【独自】余命8年の可能性もあるなかで……経済評論家・岸博幸氏が自民党からの出馬を決めた「意外な理由」

辛口の経済評論家として知られる岸博幸氏(62歳)が、自民党公認候補として今夏の参院選に出馬(比例区)する。 一橋大学卒業後の'86年に通産省(現・経済産業省)に入省。小泉政権で経済財政政策担当相、総務相を務めた竹中平蔵氏の秘書官として、構造改革の実務を担当した。 '06年に経産省を退官した後は慶應義塾大学大学院で教鞭をとるかたわら、情報番組やバラエティ番組にも出演。常に政治、特に自民党の経済政策を批判し続けてきた。その岸氏が、一体なぜ自民党から出馬するのか……本人を直撃した。 前編記事『【独占】岸博幸さん、なんで自民党から出馬するんですか……?本人を直撃してわかった「本当の理由」』より続く。 では、なぜ自民党から出馬するのか 正直なところ、損得勘定で考えれば選挙に出て「得する」ことはひとつもありません。それでも、残り少ない人生の時間を使って日本に「恩返し」をしなければいけない。今回の出馬には、そうしたパブリックな思いもありました。 ではなぜ自民党なのか。それは野党の経済政策とは、根本的なスタンスにおいて相容れない部分があったから。それに尽きます。 たとえば野党はいま、「減税して手取りを増やす」と主張していますが、これで一体何が解消できるというのか。 物価高対策は絶対に必要ですが、引かれる金額を少なくして手取りを増やすという発想ばかりでは、国民は豊かになれません。重要なのは、政府が企業の賃上げと投資をもっと大胆に促して、いまや米国の半分以下になってしまった日本の平均年収を早く引き上げる、これに尽きるのです。ところが、ほとんどの野党はこの基本的かつ重要な事実を訴えていません。目先のことばかりで、この国をどうしていくのかというビジョンが描けていないのです。 一例を挙げれば、自民党は現在「2040年に名目GDP1000兆円」という方針を打ち出しています。皆さんと同様、15年も先のことを言ってどうするんだと思うのですが、それすら言わないのがいまの野党です。自民党にもさまざまな問題点があるとはいえ、「未来のビジョンを示す」という政権担当能力において、野党と大きな差があるのは明白です。 自民党からの意外な返答 失われた30年の間ずっと日本経済が低迷したのは、海外への投資を増やす一方、デフレや人口減少が続く国内での投資や賃上げを最小限にしてきたからです。でも、いまはその悪循環を脱する好機です。人手不足が深刻になり、またトランプ大統領の影響で重要物資の供給は国内で担えるようにする方向と、ようやく企業が国内での投資と賃上げに注力する環境が整ってきたのです。 だからこそ、正しい財政出動で企業の投資と賃上げを強力に後押しすれば、日本経済は必ず復活できます。それに加え、日本経済復活のためには、税制改革と社会保険制度の抜本改革も不可欠です。 当選を果たした暁にはどのような政治家になりたいのか。岸氏の口からは意外な名前が飛び出した。 先も短いわけですから、普通の政治家になるつもりはまったくありません。そもそも出馬のオファーがあったとき、僕はこう言いました。 「これまで自民党の政策を批判してきました。今後も、それをやめるつもりはありません。それでもいいですか?」 すると意外なことに、自民党は「それでいい」と言うんですね。党の中枢にはまだ、異論を取り込むことができる懐の深さがあるんだな、と感じました。 目指すは「上品なハマコー」 もしかしたら「うるさいやつを身内にしてしまえば批判もできなくなるだろう」という考えも、執行部にはあるのかもしれない。しかし、こちらも遠慮はしません。かつて国会で大暴れしたハマコー(浜田幸一)さんのようになりたい。とはいっても、もちろん暴言や暴力行為はダメですから、少しは時代に合わせて「上品なハマコー」を目指します。 自民党には優秀な若手議員がいますが、なんだかおとなしいと思いませんか。政策に異を唱えるにしても、自分のSNSで遠慮がちに不満を表明するぐらい。ならば僕は堂々と、大声で言います。自民党の「劇薬」となることで自由闊達な政策議論を促し、ひいては日本が活性化し、経済は復活する。そう信じているのです。 亡き森永卓郎さんとの対話、そして僕の経済政策に対する考えをまとめた書籍『ザイム真理教と霞が関の真実—余命8年の元官僚が命を賭ける日本再生の処方箋』が6月27日に発売されます。政治と官僚のあるべき姿、そして経済復活のシナリオに興味のある方はぜひ、ご一読いただければ幸いです。 岸氏の心境 いまの僕の心境は、幕末の思想家である吉田松陰が残した有名な句に近いものがあります。 〈かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂〉 黒船に乗ってアメリカへ行くことは、鎖国の掟を破ること、つまり死刑になることだと十分にわかっている。それでも日本の国をよりよくしたいという気持ちから、それを止めることができない——アクセル全開で、残り8年の人生を駆け抜けます。 【こちらも読む】『高市早苗が漏らした夫の介護の苦労「帰ってきたら、食べこぼしがいっぱいあって…」』 「週刊現代」2025年07月07日号より 【こちらも読む】高市早苗が漏らした夫の介護の苦労「帰ってきたら、食べこぼしがいっぱいあって…」

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