稼ぎ時のはずが月間打率.265で“メジャー移籍後最悪の6月” ドジャース・大谷翔平投手は6月を終えて、今季打率.287、ナ・リーグ最多の29本塁打を放ち、打点は54とした。6月に限ると月間打率.265、7本塁打17打点に終わり、本来6月を得意にしてきた大谷にとっては“メジャー移籍後最悪の6月”ともいわれた。16日(日本時間17日)のパドレス戦で663日にマウンドへ上がり、二刀流が復活。今後の打撃はどう変化していくのだろうか。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が分析する。 投手としての大谷は、復帰後3度目の登板となった6月28日(同29日)のロイヤルズ戦で2イニングを投げ、メジャー移籍後自己最速の164キロを計測するなど、着実にレベルアップ。新井氏は「もう間もなく、5回くらいまで投げて本格的に先発投手の役割を果たせるようになるでしょう」と太鼓判を押す。 ただ、気になる現象も指摘する。「投手として登板した日の第1、第2打席は、集中しきれていなかっとまでは言いませんが、少しマウンドの方に気持ちが行ってしまい、まるで早く打席を終わらせたがっているように私には見えました。試合の後半に彼らしさを取り戻していましたが……」との見解を示す。 今季先発マウンドに上がった試合での大谷の打撃は、15日(同16日)パドレス戦では空振り三振、二塁打、右前打、空振り三振、四球。22日(同23日)のナショナルズ戦は空振り三振、空振り三振、四球、三塁打、本塁打。28日(同29日)のロイヤルズ戦は見逃し三振、空振り三振、中飛、見逃し三振だった。 特にホームゲームで初回の投球を終えた後、急いでヘルメット、エルボーガード、フットガードを装着して初回先頭の打席に備える姿はなんとも慌ただしく、感覚を取り戻すには少々時間がかかるのかもしれない。 二刀流復活の影響は多岐にわたる。昨季54本塁打・59盗塁で“50-50”の快挙を成し遂げた大谷は、今季も11盗塁をマークしているが、最後に盗塁をしたのは5月20日(同21日)のダイヤモンドバックス戦が最後。投手復帰後は1個もしていない。「さすがに二刀流復帰後の盗塁は、負担が大きいですし、怪我のリスクも高い。チームも今季の大谷に盗塁は望んでいないでしょう。大谷らしいスイングをして、長打になってくれればいいと考えていると思います」と新井氏は指摘する。 5年連続30本塁打以上に最大限の評価「大谷とジャッジくらい」 また、「心配なのは球団側が今後、大谷が5〜6回、100球以上を投げた翌日に“休養日”を設ける可能性があるということ。大谷本人に聞けば『出たい』と答えると思いますが、二刀流復帰初年度だけに、球団側は故障のリスクを避けるために『休め』と命じるかもしれない。そうなると、シーズントータルで打席数が減り、タイトル争いや本塁打数に影響を及ぼすかもしれません」と新井氏は付け加えた。 今年6月の大谷は、月間打率で見るとメジャー移籍後最悪の6月だった(6月の出場試合数がわずか4だった2018年と新型コロナウイルスの拡大で7月開幕だった2020年を除く。ちなみに、月間17打点は2022年とワーストタイ。本塁打は2022年の6本がワースト)。 とはいえ、新井氏は「調子の波があるのはやむをえない。むしろ大谷の場合は、5年連続30本塁打以上にリーチをかけている安定感を称賛するべきです。現役メジャーリーガーでこれを継続しているのは、大谷とヤンキースのアーロン・ジャッジ(外野手、今季30号を放ち5年連続)くらいでしょう」と強調する。 その6月も「後半には特に左投手に対し、“逆方向”の左翼席に放り込むなど、打ち返す方向が非常によくなった」と見た。とりわけ同27日のロイヤルズ戦の初回、左腕ノア・キャメロン投手の内角の125キロのチェンジアップを右中間席へ運んだ29号ソロに着目。「あのチェンジアップは、普通なら結果が出るとしてもライト線かポール際の本塁打。手元まで呼び込み切れずファウルになりがちです。それをライトの定位置よりもセンター寄りに打ち返せたことに意味があり、いい打ち方ができている証拠だと思います」と指摘する。 いよいよ本格化する二刀流。今季は最終的にどれほど“想定外”の数字を残すのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)