イスラエルとイランの停戦が続く中、米軍が空爆したイランの核施設の破壊度がどれぐらいなのか議論になっている。ただ、仮にイランにまだ高濃縮ウランが残っていたとしても、監視の目は厳しく核兵器開発を続けることは難しそうだ。 　米軍は２１日、イランの核施設３か所を爆撃した。中でも米空軍Ｂ—２ステルス爆撃機が厚さ約９０メートルの硬い岩盤に守られているフォルドゥのウラン濃縮施設に地中貫通爆弾バンカーバスター「ＧＢＵ—５７」を１２発投下。同日、トランプ大統領は「完全に破壊された」と発表した。 　その後、米国防情報局（ＤＩＡ）の報告書が一部メディアに漏えいし、核施設が十分に破壊されておらず、核兵器開発が数か月遅れたにすぎないと報じられた。しかし、ＣＩＡ長官ジョン・ラドクリフ氏と国家情報長官タルシ・ギャバード氏はともに攻撃がイランの施設に「深刻な損害を与えた」と述べた。 　一方、イランの最高指導者ハメネイ師は２６日、米軍の攻撃について「何も果たせなかった」と、破壊されたことを否定した。 　また、国際原子力機関（ＩＡＥＡ）のグロッシ事務局長は２８日、ＣＢＳテレビのインタビューに対し「深刻な損傷を受けたのは確かだが、完全には損傷していない」と指摘した。 　そんな中、イランはすでにフォルドゥのウラン濃縮施設再建に乗り出しているという。米宇宙技術会社「マクサー・テクノロジーズ」が２７日に撮影した画像によると、バンカーバスターによって地面にできたクレーターの近くで作業員が掘削機やブルドーザーなどの建設車両を操作していたという。他の画像には、建設作業員らがフォルドゥへの舗装道路を再建している様子が写っている。 　イランの核開発に遅れが生じたことは確実だが、その遅れの評価が数か月から数十年とバラバラだ。それというのも、ＧＢＵ—５７が実戦初投入ということ。そして施設は地下深くにあるため、イラン当局ですらガレキを取り除いてみないと破壊度合いを把握できないからだ。 　フォルドゥのウラン濃縮施設の存在は２００９年に発覚。米軍は１５年以上もかけて調査し、今回投下したことになる。 　ただし、約４００キログラムの高濃縮ウランのうち、攻撃中にどれだけが破壊または埋められたかは不明だ。というのも衛星画像には、米国の攻撃の数日前にフォルドウの外に駐車していた貨物トラック１５台が写っている。どこかの極秘施設に移送したと思われる。 　とはいえ、高濃縮ウランが残っていたとしても、イランがイスラエルに見つからずに核兵器開発をすることは不可能とみられている。「北朝鮮、パキスタン、インド、そしてイスラエル自身など、秘密裏に核開発計画を成功させた国と違って、イランはイスラエルと米国の諜報機関に監視されています。モサド（イスラエル諜報特務庁）はイラン内部深くまで根を張っています」と同事情通は指摘している。 　イランの核開発を巡る問題は、まだまだ続きそうだ。