前編『習近平の中東での影響力アピールもむなしく…米国のイラン攻撃に「様子見」しかできない中国を襲う大打撃』で見てきた通り、一対一路構想において重要な位置づけにある友好国イランが米国により攻撃受けた。中国は今のところ様子見を続けているが、外交・経済に与える悪影響は計り知れない。 中国国内に目を転じると、経済は相変わらず低調だ。 中国で行われる最大の商戦「618」が盛り上がりを欠いたまま、18日に終了した。今年は5月13日に始まり、期間は1ヵ月以上に及んだが、雇用への不安や賃金の伸び悩みが災いして不調に終わったようだ。主催者である大手ECプラットフォームは近年、618の総売上高を公表しなくなったが、今年も昨年と同様、前年割れしたとみられている。 不況の原因である不動産市場が回復する兆しは見えてこない。 バブル崩壊から5年も、いまだ危機はさらず…… 中国の国家統計局が16日に発表した5月の新築住宅価格は前月比0.2%下落した。下落率は7ヵ月ぶりの大きさだった。昨年9月に打ち出した大規模な景気刺激策の効果が薄れつつあることの表れだ。 李強首相は「不動産相場の下落に歯止めをかける」との方針を示しているが、掛け声ばかりで、さらなる対策が実施される気配はない。 不動産バブルが崩壊して5年目となるが、「今後さらに危機的な状況になる可能性が高い」との予測が出ている。 例えばゴールドマン・サックス(GS)は17日「中国都市部の新築住宅需要は今後数年間、ピークだった2017年の4分の1以下の水準で推移する」との見通しを示した。 中国では2017年に約2000万戸の新築住宅が販売されていたが、今年から2030年までの間は毎年500万戸を下回る水準で推移するという。理由として挙げているのは、人口減少と住宅値下がり予想を背景とする投資意欲の減退だ。 バブル崩壊後の日本でも新規住宅販売は下落したが、ボトムは1997年のピーク時の7割弱にとどまった。 これにかんがみれば、GSの予測はとてつもなく恐ろしいものだと言わざるを得ない。 中国経済はデフレどころか恐慌状態に陥ってしまう可能性が十分にあるのだ。 政情不安定化のリスクも 足元のデフレが中国の生産活動にも深刻な打撃を与えている。 中国の5月の工業生産は前年比5.8%増と、伸び率は4月の6.1%増から減速した。 製造業分野の各企業は深刻な経営状態にある。 太陽光発電業界では、最大手の天合光能のトップが業界全体に向けて価格競争の終息と過剰生産能力の解消を呼びかけるという異例の事態となっている。 自動車業界では、昨年末時点で3分の1を超える上場企業で流動負債が流動資産を上回る状況になっており、「大量倒産は時間の問題だ」との声が聞こえてくる 米国との貿易戦争で数百万人分の輸出企業の雇用も脅かされている。 中国政府にとって企業の大量倒産は悪夢だ。失業者の大幅増加で政情が不安定化するリスクが高まるからだ。 そして増えるゾンビ企業 経済を回復させることができない中国政府の窮余の策は「ゾンビ企業」をつぶさないことだ。ゾンビ企業とは経営再建の見込みが乏しい企業のことだ。不良債権問題の処理で苦しんだ日本でその存在が問題視されたことは記憶に新しい。 経営破綻に追い込まれた恒大集団や碧柱園など民間不動産大手の処理は一向に進んでいないように、現下の中国でもゾンビ企業が増え続けているが、政府、特に地方政府が救いの手を差し伸べてゾンビ企業の淘汰を遅らせているとの指摘もある。 だが、この対策の副作用は甚大だ。噛みつかれると普通の人間がゾンビになってしまうように、ゾンビ企業の数が増えすぎると通常の企業の利益率に悪影響が及び、ひいては一国の経済全体を麻痺させてしまう危険性があるからだ。 住宅恐慌とゾンビ企業の大量発生。 中国経済の病はもはや治療不可能になってしまったのではないだろうか。 合わせて読みたい。『「中国製EV」、本当に大丈夫なのか…?「安全性軽視」で相次ぐ貨物船火災と中国から世界に拡散される「新たな脅威」』 【もっと読む】「中国製EV」、本当に大丈夫なのか…?「安全性軽視」で相次ぐ貨物船火災と中国から世界に拡散される「新たな脅威」