解散・ロンブーが残した“功績” 「ガサ入れ」「格付け」…ポップな革新性は唯一無二

芸人として活動継続  ロンドンブーツ1号2号の田村淳と田村亮が、生放送の番組内でコンビ解散を発表した。突然の発表に狩野英孝などの共演者は驚いていた。解散後も2人はそれぞれ芸人として活動を継続するという。  *** 【写真】「涙がでる」「そんな時代があった!」の声…田村淳が公開した“懐かし”ショット  ロンドンブーツ1号2号(ロンブー)は、デビュー以来約30年にわたってテレビの第一線で活躍を続けてきた人気コンビだった。そんな彼らの登場はお笑い界にとってセンセーショナルなものだった。 「銀座7丁目劇場」という吉本興業の劇場で育った彼らは、同世代の芸人の中でも異例のスピード出世を果たした。それが実現できたのは、淳が徹底した戦略的思考の持ち主だったからだ。自分たちが売れるためにどうすればいいかを徹底的に考えて、事務所のスタッフと仲良くなり、関係を深めて、信頼を勝ち取っていった。 ロンドンブーツ1号2号  1996年には深夜番組「あなあきロンドンブーツ」(テレビ朝日系)が始まり、1997年にはそれが「ぷらちなロンドンブーツ」になり、1999年にはゴールデンタイムで「イナズマ!ロンドンハーツ」が始まった。事務所に所属してからわずか5年でゴールデンタイムに冠番組を持つまでになったのだ。  ロンブーの人気の秘密は、それまでの芸人になかった独特の「軽さ」にあった。彼らは決してネタに定評のあるコンビではなかったが、テレビに出たときの立ちふるまいは妙に自然体で堂々としていた。良い意味で芸人らしさがなく、一般人と同じ目線で一般人をイジり、純粋に面白がっているようなところがあり、それが当時は斬新だった。赤髪と金髪というビジュアルも衝撃的だった。  そんな彼らの出世作となったのは「ぷらちなロンドンブーツ」の「ガサ入れ」という企画だった。彼女の浮気を疑っている彼氏からの依頼を受けて、彼女の部屋をガサ入れして浮気調査をする、というものだ。 一般人の恋愛事情  この企画が提案された当初、スタッフも演者も実現は難しいだろうと考えていた。そもそも家に入れてくれるはずがないし、入ったとしても捜査なんてできないだろう、と思われていたのだ。だが、実際にやってみると、意外と上手くいった。淳には並外れた頭の回転の速さとコミュニケーション能力の高さがあり、それを生かして一般人と距離を詰めていった。  企画を続けていくうちに、淳が女性の嘘を見抜く力もどんどん高まっていった。ほとんどの場合、彼らの捜査によって浮気をしていることが発覚することになった。一般人の生々しい恋愛事情にスポットを当てたことで、この企画は評判を呼んだ。  これがロンブーの名刺代わりとなり、彼らの人気はどんどん高まっていった。「イナズマ!ロンドンハーツ」でも、最初は一般人の恋愛が主なテーマになっていた。その後、一般人を対象にした企画は徐々に減っていき、芸人やタレントをターゲットにする企画が増えてきた。  その中で最大級のヒット作と言えるのが「格付けしあう女たち」である。杉田かおる、国生さゆりなどのひと癖ある女性タレントが集まり、テーマに従ってお互いを順位付けして、底なしの罵倒合戦を繰り広げる。女性同士の激しいやり取りをギリギリのところで面白おかしくまとめて処理していく淳の司会ぶりが見事だった。この企画によって淳のMCとしての能力が改めて業界内で認められ、ほかの多くの番組でも司会を任されるようになった。  ここまで淳の活躍ばかりにフォーカスしてきたが、そんな彼の隣にはいつも亮がいた。淳のキャラクターを生かした毒気の強い企画をやっているときでも、穏やかな笑顔で見守る亮がそこにいることで、場の空気が和らぐ。亮はロンブーというコンビの「良心」そのものであり、彼らの番組には欠かせない存在だった。  ロンブーの芸人離れしたポップなキャラクターは、それまでにない革新性があった。その後も彼らのあとに続くような芸人は現れていない。お笑い界において唯一無二の存在だったロンブーの歴史がここで終わってしまうのは残念である。 ラリー遠田 1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。 デイリー新潮編集部

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