“ホラー映画工房”ブラムハウスがいま、厳しい現実に直面している。『パラノーマル・アクティビティ』シリーズから『ハロウィン』(2018)『ブラック・フォン』(2021)『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(2023)など娯楽性の高いホラー映画の数々をスマッシュヒットさせてきた評判のスタジオだが、ここ数作で興行不振が続いているのだ。 2025年は、1月米公開の『Wolf Man(原題)』が全世界で3,410万ドル、3月の 『The Woman in the Yard(原題)』が2,330万ドル 、 4月の『DROP/ドロップ』(7月11日日本公開)が2,860万ドルと手痛い結果が続いた。極めつけとなったのは、恐怖のAI人形を描いてヒットした『M3GAN ミーガン』(2022)の続編『M3GAN/ミーガン 2.0』だ。 ホラー界の新たなアイコンとなり得たミーガンをSFバトルアクション風にアップデートした自信作だったが、6月27日に米公開されると初週末は1,000万程度。現時点で全世界2,000万ドルに及ばず、予想外の低空飛行となった。 人気ホラー作の続編はなぜ転んでしまったのか?米メディアではその分析が相次ぐ。米では、前作では恐怖の対象だったミーガンがバトルアップデートされる『ターミネーター2』調展開について「観客がこの方針転換に興味を示さなかった」と見解。「これは観客が望んでいた続編ではなかった。監督が望んだ映画だったのだ」と関係者の意見を紹介した。 米も同様に、事前のプロモーションでコメディ要素を押し出しすぎたことで、従来のホラーファンを遠ざけてしまったのではないかと記している。また、前作ではミーガンが劇中で奇妙なダンスを踊るシーンがセンセーションを巻き起こしたが、結局は一時のバイラルヒットに過ぎず、次なるスクリーム・クイーンになることはできなかったと評した。 『M3GAN/ミーガン 2.0』の不振を受け、ブラムハウス社内では反省会が始まっているという。小規模な単発ホラー作品では以前のように興行収入をあげられないと認め、自社の作品ラインナップを見直すようになったということだ。同社は年間10作品の劇場公開作を手掛けていたが、これは壮大すぎるのではないかとの認識も生まれているという。 今後には『ブラック・フォン2』(2025年10月US公開予定)や『ファイブナイツ・アット・フレディーズ2』(12月US公開予定)と、評判作の続編を控える。後者はテスト試写で高評価だったというが、ここしばらくの低調を巻き返す重要な作品として見られそうだ。 黄信号となったのは、『M3GAN/ミーガン』のスピンオフとして準備中の企画『SOULM8TE』。AIラブボットと孤独な男のエロティックスリラーとして立ち上がり、キャスティングも、続編の不調で大きく事情が変わってしまった。 もっとも、ブラムハウスの作品はどれも比較的低予算であるため、配給のユニバーサル社には直近の不振をそれほど深刻視する向きはないという。低予算でホラー作品を製作することについて、ブラムハウス代表のジェイソン・ブラムは2024年、次のように語っていた。 「僕は、低予算映画を好みます。なぜなら、クリエイティビティにおいて“カネ”とは“敵”だからです。これは僕個人の意見ですが、大予算を持って映画作りを始めると、毎回というわけではないのですが、たいていの場合、映画は酷いものになってしまうんです。 例えば100万ドルや200万ドルを費やす場合、製作に携わる全員を満足させなくてはいけなくなる。ところが、全員を満足させるために映画を作り始めると、実際には誰も満足させられない、ということになります。あるいは、全員を“ちょっとだけ”満足させられるだけで、“大満足”までは至らない。」 「良い企画か?怖いか?オリジナルなものに感じられるか?これまで観たことがないものになるか?という視点で考える。僕たちの映画すべてが、こうした条件を合格して作られているというわけではないのですが、少なくとも、これまでに登場した映画のように感じられないかどうかは、かなり意識しています。」 『M3GAN/ミーガン 2.0』は、まさに誰も観たことのないオリジナルな展開を目指したことだろう。ジェイソン・ブラムは同作の米公開後、ショッキングな成績を受けて「週末ずっと苦しんでいて、今回のことを考え込んでしまっていた」と。日本では10月10日より公開。作品の野心を劇場で確かめたい。 Source:,,