「三ツ矢サイダー」「カルピス」「ウィルキンソン」という１００年超のブランドを始め、「ワンダ」「十六茶」など、数多くのロングセラーを展開するアサヒ飲料。社長の米女太一氏（63歳）の休日の過ごし方とは？ （撮影／岡田康且） 代表取締役社長 米女太一 61年、高知県出身。早稲田大学法学部卒業後、86年にアサヒビール入社。経営企画部、研究開発企画部などを経て、08年に内閣国家公務員制度改革推進本部事務局に出向。09年、アサヒ飲料の人事総務部長就任。取締役兼執行役員、常務取締役兼常務執行役員などを経て、20年３月より現職。 社員と一緒に駅伝レースを走ることも 週末は２時間ほど走っています。景色を見ながら、季節を感じながらのランニングは気持ちいいですね。３つくらいコースを持っていて、気分で決めています。 走っているうちに頭の中も整理され、週明けをすっきり迎えられる気がします。それこそ若い頃は、雨が降っていても走っていました。今は、週末のどちらか１日です。 ランニングを始めたのは、30代の頃。28歳で結婚して太り始めたことがきっかけでした。もともとやっていた水泳を再び始めたんですが、もっと気楽にできる運動はないか、と思い立ったのが、ランニングでした。 当初は近くの公園に行って、ぐるぐると周りを走る、くらいでした。ほんの５kmくらいから始まったんですが、だんだん面白くなってきて、距離を走るようになって。ダイエットにも効果が出たんですよね。 地元でハーフマラソンが行われていることを知って、出始めたのが25年ほど前。このレースは今年、20回完走したということで記念品をもらいました。 公道を走れるというのはなかなかないですし、タイムが少しずつ良くなっていくのも楽しかった。 フルマラソンも北海道マラソンを中心に10回ほど出場しています。今も年１〜２回のフルマラソン、年２〜３回のハーフマラソンに出場しています。 今は週末のランニングやマラソン大会のほか、館林にある群馬工場の社内チームと一緒に駅伝レースにも参加しています。昨年はアンカーを務めました。みんなの力で、まずまずの順位でした（笑）。 北海道マラソンで北海道支社の社員が一緒に走ってくれたり、岡山にも総社に工場があり、総社マラソンのハーフで山陽地方に勤務している社員が一緒に走ったり、応援してくれたり。ランニングを通じて、輪が広がっています。 ランニングの後は、書店で過ごす 午前中にランニングを終えると、大きな書店に行きます。そこで気になる本を見つけたら購入して、併設されているカフェですぐに読む。ジャンルを問わず、衝動的に出会ったものをすぐに読み始めるのが楽しいんです。１時間ほど、そのまま読み続けることもありますし、流し読みをすることもあります。 それから、妻とおいしいものを食べに出かけます。いい店の情報を雑誌や書籍で調べておいて、今日はここに行きたいな、と思うところに向かう。これを楽しみだと知っているので、おいしい店が載った本を息子がプレゼントしてくれました。 子どもの独立をきっかけに12年前から犬を飼い始めましたが、可愛いですね。私が散歩に連れて行くことはあまりないのですが、家が好きなので、すぐに戻りたがる（笑）。 ただ、妻はしっかり運動させてくれていますし、ご飯もしっかり食べてくれますし、長く健康でいてほしいと思っています。 ２００８年から、筑波大学大学院のビジネス科学研究科で学びました。２年で修士を修了後は、６年間、博士課程に身を置き、単位を取得しました。 ２００５年から経営企画や事業開発、研究開発戦略などの仕事に携わって、自分だけ、社内だけの知識や行動様式だけでは、もう戦えなくなるという危機感を持ちました。 本当に質の高い知見とはどのようなものなのか、学んで揉まれてこないと、これからは厳しいんじゃないか。個人はもちろん、会社も厳しくなるんじゃないかと思って、勉強しに行こうと思ったのでした。 当時、40代後半。仕事も相当に忙しい中で、火曜から金曜まで夜に、土曜は朝からずっと授業に出ないといけない。レポートもありますし、論文の準備もしないといけない。本当にハードな日々で、睡眠時間も減りました。 修士課程では、自分の論文については専門性の高い勉強をしますが、それ以外のものについても、もう少し深い勉強をして、一段高いレベルで学びたいと博士課程に進みました。いろんな方々が博士にいて、そうした方々と交流できるというのも魅力でした。 今はサポート制度がありますが、当時はそうした制度はなく、自分で費用を払っていきました。若い頃に海外留学のチャンスもあったのですが、その頃に私は人事部にいて、送り出す側でした。それで諦めざるを得ませんでした。でも、結果的には良かったのかもしれません。 「ウィルキンソン」は過去最高の販売数量 入社以来、いろんな仕事をすることになりました。それぞれで思い出がたくさんあります。人事部のときには、キャリア採用を推し進め、いろんなキャリアの人を融合させていくことになりました。 さらに、ニッカウヰスキーやカルピス社との融合など、異なる環境で過ごしてきた人たちが一緒になり、新しいものを作って行くという経験を何度かできたことが、思い出としては強く残っています。 そのベースになったのが、実は内閣官房に出向した経験でした。実は２度、出向しているんですが、最初は１９９８年の中央省庁改革のタイミングでした。 中央省庁全体の組織再編は、それはもう大変なプロジェクトでした。ただ、最初はまったく違う価値観の人の集まりはうまくいかないんですが、あるイメージがスッとできてくると、「自分たちがやらなければいけないことはこれだ」とばかりに、流れが一気に一つになっていったんです。 その光景は本当に鮮烈でした。なるほど、こんなふうにして新しい組織をまとめて行くのか、ということを見せてもらったんです。 もう一つ、自分の仕事観に大きく影響したのは、やはり大学院の経験だったと思っています。与えられた仕事の結果を出すことに一生懸命になっていたところから、大学院に行ったことで視点が一気に高まることになった。 何のために仕事をするのか、ということです。それは、世の中を良くするため、なんですね。それは世の中を良くするのか、ということを中心に考えるようになった。経営というのは結局、そういうことなんだと思います。 アサヒ飲料には、１００年を超えるブランドがあります。２０２４年、「三ツ矢」が１４０周年を、「ウィルキンソン」は１２０周年を迎えました。実は「ウィルキンソン」は、17年連続で前年超えを達成していて、昨年も過去最高の販売数量となりました。 １００年ブランドは私たちの誇りですが、先輩たちが大切にしていたものを継続しつつ、さらに時代の最先端を走り続けられるよう、新たな努力を続けている社員は素晴らしいと思っています。他のブランドでも、思い切ったチャレンジが続いています。 新入社員の頃、「世界一の会社にしたい」と言っていました。あれから39年経ちますが、思いは変わっていません。世界で一番、ワクワクできる会社にしたいし、その土台が作れる社長でありたいと思っています。 社長の月曜日 ボールペンでメモするメモ帳と、大事なことだけを転記するＡ５判のノートを使い分けています。ノートは文具店でお気に入りを選び、還暦のお祝いに子どもたちからプレゼントされた万年筆を使って書き込んでいます。何を大事にするか、一貫性を持たせることは重要。この習慣はとても意味があると思っています。本をいろんなところで読むので、気になるところをあとでチェックできるよう、付箋も常に持ち歩いています。 週末に15kmのランニング！キリンビール・堀口英樹社長の休日の過ごし方