「二刀流」に目を奪われているスキに…… 現地時間6月20日、ドジャースが球団公式Xを更新し、大谷翔平(30)の次回登板を22日(現地時間)のナショナルズ戦と公表した。実際に「中5日」での登板となったが、1回18球、2奪三振で無安打無失点に抑え、打っては4打数2安打5打点。試合を決める走者一掃の三塁打にくわえ、26号2ランを決めて、スタンドのファンを沸かせた。 【写真を見る】ドジャースが水面下で狙っている? カブスの超スター選手 それにしても「中5日」である。16日の復帰マウンドが1イニングだけのオープナー登板だったとはいえ、投手復活までの調整メニューにも慎重を期してきたのとは真逆の起用法となった。 二刀流復帰の話題で持ちきりだが… 「いや、日程表を見ると、投手・大谷に配慮したとも解釈できます。20日金曜日からのナショナルズ3連戦はドジャースタジアムで行われましたが、その後、チームは遠征に出て、ロッキーズ、ロイヤルズと計6連戦を戦います。ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドは高地にあってホームランが出やすく、ロイヤルズは勝率5割を切っているものの、マイケル・ガルシア(25)、ボビー・ウィットJr.(25)、ビンセント・パスクアンティノ(27)など好打者が多いんです。休養十分とは言えませんが、まだ万全でない投手・大谷にダメージを与えないようにするには、ア・リーグ東地区で下位に低迷しているナショナルズ相手に投げさせたほうが良かった」(米国人ライター) MLB公式サイトによれば、二刀流復帰戦を配信したネット局「MLB Network」における視聴者数は、地域外試合の深夜枠だったにもかかわらず、米東部で約60万3000人、平均で41万人強という驚異的な視聴者数を記録したそうだ。しかし、“大谷の引き立て役”にされたからだろうか。対戦相手のパドレスはちょっとピリピリしていた。 「第2ラウンドとなった17日、1番DHで出場した大谷が死球を喰らい、その直前、パドレスのタティースJr.(26)もぶつけられています。その報復で大谷がやられたとする声もあれば、前日にドジャースのアンディ・パヘズ(24)がぶつけられ、一触即発の雰囲気になっています」(現地メディア関係者) しかし、米国の野球ファンの関心が「二刀流」に向けられている隙に、ドジャースは次の一手に向けて動き始めていた。補強である。 狙われたカブスのスター選手 シーズン途中、優勝争いをしているチームが下位チームの主力選手を獲るフラッグディール・トレードはもちろんだが、早くも今オフの大型補強に向けて布石を打っていたのである。 「ドジャースは15人もの投手がIL(負傷者)入りしてしまいました。投手の補強が最優先と思われましたが、ドジャースの狙いはそれだけではないようです」(前出・同) というのも、ドジャースの専門誌「Dodgers Nation」が“、“時期外れ”なニュース”を掲載したからだ。今オフのフリーエージェント市場における予想記事で、シカゴ・カブスのスター外野手であるカイル・タッカー(28)の残留交渉が「巧く行っていない」と伝え、「ドジャースがその動向を探っている。今季のシーズン成績にかかわらず、オフの獲得を狙っている」と伝えているのだ。 ドジャースの専門誌でありながら、カブスのスター選手の去就を扱うのは異例だが、この報道が出る2週間ほど前のこと。テオスカー・ヘルナンデス(32)とトミー・エドマン(30)がIL入りしてしまった。ヘルナンデスはすでに試合に復帰しているが、今季は打撃成績がイマイチで、6月15日時点での同月の月間打率が1割を切るほど苦しんでいた。打線全体を見渡しても、大谷の後の2番を打つムーキー・ベッツ(32)、3番のフレディ・フリーマン(35)にも勢いがない。フラッグディール・トレードの最優先事項は投手だが、「Dodgers Nation」の一報が出て以来、こんな声も聞かれるようになった。 「ジャイアンツからFAで1年1700万ドル(約24億3200万円)で加入し、期待したマイケル・コンフォート(32)も打撃不振で苦しんでいます。打線強化のため、主力級の大型野手を獲るのではないか。交渉が難航しているタッカーの話を『Dodgers Nation』が取り上げたのはその布石で、シーズン中の獲得も視野に入れているのでは」 タッカーは昨年オフ、交換トレードでアストロズからカブスにやってきた。25年シーズン終了と同時にFAになる契約で、アストロズとタッカーの代理人は24年シーズン中、何度も延長契約の話し合いを重ねたが、合意には至らなかった。カブスへのトレード放出はアストロズが慰留を諦めた結果でもある。 「カブスがアストロズから引き継いだタッカーの今季年俸は1650万ドル(約24億7500万円)です。彼の打撃力は昨年オフ、メッツと15年7億6500万ドル(約1148億円)で契約したホアン・ソト(26)にも匹敵すると言われています」(前出・米国人ライター) カブスも交渉決裂となれば、アストロズと同じ手段を取る可能性は高い。「Dodgers Nation」は「カブスはFA後も交渉するだろう。フィリーズ、ヤンキース、ドジャースなど複数の大都市圏のチームがタッカー獲得に動くはずだ」とも伝えていた。また、6月に入ってから米スポーツ専門サイト「The Athletic」がタッカーの去就に関する新情報を掲載した。近年の米FA市場の注目選手が高額契約を結んでいることにも触れ、元レッズGMのジム・ボ—デン氏がこんなコメントを寄せていた。 「6億ドルを超える高額契約を結ぶと思う。6の数字から始まる9桁(約860億円)が交渉のスタートラインになる」 これでは、「ドジャースしか払えない」と言っているようなものだ。 タッカーは昨季、ケガで3ヶ月間のIL入りをしたが、78試合で本塁打23、打点49、盗塁11、打率2割8分9厘、OPS9割9分3厘の好成績を残し、「フル出場していれば、打撃5部門全てで5傑に入っていた」(前出・同)とも評価されていた。今季も打率2割7分9厘、本塁打13、打点43(76試合)と活躍している。「去就が注目される選手」なのは分かったが、シーズン途中で「ドジャースが狙っている」という情報には、こんなウラもあった。 カブスと言えばあの日本人選手も…… 「カブスがタッカーとの契約延長を諦めた場合、彼の代わりに外野守備に就くのは、DHにまわっている鈴木誠也(31)でしょう。鈴木の守備がメジャーリーグでは“平均以下”であることは広く知られています。そもそも、ナ・リーグ中地区のカブスと同西地区のドジャースはリーグ優勝シリーズで激突する可能性も高いんです。タッカーが今季終了までカブスに残ったとしても、ドジャースが獲得を狙っていると分かれば、リーグ優勝シリーズでの心理的揺さぶりにもなり、鈴木が外野守備に就くことになれば失点のリスクが高まることになる。今季の鈴木は打撃好調で、6月22日時点で3年連続20本塁打を記録していますが……」(前出・同) これ以外にも、ドジャースはフラッグディール・トレードを使って、リーグ優勝を争うライバルチームの揺さぶりも始めている。 米メディア「Athlon Sports」によれば、マーリンズの主軸投手で22年サイ・ヤング賞も受賞したサンディ・アルカンタラ(29)を、フラッグディール・トレードで獲得を狙っていると伝えていた。昨季はトミー・ジョン手術で全休、今季は15試合に登板して4勝8敗と苦しんでいるが、「Athlon Sports」は「ドジャースのマーク・プライアー投手コーチなら蘇らせることが出来るだろう。16日か17日に交渉があったようだ」と報じていた。 16日は大谷が投手復帰した日でもある。全米の野球ファンの目が大谷に向けられていたころ、ドジャースは動いていたということか。ワールドシリーズ連覇を目指すチームの強かさだろう。「悪の帝国」と呼ばれる所以もここにある。 デイリー新潮編集部