７月にシンガポールで開幕する水泳・世界選手権を前に、競泳日本代表で主将を務める池江璃花子（２４）（横浜ゴム）が読売新聞のインタビューに応じた。 　３年後のロサンゼルス五輪を区切りに現役引退するとの決意を明かし、世界選手権のメダルへの思いを語った。（聞き手・森井智史） 　——世界選手権が始まる。 　「３月の日本選手権女子５０メートルバタフライの記録（２５秒４１）で、初メダルのチャンスがあるかもしれないと思った。やらなきゃという気持ち。ただ、ロサンゼルス五輪までの３年は一年一年の積み重ね。この１年は、水泳を楽しむ気持ちで過ごせるかも大事だと思う」 　——メダルへの思いは。 　「もちろん取りたいが、メダルには縁がない。２０１９年は世界ランク１、２位を争っていたけれど病気になり、２１年東京五輪も出ただけで終わった。今年も５０メートルバタフライは世界上位にいるけど、いけると思ったら空回りする難しい種目。いかに頑張らないかが勝負。それがはまれば、メダルが見えてくる」 　——５０メートルバタフライは新たに五輪種目になった。 　「喜びより、みんなが注力してくるからやらなきゃ、という気持ち。世界ランク上位にいても油断は１ミリもできない」 　——五輪に対する思いは。 　「こんなに毎回違う五輪を経験しているのは私だけだと思う。１６年のリオデジャネイロは伸び盛りの高校１年で、五輪はキラキラしていると感じた。出られないと思っていた東京はリレーで出て、昨年のパリは個人種目で結果を出したいと思ったけど、現実は甘くないと痛感した。誰よりも濃い五輪を経験していると思う。高校生の時は、五輪で金メダルを取ると思っていた。それが病気でかなわず、五輪の重要性や難しさも感じた。オリンピック選手という響きはかっこいい。出るだけで終わりたくない」 　——次の五輪が集大成と公言しているが。 　「水泳人生を頑張ったと思える結果で終わりたい。どんな結果でも引退すると決めている。５０メートルバタフライだけでなく、１００メートルでも応援してくれる人たちに『よく頑張った』と送り出してもらえる姿を見せたい。競技を続けるのもあと数年で、試合は数えるほどしかない。もっと向き合って大事にしなきゃいけない」 　——昨年９月には白血病の症状が見られなくなる「完全寛解」を報告した。 　「元気だから大丈夫と自信はあったけど、年に１回の検査は『再発していないよな』という気持ちだった。復帰してからも苦しかった。世界ランク１位から、泳げなくなった現実を突き付けられた。なぜ私なのか、何か悪いことしたかな——。そんなことばかり考えた。結果が出ないと自分の悪いところを探し、マイナスな言葉しか出ない時期も。今はポジティブに変われた」 　——２３年秋から豪州を拠点にしたことも大きいのでは。 　「悔いのないように、充実した日々を送っている。トレーニングを変えるなど試行錯誤している。英語が少し話せるようになって他選手との距離も縮まった。５月は欧州の大会に一人で参加した。大変だったけど今だからできた経験。残りの競技人生でもこういう経験や交流をして、世界中に友達を作りたい」 　いけえ・りかこ　東京都出身。２０１６年リオデジャネイロ五輪は１００メートルバタフライ５位。１８年アジア大会で日本競泳初の６冠に輝いた。１９年２月に白血病を公表。２０年８月にレース復帰し、２１年東京五輪はリレーのみに出場した。２４年パリ五輪は１００メートルバタフライで準決勝敗退。長水路の個人種目で５個の日本記録を持つ。