政府は1日の中央防災会議で、最悪の場合、死者29万8000人とされる南海トラフ巨大地震について、今後10年間で死者数をおおむね8割減らすとする目標を決定しました。また、特に防災対策が必要な地域として、新たに16市町村を追加する方針です。 今後30年以内に80％程度の確率でおきるとされている南海トラフ巨大地震。 政府は今年3月、およそ10年ぶりに被害想定を見直し、最悪の場合、死者数が約29万8000人、全壊・焼失する建物が約235万棟、災害関連死が約2万6000人〜5万2000人などとしています。 これをもとに政府は1日、中央防災会議を開き、防災対策の方針となる「基本計画」をおよそ11年ぶりに見直しました。 さらに、防災対策を推進する地域として新たに16市町村を追加する方針です。 ■「命を守る対策」と「命をつなぐ対策」を重視 基本計画では、今後10年間で、死者数をおおむね8割、全壊・焼失する建物数をおおむね5割減らすとしています。 そのうえで、直接死を防ぐ「命を守る」対策と、助かった命が避難生活で失われないようにする「命をつなぐ」対策を重点化すると強調しました。 具体的には、住宅や避難所の耐震化などのハード面をおし進めることにしています。 また、大きな課題となっている災害関連死を防ぐため、避難所で確保すべき生活環境を定めた国際基準「スフィア基準」を満たすような備蓄を行っている市町村の割合を2030年に100％とすることなどを掲げました。 こうした施策や目標については、毎年フォローアップをすることを明記しています。 ■「8割減」「5割減」の数字はどこから？ 政府は2014年に公表した前回の基本計画でも、死者数を「10年間で8割減」などとする目標を掲げています。今年3月の新たな被害想定では目標には遠く及びませんでしたが、数値目標は変更しない形となりました。 「8割減」「5割減」の目標について内閣府は、数的な根拠があるものではないものの、「すべての施策が着実に進めば達成可能な水準」だとしたうえで、高い目標を掲げることで対策推進につなげる狙いがあるとしています。 ■防災対策を行うべき地域に新たに16市町村を追加 さらに、政府は南海トラフ地震が発生した場合に著しい災害がおきるおそれのある「防災対策推進地域」に新たに16市町村を加え、全国723市町村に拡大しました。 新たに「防災対策推進地域」に追加された自治体は… ▼神奈川県綾瀬市 ▼長野県塩尻市・王滝村 ▼長崎県長崎市・佐世保市・諫早市・平戸市・五島市・西海市・雲仙市・新上五島市 ▼熊本県熊本市・氷川町 ▼大分県日田市・玖珠町 ▼沖縄県今帰仁村 長崎県が新たに追加されたことで、対象となるのは1都2府27県となります。 万が一「南海トラフ地震臨時情報」が出された場合、これらの地域では事前避難は求められませんが、家の家具の固定・水など備蓄の確認・家族との連絡手段の確認・避難場所や避難経路の確認など日頃からの地震への備えを再確認することが重要です。 また、津波が発生した場合に著しい被害が生じるおそれがあるとして、事前避難などを求める可能性がある「津波避難対策特別強化地域」についても検討されましたが、今回は新たに追加された自治体はありませんでした。