幻の「のらくろ」が掲載された「戦時版よみうり」、長野の図書館で発見…戦時下の庶民生活の貴重な記録

 太平洋戦争中に読売新聞社から発行されながら、空襲で大半が失われていた日刊タブロイド新聞「戦時版よみうり」が、長野県の県立長野図書館に多数所蔵されていることが研究者の調査でわかった。  同紙は各地の勤労者に向け、身近な視点で戦時ニュースや話題を伝えるとともに、戦前からの人気漫画「のらくろ」(作者・田河水泡)を4コマで掲載していた。この連載は関係者にも知られておらず、「戦時版よみうり」の全容とともに、幻の「のらくろ」作品群が発見されたことになる。調査した永島広紀・九州大教授が、28日から鳥取県米子市で開かれる日本マンガ学会で報告する。 銃後の生活記録  「戦時版よみうり」は、1944年(昭和19年)3月1日から45年(同20年)3月末までの1年1か月、本紙とは別に編集し、通常の半分のサイズ(タブロイド判)で発行された。  しかし、読売新聞社には創刊から5月末までと9月発行分、計4か月分の紙面しか残っていなかった。戦時中、東京・銀座にあった読売新聞本社ビルが空襲で全焼し、多数の資料が焼失した。この時に「戦時版よみうり」の保存紙も多くが失われたと思われる。  このほど県立長野図書館で確認されたのは、44年6月から45年3月までの紙面で、読売新聞社に残っていない期間をちょうど補完する形で所蔵されていた。これにより創刊号から395号まで、一部欠落はあるものの、ほぼ全体がそろった。  「戦時版よみうり」は総動員体制下、工場や鉱山、農林水産業に従事する勤労者に向けて発行された。読者として国民学校を出て働いている人を想定。わかりやすくニュースを伝え、娯楽的要素も盛り込んでいた。戦時下の生活の知恵など、身近な視点で戦争と向き合う記事が多く、銃後の庶民生活を知る上で貴重な記録と言える。 「のらくろ」の空白期  4コマの「のらくろ」は創刊号から44年10月まで、224本の掲載が確認された。  漫画「のらくろ」は戦前の少年雑誌で国民的な人気を博しながら、太平洋戦争の開戦直前に打ち切りとなった。戦後に再開されたが、作者の田河水泡は自叙伝でも「戦時版よみうり」の4コマ連載には言及しておらず、戦中は作品の空白期とみられていた。  見つかった「のらくろ」作品群も、銃後の光景を時にユーモアも交えて描いており、戦時中の空気を伝える資料として価値が高い。また、日本の漫画史においても、戦前と戦後をつなぐ重要な発見となる。

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