６月１０日は路面電車の日でした。 　各地でイベントが行われたようです。路面を走り、街の風景と共存しているため、身近に感じられる存在だと思います。読売新聞朝刊の投書欄「気流」には、路面電車に関する投書がこれまで寄せられてきました。記者の心に刺さった投書を紹介する「ササる投書」、今回のテーマは「路面電車」です。（※投稿者の年齢や職業などは掲載当時。紙面では実名で掲載） 生後３か月の息子と進駐軍の兵士 　終戦間もない頃のクリスマス・イブ。私は生後３か月の長男を抱き、夫と東京の路面電車に乗っていた。気が付くと、進駐軍の兵士が笑顔で話しかけてきた。慌てて夫を見ると、息子の方を見て笑っていた。 　兵士は息子をあやし始めたが、しばらくして下車した。兵士が何を話しかけてきたのかと、夫に尋ねた。「ユア・ベイビー？（あなた方の赤ちゃんですか）と聞いていたんだよ」と言う。 　この後、息子は街中で初めて見たツリーに、足をばたつかせて喜んだ。今となっては懐かしい光景だ。（８７歳・無職＝滋賀県、２０１１年１２月４日掲載） 子ども連れ乗車、皆が親切に 　私には２歳と５歳の子どもがいる。電車やバスに乗る時は、周りの迷惑にならないよう心掛けるが、本当は、それだけで頭がいっぱいになる。 　横浜から広島に引っ越して１年あまり。当地の路面電車での乗客の心遣いが、うれしい。子どもを連れて電車に乗ると、多くの人が立ち上がって席を譲ろうとしてくれる。時には、つえをついたお年寄りまで。 　子どもが泣いても、「気にしなくても大丈夫」と笑いかけたり、子どもの手を握ってくれたり、抱っこまでしてくれたり。電車を降りる際は車掌さんが「ゆっくりどうぞ」と優しく言葉をかけてくれる。感謝で胸がいっぱいになる毎日だ。（３５歳・主婦＝広島県、２０１３年５月２９日掲載） 「最後に乗っとこか」あふれる涙 　実家近くに、南海電鉄平野線という路面電車の終点・平野駅があった。高校の通学などで利用していたが大阪市営地下鉄（現大阪メトロ）谷町線延伸に伴い、１９８０年１１月で廃止された。 　営業最終日の夜「最後に乗っとこか」という軽い気持ちで平野駅から天王寺駅前駅まで乗った。ところが車内の案内板や車窓の風景、顔見知りの車掌さんのアナウンスを聞いているうちに涙があふれてきた。 　手ぶらだったのでハンカチも持っておらず、涙を手でぬぐうのが大変だった。平野駅に戻り、大勢の人と最終電車が出発するのを見送った。 　現在、駅跡地は小さな公園と遊歩道になっており、電車が走っていたことを知る人もだんだん少なくなっている。（５９歳・会社員＝大阪府、２０２２年５月２２日掲載） 担当記者より 　都内暮らしの記者にとっては路面電車といえば都電ですが、それぞれの地域で発展し、根ざしてきたのですね（服部） 　「ササる投書」を随時掲載します。次回もお楽しみに！