前編記事『不正徴収問題を生んだ日大スポーツ推薦の「深すぎる闇」を暴露…「運動部のコーチが会計係に札束の入った紙袋を」』からつづく。 また日大か——。重量挙部の不正徴収事件が明らかになり、またしても世間から厳しい目が向けられる日大。「改革の旗手」として作家の林真理子氏を理事長に迎えたはずが、なぜ腐敗の連鎖は断ち切れないのか。その裏には、旧体制から続く根深い権力闘争と、理事長を「食い物」にする取り巻きたちの存在があった。 止まらぬ不祥事、地に堕ちたブランド 「日大のドン」と呼ばれた田中英壽前理事長体制下での相次ぐ不祥事や醜聞で評判が地に墜ちた日大。2022年7月に作家の林真理子氏を理事長に迎え入れ、改革を進めようとしたが、混迷は一向に収まる気配がない。 2023年にはアメフト部の違法薬物問題が勃発、対応をめぐり、大学幹部の争いもあった。そして今回の重量挙部などの不正徴収問題。体制が変わっても不祥事が繰り返され、私学助成金も4年連続で不交付。ガバナンス不全の烙印は押されたままであり、大学の屋台骨を揺るがしている。日大の元職員で内部事情に詳しいA氏は言う。 「一連の不祥事により、大学のブランドは大きく傷つきました。特にアメフト部の薬物事件以降は受験者数が減少しています。大学の経営を考えると、10万人の受験生が欲しいところですが、一昨年はガクンと減り、去年は持ち直したものの10万人に届かなかった。 かつては日大への進学が当たり前だった付属高校の優秀な生徒たちも、他大学へ流出する傾向が続いています。それは運動部も同じです。箱根駅伝で活躍する他大学の選手に、うちの付属校出身者がいるのを見ると、切ない気持ちになります」 「旧体制の膿を出し切る」と宣言し、改革に取り組む林理事長について、A氏はこう話す。 「卒業式に有名なアーティストを招いたり、ご自身の人脈で著名人の講演会を開いたりと、学生に好評な企画も多い。林理事長の給与は年収で2400万円程度といわれています。これは作家に専念していた頃の数分の一だそうです。さらにこれまで築いてきた名声を失うリスクもある。それでも理事長職を務めている覚悟は評価に値します」 林理事長の取り巻き その一方で、改革の実態には疑問符がつくという。 「林理事長自身はクリーンでも、取り巻き連中の『食いもの』にされている気がしてなりません。膿を出すために雇った弁護士や会計士がやたら調査を行っていますが、その選定についてはブラックボックスで、本当に実務能力が高いのか疑問です。おかしなところにお金がジャブジャブ出ている気がします」 改革が進まない最大の問題は、大学内部の争いにあるという。 「田中前理事長の時代は、良くも悪くも、すべてがドンである田中前理事長を中心に回っていました。しかし、田中前理事長が失脚した後、彼に引き立ててもらった人間たちが、今度はうまく立ち回って林理事長に取り入った。そこに文科省の意向を受けて送り込まれてきた外部専門家グループも加わり、学生そっちのけで、自己保身と自身の権力の維持に汲々としています」(同前) 不可解な人事 アメフト部の薬物事件をめぐっては、林理事長が問題の対応に当たった澤田康広副学長(当時)の解任を提案する騒動に発展したが、A氏は「内部の権力争いが、こうした迷走を招いた」と指摘する。さらに、不自然な人事についても疑問を呈する。 「2018年に医学部で不正入試問題が発覚しました。当時、医学部の幹部を務めていた人物が常勤監査役にあたる『常任監事』のポストに就いています。彼は田中前理事長に引き上げられた人物です。林理事長はこうした内情を知っているのか。周囲に騙されているのではないかと心配になります」 「膿を出し切る」はずが、周囲にいるのは魑魅魍魎ばかり。林理事長の改革は、今まさにその真価が問われている。 【こちらも読む】「日大側の主張は事実無根」…スポーツ特待生から学費をダマし取って解雇された重量挙部監督の「呆れた言い訳」 【こちらも読む】「日大側の主張は事実無根」…スポーツ特待生から学費をダマし取って解雇された重量挙部監督の「呆れた言い訳」