「コストコ神話」 長年愛用してきたコストコですが、最近、その価格に異変を感じ、調査をしてみました。 前編『安さの帝王「コストコ神話」が“物価高”で限界に来ている…？コストコ歴27年のベテラン会員が見た「神話崩壊」の危うい現実』で紹介してきたように、以前は4割は安いという「お得感」があったのですが、いまではせいぜい3割程度の割安感になっています。 スーパーと比較すると依然として3割〜4割は安いのですが、ドン・キホーテや業務スーパーと比較すると一部商品では価格差は1割程度に縮小してきています。これでは、年会費を払い、高いガソリン代を払ってコストコに行く意味も薄れつつあるというものです。 背景にはもちろんインフレがありますが、さらに調査を進めてみると意外なことが見えてきたのです。 コストコを追い詰める「日本勢」の真実 もうすこし、コストコと大手ディスカウント勢との価格差を見ていきましょう。やはり、安さの差はだんだんと縮まっていることがわかります。 日用品に目を向けると、私がいつも使っているP&Gのシャンプーはコストコ442円対マツキヨ548円です。かゆみ止めのムヒはコストコ389円対スギ498円。どちらも差は２割前後です。 私は最近、生活防衛のため自宅のコーヒーはプライベートブランド（PB）商品に変えています。事務所の来客用には見栄をはってスタバを出すのですが、最近は一般のコーヒー豆の品質も上がってきているのです。PBのダークロースト（深煎り）同士で250ｇ換算で比較するとコストコ553円対業ス—485円と、価格がここで逆転しました。 最後にブランド米です。5kgあたりで最近の報道で使われている税込み価格で比較をすると、コストコ4450円対イオン4427円とやはり僅差でイオンの勝ちです。 コメとコーヒー豆を除いたそれ以外の調査品目で見ても、ディスカウントストアの特売とコストコの価格差は平均で▲16％とかなり接近しています。 このことが意味することはふたつあります。ひとつは単純な結論で、コストコがこれまでのように圧倒的に安い小売店ではなくなってきているということです。私が一年前ぐらいから感じていた違和感はこうして数字で裏付けることができました。 ただもうひとつ、この現象は別の見方ができるかもしれません。 「下請けいじめ」も… 大手ディスカウントストアが仕入れ先をかなり買い叩いているのではないかという話です。 日本は2022年頃から消費者物価が値上がりを始めました。過去５年間平均で2.4％のインフレです。今年に入ってからの4か月は3.7％と物価はさらにあがっています。 一方で企業物価指数という別の指数があります。会社の仕入れ値がどうなっているのかを示す指数なのですが、このところの５年の平均では年率4.9％も上がっています。 つまりメーカーや卸や小売店が年4.9％のインフレに直面して、高い価格の原材料を仕入れ、高い光熱費を使って工場を稼働し、高いガソリンで物流を行いと、とにかくコストは大幅に上昇しています。一方で物凄くいろいろな企業努力をした結果、最終消費者から見るとインフレは年2.4％で済むという現象が起きているのです。 中でも大手小売店からすれば値上げをすると顧客が逃げてしまうので、なんとかして少なめ目の値上げに踏みとどまっていて、それで今の価格なのです。物価高とはいえそれでもコスト高と比べるとインフレはマイルドだということです。 こうした企業努力のひとつが大手小売店が仕入れ先を泣かせることなのですが、さすがにそれについて無理が重なって限界に近付いているようです。その証拠に直近の消費者物価指数は企業物価指数に近づいてきています。 見えた！「コストコの実力」と「日本の構造不良」 かたやコストコにはある都市伝説があります。都市伝説といってもおそらく事実に近いのですが、それはコストコが世界で稼ぎ出す純利益は、コストコが世界で徴収する年会費とほぼ同じ金額になるという話です。 つまりコストコは会員向けのサービスなので、必要以上に利益増を追求していないのです。メーカーには大きなパッケージで安く提供するように働きかける一方で、その利益は基本的に会員である消費者に価格還元する仕組みです。 その前提で大手ディスカウントストアとコストコの価格が近づいているということは、実はコストコの価格の方が正常で、ディスカウントストアの店頭価格に無理があることを意味しているのではないでしょうか。経済評論家の視点では今のコストコの価格の方が正しくインフレを反映しているように見えるのです。 コストコはやっぱり安かった…！ 大手ディスカウントストアの仕入れは、この先、トランプ関税や中東情勢に伴う原油高、賃上げ圧力などさまざまな要因から、維持できずにどこかの段階で弾けることになると私は予測しています。 その時に私たちは気づくことになるでしょう。 「本当の物価はもっと高かったんだ。そしてコストコはやっぱりディスカウントストアよりも４割安いんだ」と。 さらに連載記事『残念ですが、モビリティ業界の新たな「4強」に「トヨタ」は入っていません…！これから台頭する「4社の名前」と「クルマの未来」』でもプロの視点から経済の最新事情を考察していますので、ぜひ参考にしてください。 【こちらも読む】残念ですが、モビリティ業界の新たな「4強」に「トヨタ」は入っていません…！これから台頭する「4社の名前」と「クルマの未来」
