【ハーグ＝酒井圭吾、池田慶太】オランダ・ハーグで開かれた北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）首脳会議は２５日、閉幕した。 　２期目で初めて出席した米国のトランプ大統領の意向をくみ、国内総生産（ＧＤＰ）に占める防衛支出の割合を２％から５％に引き上げる新たな目標に合意した。首脳宣言ではウクライナのＮＡＴＯ加盟など米欧間の対立事項には極力触れず、加盟３２か国の結束を演出した。 　ＮＡＴＯのマルク・ルッテ事務総長は２５日、トランプ米大統領との会談で「今日、５％への引き上げを決定する。欧州とカナダは米国の基準に肩を並べることになる」と述べた。 　５％目標は、欧州の防衛負担が少ないと批判するトランプ氏が要求していた。兵器購入や人件費など現行の２％目標の算出基準である「中核的な防衛支出」を３・５％とし、軍事関連施設付近のインフラ整備などを「防衛関連費」として１・５％積み増す。２０３５年までの達成を求める。 　現状では２％台の英国やドイツは２４日、新目標に合わせて国防支出を拡充する方針を表明した。トランプ氏は２５日、「私は何年もの間、５％を求めてきた。ＮＡＴＯは米国とともに強くなるだろう」と新目標を歓迎した。 　首脳会議では▽防衛産業の増強▽ウクライナ情勢▽中国や北朝鮮の軍事的な覇権行為への警戒——なども議論された。米国とイスラエルによるイランの核施設への攻撃を巡っては、加盟国は核兵器保有につながるイランの核開発阻止で一致したとみられる。 　トランプ氏は１期目からＮＡＴＯへの関与に消極的で、今回の参加も直前まで明言しなかった。トランプ氏と欧州首脳の対立が表面化しないよう、日程は３日間から２日間に短縮された。首脳級の協議は２４日の夕食会と２５日の３時間程度の議論に絞った。トランプ氏の宿泊先をオランダ国王が住むハウステンボス宮殿とするなど異例の厚遇で迎えた。 　ウクライナ支援に消極的なトランプ氏に配慮し、２３年と２４年に開かれた首脳級の「ウクライナ理事会」も開催を見送った。一方で、ロイター通信などは、トランプ氏が２５日にハーグで、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談を調整していると報じている。 　２５日夕には、日本を含むインド太平洋パートナー（ＩＰ４）とルッテ氏による外相級の特別会合が開かれ、日本からは岩屋外相が出席する。石破首相や韓国の李在明（イジェミョン）大統領が直前に欠席を表明したことなどから、調整されていた米国の参加は見送られた。