大リーグ、シアトル・マリナーズとマイナー契約を結び、傘下のAAAタコマ・レイニアーズに所属していた藤浪晋太郎投手が、2025年6月17日に自由契約となったと発表された。 米国のウェブスポーツメディア「Yardbarker」では「なぜ今解雇なのかは謎だ」としつつも、「電光石火の三振力には魅力があるものの、四球の多さが障害だ」と、自由契約の理由を制球難にあると報じている。 若きエースを襲った四死球から自滅のパターン 藤浪は高校時代、大阪桐蔭高校を春夏連覇に導き、阪神タイガースでは1年目から10勝をマークするなど、同級生の大谷翔平と並んで多くのファンを魅了した。 順風満帆だった藤浪のキャリアに翳りが差したのは、プロ入り4年目の2016年だった。 それまでの3年間は二桁勝利を挙げていたが、オフに右肩の炎症を訴えたこともあり、オープン戦から不調だった。 それでも開幕当初は3戦3勝と活躍したが、徐々に四死球から自滅する投球が増加。 7月8日の広島東洋カープ戦では序盤から大量失点し、金本知憲監督から「何も変わってない」と8回161球を投げさせられる「事件」も起こるなど、7勝11敗に終わる。 翌年4月4日の東京ヤクルトスワローズ戦では5回までに8四死球を与えたあげく、畠山和洋選手の頭部へ死球を投じて危険球退場。これをきっかけに乱闘騒ぎとなり、ヤクルトのバレンティン選手、阪神の矢野燿大コーチも退場する騒ぎとなった。 以後も乱調が続き、5月27日に登録抹消。だが一軍復帰戦となった8月16日の広島戦で、大瀬良大地投手にも死球を与えるなどして、翌日に即二軍落ち。このあたりから、成績は徐々に低迷していった。 メジャーでも制球難が続く しかし、2022年のシーズン後半には、先発登板した7試合中6試合でクオリティ・スタート(6回を3失点以内)を記録するなど、復活の光が差し始める。 そのオフ、藤浪はポスティングシステム(入札制度)を使って、メジャーリーグのオークランド・アスレチックスへ移籍。彼のポテンシャルは、メジャーも見逃さなかった。 迎えた4月1日の初登板では、ロサンゼルス・エンゼルスを相手に先発し、2回まで完璧に抑えていた。 しかし、3回に先頭打者へ四球を与えると突然崩れ、一気に8失点してKOされた。 その後も乱調が続いたものの、5月以降に中継ぎへ転向してからは安定したピッチングを見せ、5勝を挙げた。 その後、7月にトレードでボルチモア・オリオールズへ、翌2024年にはニューヨーク・メッツへと移籍。 だが、メッツではオープン戦から制球難に苦しみ、マイナー降格。2025年からはシアトル・マリナーズとマイナー契約を結んでいた。 フォームか、メンタルか、チームとのマッチングか どうすれば彼は復活できるのか。藤浪のかつての輝きを知るファンにとっては、気になるところだ。 復活の鍵となる制球難の克服について、これまでも多くの識者が語ってきたが、その意見は大きくふたつに分けられる。 ひとつは投球フォームの問題である。藤浪は肘を肩よりも上げないサイドスローのような動きから、オーバースローで投げる独特のフォームを持つ。多くの識者はそこに問題があると指摘している。 たとえば野球評論家の高木豊氏は、自身のYouTubeチャンネルで藤浪のフォームについて「肘を上げている時間に身体が(前に)行ってしまうからボールが抜けてしまう」「自然に考えると横(投げ=サイドスロー)にしたほうがいいのでは」と評している。 実際、MLB.comではメッツ時代の藤浪が「制球難は(ボディ・)メカニックの問題」と語ったと報じられている。 もうひとつの意見として、彼が身体の動きを考えすぎてしまう点が問題ではないか、という指摘がある。 シアトルのメディア「Seattle Sports」によれば、マリナーズでは「藤浪はあまりにも細かく、あるいは内向的に練習に没頭しすぎている」と考えられていたという。 藤浪と同様に長身・細身でフォームに悩んだ過去を持つチームのエース、ローガン・ギルバート投手がアドバイスする姿も見られた。 しかし、冒頭に述べたように、AAAで18回2/3を投げて四死球26という制球難が続いた。 今回の自由契約により、藤浪は新たなチーム探しをすることになる。代理人のスコット・ボラスは「"チームに合わなかった"だけで、可能性はまだ十分ある。日本や他球団とも話している」と語っている。 期待の星が迎えたキャリアの岐路。バッターを唸らせる剛球のポテンシャルを知るだけに、野球ファンは皆、藤浪の復活を願っている。