ダイハツが新型「軽“スライドドア”ワゴン」発表! 軽の“テッパン”「カスタム」異例の「未設定」!? 新型「ムーヴ」に精悍デザインが採用された理由とは

「動く姿が美しい、端正で凛々しいデザイン」が生まれた背景とは  2025年6月5日、ダイハツは主力の軽ハイトワゴン「ムーヴ」を11年ぶりにフルモデルチェンジしました。  7代目となる新型は、これまでのムーヴとは大きく変革を遂げたことで話題を呼んでいます。 【画像】超カッコいい! これがダイハツの新型「軽“スライドドア”ワゴン」です! 画像で見る(30枚以上)  その理由について、ダイハツのデザイナー担当者に話をうかがいました。 デザイン上も大きく変革を遂げたダイハツ新型「ムーヴ」(7代目)  新型ムーヴの特徴として、先代と大きく違うことが2つあります。  ひとつは後席に「スライドドア」を採用したこと。  そしてもうひとつは“裏ムーヴ”などで話題をさらった「カスタム」が消えたことです。  そんな新型ムーヴの誕生秘話について、まずエクステリアデザイン担当のダイハツデザイン部 プロダクトクリエイト室主任 河合 徳明さんから話をうかがいました。 ●「動く姿が美しい」端正で凛々しいデザインが生まれるまで 筆者(内田俊一、以下Q):まずはエクステリアデザインについてうかがいます。今回ムーヴのエクステリアを担当することになり、どういう気持ちでしたか。 河合氏:商品企画の部署から最初に来た企画の狙いは、「バランスが大事にした堅実なクルマ。乗用のど真ん中」というものでした。  そこから形にしていくには、もう一段特徴になる何かが必要だと感じ悩みました。  このままだと、特徴のないクルマをデザインしてしまうと思ったからです。  そこでまず、ムーヴを購入しているお客様はどういう気持ちで選んでいるのかを調べました。  なぜなら、当初我々のなかに「バランスが良いからこれを選んでおけば無難だ」といった「消極的な選択だった」という危機感があったからです。  ただ、台数こそ軽スーパーハイトワゴンの「タント」に譲りましたが、それでも月数千台ものお客様に購入いただいています。何かしらの理由があって「指名買い」されているのではないかと気付かされました。  そこで「この世代のお客様はこんな特徴だった」「この世代のお客様はこんなものを欲している」ということに気づき始めたところから、デザインプランが一気に転がり始めました。  そして「動く姿が美しい」とか、「精悍なクルマにしていくぞ」という気持ちから、「動く姿が美しい、端正で凛々しいデザイン」というコンセプトが生まれたのです。 Q:「この世代のお客様」とは、具体的にどういう人を指すのでしょうか。 河合氏:バブル時代に青春を過ごされた方々で、いまはお子様が手離れして、もう一回夫婦でどこかに出かけたいなという世代です。 「その時の気持ちをもう一度」というと少しおおげさですが、スタイリッシュで走りそうなクルマでありながら、商品の企画にある“きちんと実用的で堅実であること”を持ち合わせていること。  それこそがムーヴが歴代モデルで代々引き継いできた“コア”の部分であり、いまでもお客様に指名買いしていただいている重要な部分だと気づいたんです。 グレード内での差別化と「カスタム」の廃止という“決断” Q:さて新型ムーヴではカスタムがなく、標準車1本となりましたね。 河合氏:カスタムを標準と一本化しようという話は、企画の当初からありました。  先代の6代目ムーヴあたりからお客様の層が変わってきて、標準車とカスタムのお客様像にそれほど違いがなくなりました。  装備差や仕様差で、ローグレードとハイグレードのような捉え方になって来たのです。  そういう流れであれば、「1本できっちり両方支持いただけるいいものをつくったら良いんじゃないか」となりました。  そこで上級仕様の「RS」「G」グレードと、ベーシックな「L」「X」グレードで、すこし外観や内装を変えた仕様としています。 ダイハツ新型「ムーヴ X」に備わる幾何学模様のフロントガーニッシュ Q:これまでの「カスタム」系を好んでいいた人たちも、RSやGグレードのフロントフェイスは好ましく映りそうですね。 河合氏:顔のすみ分けですが、基本的な記号性は一緒なんです。ただ、よりシンプルにまとめながら作っていったのがLとXグレードです。特にヘッドランプ周りをブラックアウトしています。  実は最初、ハロゲンヘッドランプだったんですね。しかしハロゲンだとこの表情は絶対作れないからと、開発責任者に頼み込んでなんとかフルLEDで作ることができました。  そしてシグネチャー付きのLEDヘッドランプがRSとGで、これもガーニッシュからヘッドランプの中に連続性を持たせて、なるべく一体に見えるようにしています。  またフロントのガーニッシュも、スモーククリアの裏からちょっと明るめのガンメタリック(グレー)を塗っている「裏面塗装」になっていて、その濃さのバランスも、どんな環境光の下でもある程度光るし、明るすぎず暗すぎずというところにこだわり、深みのある質感を出しています。  さらに(LとXグレードにもある)幾何学模様は、この樹脂の板厚の差を使って出しているんです。  またリアコンビランプも実はドットパターンを打ったもので、クリアパーツの奥にストップランプが入っている二重構造になっています。これも見た時の深み、奥行き感から驚きのある意匠にするために、星空キラキラみたいな二重構造にしてこだわって作りました。 ●スライドドアでも「走りそうなデザイン」にするために Q:新型ムーヴではスライドドアを新たに採用しましたが、「走りそうなデザイン」という視点では非常に難しくなったと思いますが、いかがですか。 河合氏:小さいクルマにスライドドアを採用すると、直線のスライドレールが必要になります。そうなるとどうしてもクルマも四角くなってしまうんですね。  そこでまず、フロントウインドウをスライド車としてはかなり寝かせました。  それ以外の意匠も、「いかに四角く見えないようにするか」「走りそうなスタイリングをするか」にこだわり、最後までこの戦いでした。  デザイン案をつくってみては「いや、まだ四角く見える」ともっと変えて、「まだ四角に見える」ということのをずっと繰り返して、最終的にこのデザインに辿り着きました。 ボディサイドのキャラクターラインに込められたそれぞれの「意味」とは Q:大きく影響しているのがサイドのキャラクターラインとその下にある影の面ですね。 河合氏:その通りです。  この線はグリルからヘッドランプ、サイドと周り、リアコンビランプの手前で消えています。線がボディサイドを周り、結果としてクルマを長く見せるという手法を取り入れています。  そしてその下にある影の部分をきれいにまとめるのが、非常に難しかったです。  特にこのクルマは、キャラクターラインから下のボディ面に軽自動車としてはかなり抑揚をつけてあり、光る面と影の面、そして平面をつくっています。  ただそこまで抑揚をつけると、どうしても影の面が狭くなったり歪んだりで犠牲になってしまうんです。  とはいえ、ここをおろそかにしてしまうと、せっかく通したキャラクターライン全体が美しく見えないので、トータルで周りを含めて美しくまとまるようにかなり意識しました。 スポーティなシルエットに加え、ボディサイドのキャラクターラインとその陰影の工夫と相まって「四角く見せず」「走りそう」なフォルムを狙った新型「ムーヴ」 Q:軽自動車は室内を出来るだけ広く作るため、ドアはどうしても薄くなりがちです。そこにパワーウインドウなどの機構を入れなければいけないので、どうしてもデザインしろが少なくなってしまいますからね。 河合氏:もうひとつ、サイドシルの上に特徴を持たせています。  これは、タイヤをしっかり踏ん張って見せるために台形のデザイン(それぞれのタイヤに力が加わっていくイメージ)なのですが、影になっている部分は、フロントの黒いガーニッシュの下にある“ヒゲ”のところに繋がっているように見せているのです。リアに向けても同様です。  軽自動車は寸法に制約があるので、前、横、後ろと分けてデザインして、最終的に箱みたいな形になってしまうのが普通です。  それはそれで魅力なのですが、今回のようにスポーティに走りそうなスリークなスタイルを作ろうとすると、そぐわないんですね。  そこで前、横、後ろまで連続性を持たせるような意匠的な工夫があればどうだろうと考えた結果です。  もうひとつ、スライドドア周辺はどうしても四角くなってしまいます。  そこで、それ以外のところでいかになだらかな意匠にしていくかがキーとなりました。  重量的にはちょっと重くなってしまったのですが、ルーフを「ムーヴキャンバス」(先行して登場したスライドドア付きの軽ハイトワゴン車)などと比べ、ちょっとだけ平らにしました。  ダイハツのクルマの多くは、剛性を保つために比較的丸くしているんですが、このクルマはすっきりとしたルーフを作るためにちょっとだけ板厚をアップさせて、少しでも伸びやかな印象に出来ればとトライしました。 定番色でありながら、走りそうなボディをより引き立てるように  続いては、CMFデザイン担当のダイハツデザイン部 ビジョンクリエイト室VXD Gr.の坂本 唯衣さんに話をうかがいました。  ちなみにCMFとは、「Color(色)」「Material(素材)」「Finishing(表面加工)」の略で、いずれもクルマを印象付ける重要な役割を果たすものです。  内外装の色の組み合わせやシートの生地選びのみならず、実際の量産化に向けた色味や素材の仕上がり確認に至るまでを広く担当するといいます。 新型「ムーヴ」向けに開発された新色の「グレースブラウンクリスタルマイカ」の狙いは「落ち着きのあるブラウン」! Q:CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)のデザイナーとしても、今回の新型ムーヴは動きを感じさせるため、ボディカラーにはこだわりを持ったそうですね。 坂本氏:全体のコンセプトとして、まず「日常に馴染む」「生活によく馴染む定番色であること」「購入しやすい定番のラインナップであること」、そしてムーヴのコンセプトである「動く姿が美しく見える」というキーワードを重要視して、形が立体的に見えるような色味をチョイスしてラインナップしました。 Q:新色「グレースブラウンクリスタルマイカ」の特徴はどういうものでしょう。 坂本氏:まずは、赤みと黄みのバランスがちょうどいい、「落ち着きのあるブラウン」を目指しました。  しかし落ち着き“すぎる”ブラウンになってしまうと、立体感が落ち着いてくる傾向にあり、塩梅が難しいところです。  そこで、ハイライトにもこだわりました。実は今回の新色は、光が当たると、ほんのりゴールドに輝くんです。  そうすることで、走った時も光がより立体的に流れる、美しい見え方になるよう狙っています。 Q:なぜブラウン系をチョイスしたのですか。 坂本氏:そこは、ムーヴが「日常の生活によく馴染んだクルマである」というところがキーポイントになりました。  歴代のムーヴでも、落ち着いた色合いがすごく好評でした。  そこに立体感ある色味というところでお客様の期待に応えるべく、あえてメタリック系の色ではない色で調整をしたのです。 ※ ※ ※  実は、2年ほど前に登場する予定だった新型ムーヴ。  諸事情により発売が大きく遅れてしまいましたが、いま見ても決して古臭さは感じられず、とても良く出来たデザインだと筆者は感じました。  特に、河合さんがこだわったサイドのキャラクターラインとその下の影の面は、見事な出来栄えです。  そこに加わるボディカラーも、きっちりとクルマの性格を表しているものといえ、普通車などからのダウンサイザーが多いことを踏まえると、十分に納得できる質感を持っていると感じられました。

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