます。フランスやイギリスをはじめ、世界各地でインフレ・物価高が引き金となって与党が選挙に負けています。日本でも同じ流れが起きつつあると見たほうがいいでしょう。 参政党が「右派の新しい受け皿」に 「給付か減税か」——。世論調査をみても、有権者は明確に「減税」のほうを好んでいます。直近の報道各社の世論調査でも、過半数が消費減税などの減税政策を支持する一方、給付については7割程度が「評価しない」とするなど、給付よりも減税を好む傾向が明白です。つまり、シンプルに給付金は評判が悪いんです。バラマキと見なされることに加え、受け取る側の生活者としても、一回きりのお金では先の生活の見通しが立てにくいことがあげられます。物価高で重税感が強まっていることや、世論に政府の税金の使途が合理的だという認識が薄いこともあり、減税を望む声が大きいのです。  低所得者向けの給付金もときどき議論されますが、その場合、給付金を受け取る世帯の4分の3程度が高齢者世帯になるという指摘もあります。それでは国民民主党を支持するような現役世代や若い人たちにはあまり恩恵がないという点も評判の悪さにつながっています。やはり、物価高対策としてアピールするには、給付は得策ではないということでしょう。  今回の参院選の結果を左右することになりそうなのが参政党の動向です。参政党の支持層は、国民民主党の支持層と同じような特徴があります。 それは、かつての安倍政権への評価が非常に高く、一方で、旧民主党政権への評価が低いこと。参政党の場合、評価する人の割合が支持者全体の6割に上ります。  私は参政党も国民民主党も同じような層が支持の出元だったのではないかと考えています。つまり、自民党が安倍政権の頃にホールドしていた支持層が、国民民主党や参政党に流れていっているのではないか。  自民党の支持層は、岸田政権後期から石破政権にかけて高齢化が進んでいて、支持率は60代以上の高齢層に偏っています。こうした事態は高齢者からの支持が高くなったのではなく、若い支持層がいなくなったことで生じています。  安倍政権を支持していた若い人たちが、岸田政権以降の自民党を支持しなくなり、さらに昨年の衆院選で国民民主党を支持するようになった。しかし、最近になって国民民主党は比例候補者の擁立問題などで失望を買った部分があり、そこにSNSやネットを支持層獲得の場としている参政党が「右派の新しい受け皿」として、いわゆる保守層を取りこんでいる。参政党は「減税」や「外国人問題」といったテーマを掲げて、右寄りの安倍政権支持層や無党派層を、国民民主など他党の支持層やそれに近い政治意識を持つ無党派層から急速に取り込んでいったという流れだと分析しています。 「教育よりも外国人問題を何とかしてほしい」  6月14日と15日、都議選の1週間前に選挙ドットコムとJX通信社が都内で行った調査では、有権者に重視する政策争点を複数回答で聞きました。その結果、1番が物価高対策、2番が雇用・賃金、3番が医療・福祉・介護、4番目が政治とカネと続きましたが、7番目に「外国人・インバウンド対応」という項目が入ってきました。驚くことにこれが、17.1%もあったのです。ちなみに、教育・子育て(11.7%)よりも高い割合でした。つまり、都内の有権者の争点として「教育よりも外国人問題を何とかしてほしい」という声が多かったということです。  さらに、外国人・インバウンド対応を重視すると答えた人のなかで、参政党に投票すると答えた人が19%もいた。これは他党を圧倒していました。  つまり、最近のインバウンド増加や外国人労働者の増加に不満を持つ有権者が、選挙でその意思を明確にする段階に入っているわけです。そして、外国人問題に関心のある有権者の間で、参政党に最も支持が集まっている。参政党の掲げる「日本人ファースト」という主張が、まさにそういった有権者にダイレクトに響いているのでしょう。 5月のさいたま市長選で予兆が  実はこの傾向は都内だけでなく、5月のさいたま市長選でもみられました。市長選では、政治団体・日本保守党の候補者が3番手になりましたが、この候補者はあまり注目されていなかったにもかかわらず、下馬評よりも善戦しました。市内全域で1割を超える得票率でしたが、とくに川口市や蕨市に接する市南部の地域で得票率が高い傾向がありました。彼の公約は「外国人の生活保護廃止」といったもので、外国人問題が票になり始めていることがわかります。川口市や蕨市ではクルド人をめぐる問題が大きく注目されています。ヨーロッパでは移民排斥などを主張する極右政党が伸長していますが、日本でも似たような政治の潮流が生じつつあるのかもしれません。  参政党支持層の男女比については、支持率が急激に伸びており変化している可能性もありますが、、直近の調査では概ね男性の方が多くなっています。ただ、オーガニック食品や反ワクチン志向の有権者から支持を得てきた経緯もあり、女性の支持が根強いのではないかと指摘する向きもあります。 年齢層で言うと、50代以下の現役世代が多いです。  私は長年、世論調査や政党支持率の動きを見てきましたが、今の参政党の伸びは極めてレアケースで、なかなか見ることのない急激な伸び方になっています。報道各社の世論調査で、参政党の支持層には国民民主党の支持層や、同党に期待していた層の一部が流れていることが示唆されていますから、参政党が伸びれば、相対的に国民民主党の支持が落ちる可能性があるでしょう。れいわ新選組の支持層についても、類似の傾向が見られます。いずれにせよ、参政党の動向は参院選の最大の注目点となるでしょう。 デイリー新潮編集部

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