参院選の投票先で4位浮上の参政党、原動力はSNS重視層…国民民主党から乗り換えか

 読売新聞社が6月27〜29日に行った全国世論調査で、参政党の政党支持率が5%で国民民主党と並び、自民党の23%、立憲民主党の6%に次ぐ3位タイとなった。  3日に公示される参院選の比例選で参政党に投票するという回答も6%で、自民党、立憲民主党、国民民主党に続く4位だった。調査結果を分析すると、特に30歳代の男性を中心に、投票の際にSNSの情報を重視する層へ支持を広げていることが明らかになった。(世論調査部 深谷浩隆) 支持率0〜2%→5%に  参政党は前回2022年7月の参院選で国政選に初挑戦し、比例選で1議席を獲得したが、読売新聞社の世論調査における政党支持率は0〜2%で推移してきた。  ところが、2度目の参院選を目前に控えた今年6月調査で、前回5月16〜18日調査から4ポイント上昇して5%となった。トップの自民党の23%(前回25%)とは開きがあるものの、前回の11%から失速した国民民主党と同率となり、2位の立憲民主党6%(前回6%)に迫る勢いだ。支持する政党はないと答えた無党派層は43%(前回41%)だった。 国民民主支持層の1割が「参政党に投票」  参院比例選の投票先は、自民党24%(前回26%)、立憲民主党11%(前回10%)、国民民主党9%(前回14%)、参政党6%(前回2%)などの順で、「決めていない」は23%(前回22%)だった。  22年参院選の公示直後に読売新聞社が行った臨時世論調査では、参政党に投票すると答えた人は1%にとどまっていたが、今回は主要政党と肩を並べた。  政党支持率や比例選投票先の今年5月調査からの変化をみると、国民民主党から離れた層が参政党に支持を乗り換えたようにも映る。実際に支持層がスライドしたかどうかは直近の調査だけでは断言できないが、6月調査で、国民民主党支持層のうち1割強が参院比例選の投票先に参政党を挙げた。自民党支持層と無党派層では1%、他の国政政党の支持層ではゼロだったのとは、様相が異なる。 「日本人ファースト」に共感か  読売新聞社と早稲田大学が昨年11〜12月に行った郵送方式の世論調査で、国民民主党の支持層は、自分に身近な利益を重視する傾向が強いことが明らかになった。「国際協調よりも自国の利益を優先すべきだ」「行政サービスが手薄になっても税金負担は小さい方がよい」といった意見に賛成する割合が、自民党、立憲民主党、日本維新の会の各党支持層に比べて高かったのだ。  参政党は今回の参院選で、「日本人ファースト」と銘打ち、消費税の段階的な廃止や外国人の受け入れ条件の見直しなどを公約に掲げている。米国でトランプ大統領が唱えた「自国第一主義」にも似た、こうした主張が、これまで国民民主党を支持していた層を引きつけた可能性がある。 30歳代の支持率トップ  政党支持率を男女別でみると、男性では参政党が8%で立憲民主党、国民民主党と並び、自民党21%に次ぐ2位タイだった。女性では、自民党が24%、立憲民主党が5%、公明党と共産党が各4%、国民民主党が3%と続き、参政党は2%だった。  年代別に参政党の支持率をみると、回答数が限られるため誤差はあるものの、30歳代で2割近くの支持を集めてトップとなり、1割前後の国民民主党や自民党を突き放した。参政党が5%以下にとどまった18〜29歳と40歳以上の各年代とは、明らかな違いがみられた。 「安倍内閣支持」世代  現在の30歳代は、10年前の2015年9月に成立した安全保障関連法を巡って安倍内閣が支持率を下げた後も、他の年代に比べて高い支持率を維持した「18〜29歳」層に含まれていた人が多い。保守色が強かった第2次安倍政権(2012年12月〜20年9月)の内閣支持率は、全体的に男性や若年層のほうが高かった。  この傾向は21年10月の岸田内閣発足後に変化し、高齢層ほど内閣支持率が高くなった。これまでの石破内閣の支持率を24年10月〜今年6月の10回の調査で平均すると、全体では37%。60歳以上は5割近く、18〜29歳や40〜59歳はそれぞれ3割前後だが、30歳代に限ると約2割と際だって低い。男女別にみると、女性は39%で、男性の35%よりも高い。安倍内閣を支えた「30歳代男性」層は、石破内閣にとっては鬼門と言える。  安倍元首相の銃撃や、「政治とカネ」の問題を受けた旧安倍派など派閥の解散、党内野党の立ち位置だった石破氏の総裁就任などを通して、自民党に対する不満を募らせてきた一部の保守層にとって、参政党が新たな受け皿になっていることがうかがえる。 SNS重視層の投票先3位  参政党は22年参院選で、街頭演説の動画をインターネットで拡散するなどの手法で支持を広げ、初の議席を獲得した。さらに昨年の衆院選の比例選で3議席を得た後も、6月の東京都議選で3人が当選し、兵庫県尼崎市議選、愛知県西尾市議選、福井県あわら市議選ではそれぞれ新人がトップ当選するなど、地域を問わず勢力拡大を続けている。都議選で当選した3人はいずれも23区の定数の多い選挙区で上位当選を果たした。擁立は4人だったが、もっと候補者を立てていたらさらに当選者が増えたかもしれない。  今回の参院選でも、SNSは参政党の武器になりそうだ。6月調査で、参院選で投票する候補者や政党を決めるときにSNSの情報を「重視する」と答えた人(全体の33%)をみると、比例選投票先に参政党を挙げた人は10%で、自民党の18%、国民民主党の15%に続く3番手だった。「重視しない」人(全体の62%)では参政党は3%にとどまり、自民党の27%、立憲民主党の14%、公明党と国民民主党の各6%、共産党の5%、日本維新の会の4%を下回った。SNSの情報を「重視する」人ほど参政党に投票しようと考えている傾向は、どの年代においても変わらなかった。 「わかりやすさ」の危険  近年、SNSが選挙に与える影響は強まり、参政党だけでなく各党が主張の拡散を競っている。ユーチューブなどに投稿された短時間の切り抜き動画や、X(旧ツイッター)での短文の投稿は、ふだん政治の情報にあまり接しない人にもわかりやすい反面、過激な主張や正確性を欠いた情報が拡散されやすい。アルゴリズムによって自分が好む投稿ばかりが表示される「フィルターバブル」の問題が有識者から指摘されている。SNSなどで似た考えの人たちばかりが集まり、意見が極端な方向に偏ってしまう「エコーチェンバー」の危険性もはらむ。  「良識の府」とされる参院に、民意を反映するための選挙が始まる。有権者一人ひとりにも、「わかりやすさ」に飛びつくのではなく、多様なメディアを通じて立候補者や各政党の訴えを冷静に見極める姿勢が求められる。

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