誰もが真似したくなる「シンプルな家庭料理」で人気 ウー・ウェンさん

誰もが真似したくなる、シンプルな家庭料理で人気のウー・ウェンさん。 長年、家族の健康を第一に考えて、料理を作り続けてきた。その根底にあるのは、ウーさんならではの「暮らしに対する哲学」。 ウーさんの考え方そのものを知るエッセイとして出版された『本当に大事なことはほんの少し 料理も人生も、すべてシンプルに考える生活術』(大和書房)は大ヒット。 2冊目の『10品を繰り返し作りましょう わたしの大事な料理の話』も評判を呼び、2023年料理レシピ本大賞【料理部門】エッセイ賞を受賞した。 3冊目にして完結編として生まれたのが、最新刊の『最小限の材料でおいしく作る9のこつ』。 共にエッセイのスタイルで、読むとしみじみ納得がいく。「ウーさんは、こういう理由で、この方法を選んでいるのか」。理由がわかるとわからないでは大違いだ。 最新刊のまえがきではこう言っている。 ***** すっきりと気持ちよく生きていきたいですよね。 そのためには、すっきりとしたきれいな味のごはんを食べること。それがいちばん大事だと思っています。食べるものが私たちのからだを作るのだし、生きるエネルギーになるのですから、食事は睡眠と同じぐらい、ものすごく大切です。 すっきりとしたきれいな味で、胃にもたれず、からだに負担がかからない。 すっきりとしたきれいな味で、からだに必要な栄養がとれて、食べ終わったときにとても満足感がある。心まで満たされる。こういうごはんは、家でこそ、食べられるものです。家庭料理のお得意技です。 食事って、そのとき1回だけではなく、朝昼晩、昨日、今日、明日と、延々と続いていくものです。昨晩は揚げ物を食べたから、今夜はさっぱりとした蒸し物がいいかな、と家で料理を作る人は考えます。家族や自分の心身の健康を考えて、ごはんを作る。それは何よりも大事なことだし、とても尊いことだと思います。 消化がよくてからだにやさしい料理とは、ことこと炊いたおかゆのように、やさしい火加減で時間をかけて加熱したものだといわれています。もちろん、たまに外食でガツンとうまみのある料理をいただくのは、エンターテインメントとしていいことです。でも、お店の料理はあくまでも�刺激”であり、私たちがすっきりと気持ちよく生きるための食事とは一線を画するものなのです。 生きるための食事は家で作ります。私がみなさんに教えているのも、日々気持ちよく生きるための普通の家庭料理です。 もともと私の作るごはんは、使う材料の数が少なく、味つけも塩と油とこしょうぐらいの、ものすごくシンプルなものがほとんどでした。 それが、最近ますますシンプルになってきました。理由があります。 素材がおいしくなっているのです。私が来日した35年前と今とでは、トマトひとつとっても味がまったく違います。野菜がどんどんおいしくなっている。試しに旬の野菜を蒸して、食べてみてください。「えっ、キャベツって、こんなに甘かった?」「このまま食べればいいじゃない」と思うはずです。 素材じたいがおいしくなっているから、塩も油も、使う量が減ってきました。究極のシンプルな家庭料理を、私は毎日作って食べていると思います。おかげさまで元気に、すっきりと気持ちよく生きることができています。 ***** こちらの最新刊と『本当に大事なことはほんの少し』から、4回にわけて、「ウーさんのとっておきの当たり前」をお伝えする。 第1回の今回は、「肉はとにかく蒸しましょう」。 *以下、本書からの抜粋。 肉はとにかく蒸しましょう 子供や若い人は、肉料理が大好きですよね。うちの子供たちも肉が好きでしたから、私もしょっちゅう肉料理を作っていました。 年を重ねてからも、たんぱく質をとるために「お肉を食べなくちゃ」という気持ちがいつもあります。 でも残念ながら、外食や、外で買ってくるお惣菜の肉料理は、ヘルシーなものばかりではありません。揚げ物のように油を多く使ったものや、味つけの濃い料理が多く目にとまります。お店が利益を出すためには、コストを抑えなければならず、材料に上質な肉はなかなか使えません。そこを、油でうまみを加えたり、濃い味つけにしたりすることで、食べた人が満足できるような料理に仕上げているわけです。するとどうしてもハイカロリーのおかずになってしまう。ですからお伝えしたいのです。肉料理こそ、家庭で作りましょう! 家庭で作れば、ヘルシーでおいしい肉料理が食べられますから。 私は肉を買ってきたら、とにかく蒸します。それがいちばん簡単で、ラクチンで、おいしい食べ方だと思うから。理由をご説明しましょう。 みなさんは家庭の肉料理というと、どんなものをイメージするでしょうか。 「薄切り肉を買ってきて、チャチャッと炒めて……」と考える人が多いのではないかしら? でも実は、炒め物は決してお気楽な料理ではないのです。炒め物は、ずっと鍋の中を見ていないといけないから、つきっきりになります。それに、おいしい炒め物を作るには、下ごしらえがとても大切。炒める前に肉を下ゆでするなど、意外に手間がかかります。火加減の調整やタイミングも重要です。 その点、肉を蒸すのはラクチン。蒸気の上がった蒸し器に入れて、放っておけばいいんです。肉を蒸している間にほかのことができます。蒸し時間も、目安の時間はありますが、少しくらい長くなっても大丈夫。これが「肉は蒸す」 をおすすめする理由その1です。 「肉は蒸す」 をおすすめする理由その2は、蒸すとおいしくなるから。素材の中の水分が熱で蒸気になり、その熱い蒸気で包まれるようにして火が通るのが「蒸す」という調理法です。 つまり、自分のうまみで自分を蒸すわけですから、素材のうまみが逃げず、むしろ凝縮されたようになる。 野菜も蒸すと味が濃くなっておいしいですが、「肉は蒸す」ことでうまみが外に逃げず、ジューシーにふっくらやわらかく火が通ります。試しに蒸したての肉をスライスして、塩と油(ごま油でもオリーブオイルでも)だけで食べてみてください。すごくおいしくて驚きますよ。「蒸す」は、素材のおいしさをはっきりとシンプルに味わえる調理法です。 「肉は蒸す」をおすすめする理由その3は、「食べられる下ごしらえ」だからです。蒸したてをそのまま味わったら、次のお楽しみもあるのです。蒸した肉さえあれば、調味料をからめるだけで、おいしいチャーシューのできあがり。野菜とサッと炒め合わせて食べてもいいですね。 蒸した肉は「もち」がいいのです。食品が悪くなるのは、まず「水分から」です。その食材が含んでいる水分や、食品のまわりについている水が、最初に悪くなる。その点、蒸した肉はゆでるのと違って水に触れず、自分の水分(肉が含む水分)を蒸気にして蒸発させながら、その熱い蒸気で火が通るわけですから、水分がうまい具合に抜けている。だから傷みにくいのです。冷蔵庫で数日はもってくれます。 もちろん蒸したてを食べるのが、いちばんおいしいです。だから、蒸したらその日に食べてほしい。保存のために肉を蒸すわけではないですよ。ただ、どうせ蒸すのであれば、鶏肉1枚よりも、一度に2枚を蒸したほうがお得ですよね。1枚も2枚も、蒸し時間は変わらないのだから。最初は蒸したてを塩と油をつける程度でシンプルに食べる。翌日は蒸して「食べられる下ごしらえ」がしてある肉で、炒め物や和え物を楽しむ。そういう利点が「肉を蒸す」にはあるのです。 ささみをふっくら蒸す方法 ヘルシーな肉の代表といえば、鶏のささみです。脂分が非常に少ないのでヘルシーですが、ささみはご存じのように調理するとパサパサになりがちです。ゆでても煮ても焼いても、どうしたってパサパサになってしまう。 「その点、蒸し物なら……」と続けたいところですが、ささみは蒸してもパサつきます。 でも、ご安心ください。そのまま蒸すのではパサつくけれど、あるひと手間で「これがささみ!」というふっくら感を保ちながら蒸し上げることができるんです。 そのひと手間とは、下味をつけることです。ささみを蒸すとき、私はいつも下味をつけて冷蔵庫に一晩置きます。下味は鶏ささみ4本に対して、こしょう少々、塩麹大さじ1です。こしょうは肉のくさみを消してくれます。 発酵食品の塩麹は、肉にまぶすと肉が本当にやわらかくなります。でも塩麹がなければ、粗塩小さじと酒大さじ1でも大丈夫。酒にも素材をやわらかくする作用がありますから。 蒸し器の湯を沸かして、十分に蒸気が上がったら、ささみを並べて入れます。そしてふたをして、中火で2分、弱火で5分蒸します。 火を止めて、そのまま10分放置します。 「蒸す」の基本について、おさらいしておきましょう。 蒸気が上がって熱くなった蒸し器に、冷たい材料を入れると温度が下がります。 これを一気に熱くしたいので、最初は強めの火です。そして全体が温まれば、もう熱量は一定に保たれますから、弱火にしてOKです。強い火のままガンガン蒸すと、肉にストレスがかかって、かたくなってしまいます。 最初は強火~中火で全体を温め、温まったら弱火で素材に火を通す。火が通ったら、すぐにふたを開けない。火を止めて、ふたをしたまま放置する。 放置する理由は、何度もお伝えしているように、すぐにふたを開けてしまうと、素材(肉)がかいた汗 (蒸気)がパーッと逃げてしまうからです。 素材のうまみを含んだ蒸気の熱で、素材を包み込んで中まで火を通すのが、蒸すという調理法です。 そのうまみの蒸気を逃さないように、ふたをしたまま少し放置する。放置することで蒸気が落ち着いて、素材(肉)の中にうまみの水分が戻り、肉がしっとりと仕上がるのです。 中火で2分+弱火で5分蒸し、火を止めて10分放置。 これが鶏ささみの蒸し時間です。 簡単バンバンジーを作りましょう 蒸したささみはふっくら、しっとり。もちろん、そのまま食べてもいいのですが、 バンバンジーにすると、いっそうおいしく召し上がれると思います。バンバンジーのごまだれの油分が淡白なささみと合わさることで、さっぱりとしつつコクのある一品になります。 ごまだれは、練りごま (白) 大さじ1、しょうゆ大さじ1、黒酢大さじ1/2、お好みで花椒(ホアジャオ)粉小さじ1/3を混ぜ合わせます。練りごまがかたいときは、水大さじ1/2を加えてのばしてください。 花椒粉はスーパーのスパイスコーナーで手に入ります。 香りのよいスパイスですが、子供が食べるなら入れなくてもいいです(うちの子供たちは小さいころから好きでした)。 ごまだれをボウルに混ぜ合わせたら、ささみを手でさいて加えます。包丁で切るのではなく、繊維に沿って手でさっくりとさいたほうが、ささみにたれの味がなじむし、見た目にも表情が出ます。 ささみとごまだれをまんべんなくしっかり混ぜ合わせてください。しっかり混ぜたほうがおいしく仕上がります。 きゅうり1本の皮をピーラーでむいて、包丁の腹をのせて上から軽くたたいてつぶし、4等分の長さに切ります。 きゅうりをつぶすのは、繊維を断ち切りたいから。こうすることで味がからみやすく、食べやすくなります。 きゅうりもささみのボウルに入れて、全体をよく和えます。 これで「簡単バンバンジー」のできあがりです。 下味をつけて蒸すことでパサつかずにふっくらと火の通ったささみが、ごまだれのコク、きゅうりのみずみずしさと合わさることで、さらにおいしくなります。バンバンジーはささみ以外の、蒸した鶏むね肉や鶏もも肉で作ってもいいですよ。わが家では暑くなってくると、ちぎったみょうが、大葉、バジルやミントなどの香味野菜を日替わりで加えたバンバンジーが、毎日のように食卓に登場します。ぜひ味わいの変化を楽しんでください。 *詳しい分量、手順は本書の巻末に載っています。 3工程以内で作れる!じゃがいも・もやし・さつまいもの究極のシンプルレシピ3つ

もっと
Recommendations

イラン外相「IAEA訪問は受け入れない」…「核施設攻撃は条約違反」NPT脱退の可能性にも言及

【エルサレム=作田総輝】イランのアッバス・アラグチ外相は26日…

東京・府中市の給食向け鶏肉、外国産なのに「宮崎県産」と偽装容疑…食肉会社社長ら逮捕

外国産の鶏肉を国産と偽って学校給食の食材向けに納品したとして、…

【緒方かな子】「絵でも何でも完成した瞬間が1番嬉しいですよね」 陶芸教室で作った葉っぱ型お皿を披露

27日、元・広島東洋カープ緒方孝市監督の妻でタレントの緒方かな子さ…

座間9人殺害、白石死刑囚の死刑執行に高3娘が犠牲となった男性「何も感情が湧いてこない」

SNSなどを通じて知り合った男女9人を2か月間で次々と殺害し、…

【独自】余命8年の可能性もあるなかで……経済評論家・岸博幸氏が自民党からの出馬を決めた「意外な理由」

辛口の経済評論家として知られる岸博幸氏(62歳)が、自民党公認候補…

【柏崎刈羽原発】事故時の「緊急時対応」避難・屋内退避方針を了承【新潟】

政府は柏崎刈羽原発で事故が起きた際の避難のあり方などを定めた『緊…

追突のトラック 直前に対向車線はみ出し…路線バスに衝突 車10台の事故で9人搬送 札幌市豊平区

6月26日午後、札幌市豊平区の国道36号の2か所で、車あわせて1…

合鍵作り上司宅侵入…高級腕時計など3300万円相当盗んだか 男を逮捕

上司の自宅の合鍵を作って侵入し高級腕時計など3300万円相当を盗んだ…

「かわいい姿を見せてくれると自然と笑顔に…」良浜、結浜、彩浜、楓浜 あす4頭のジャイアントパンダ返還 一般公開最終日、多くの人が別れ惜む

4頭のジャイアントパンダの返還が、あすに迫った和歌山県白浜町のアド…

ペルー最高峰ワスカラン山で日本人女性2人遭難 救助隊と下山の1人を病院搬送 もう1人は遺体収容の調整始まる

南米ペルーの最高峰・ワスカラン山で遭難し、救助隊と下山していた登…

loading...