【ニューヨーク＝小林泰裕】自身の書籍を無断で生成ＡＩ（人工知能）の学習に利用されたとして、３人の米作家が米新興ＡＩ企業アンソロピックを提訴した訴訟で、カリフォルニア州の連邦地裁は２３日、生成ＡＩの学習に無断で書籍を使用したことは米著作権法の「フェアユース（公正利用）」に該当し、著作権侵害に当たらないとの判決を下した。 　生成ＡＩを巡る同様の著作権訴訟に影響を与える可能性がある。 　アンソロピックはアマゾン・ドット・コムやグーグルが出資する有力ＡＩ企業で、対話型ＡＩなどの生成ＡＩサービスを提供している。原告の３人は「生成ＡＩの学習のために著作物を大規模に盗用した」として２０２４年８月にアンソロピックを提訴した。 　２３日の判決によれば、アンソロピックはインターネット上の海賊版サイトから、原告３人の著書を含む著作権で保護された７００万冊以上の書籍を無料でダウンロードし、無断で自社の生成ＡＩに学習させていた。 　ただ、判決文では「アンソロピックの生成ＡＩが原告の作品をそのままコピーしたり、実質的に模倣したわけではない」と指摘。原告らの書籍を無断で生成ＡＩに学習させたことは「米著作権法に基づくフェアユースに該当する」として、合法との判断を示した。 　一方、海賊版の書籍を保持・利用することに正当性はないとして、アンソロピックが海賊版を通じて著作権者に与えた損害賠償責任については、今後の審理で争点となるとの見通しが示された。アンソロピックの賠償額が数十億ドル規模に達する可能性もある。 　アンソロピックは２４日、「当社の生成ＡＩは、著作物を模倣したり代替するためではなく、まったく新しいものを創造するために訓練されている」との声明を公表し、判決を歓迎した。一方で「書籍の取得は生成ＡＩの構築という明確な目的のためだった」として、海賊版書籍の保持・利用に関する今後の審理については異議を唱えている。 　米国には、研究や教育目的で著作物を利用する場合は著作権侵害と見なされない「フェアユース」の規定がある。ＡＩ学習がこれに該当するかどうかが争点となっていた。米メディアによれば、生成ＡＩのフェアユースについて裁判所が詳細な判断を示した最初の事例になるという。米国では、同様の訴訟がすでに数十件にのぼるとみられている。