行政支援の「官製」婚活、Z世代向けにバージョンアップ…一般の倍近い成功率56%のイベントも

 行政が男女の出会いを支援する「官製婚活」が、Z世代の若者向けに変化している。  従来はパーティー形式が主流だったが、委託された専門業者によるスマートフォンアプリを使った大規模イベントが展開され、AI(人工知能)を活用したマッチングも浸透している。少子化に歯止めがかからず、自治体が危機感を強めているためだ。(鳥取支局 山内浩平)  ◆Z世代=1990年代半ばから2010年頃までに生まれた若者。幼い頃からデジタル技術に親しんでいる。 タイパとコスパを重視  「気に入った相手にいいねを送って」。鳥取県が先月24日、鳥取市内で開いた「鳥取砂丘マッチングイベント」では、婚活関連サービス会社「オミカレ」(東京)に運営が委託され、進行役は通話型マッチングアプリで相手にアプローチするよう呼びかけていた。  参加者は20〜30歳代の男女100人余り。アプリで互いに「いいね」を送り合うと相手と通話できる仕組みで、参加者たちは「どこにいる?」などと通話しながら広い砂丘で落ち合い、ヨガなどを楽しんだ。  一度に50人の異性と出会える上に、参加費は、国の補助金などで男女同額の1000円。「タイムパフォーマンス(タイパ=時間対効果)」や「コストパフォーマンス(コスパ=費用対効果)」を重視するZ世代に人気で、100人の定員に145人が申し込んだ。  この日成立したカップルは28組と、成功率は56%。20〜30%程度とされる一般的な婚活イベントの倍近い。マッチングできた同県智頭町の女性(36)は「自治体主催で安心できて、堅苦しさも感じず、気軽に参加しやすかった」と話した。 安心得やすい「官製」と民間のノウハウで満足感  鳥取県が民間の力も借りて婚活支援に力を入れる背景には、深刻な少子化がある。県人口は全国最少の53万人弱で、婚姻数はコロナ禍前と比べて3割近く落ち込んでいる。  そのため23年度から態勢を強化。従来のお見合いの仲介のほかに、若手職員の発案で24年度から民間委託の大規模イベントを開いている。県子育て王国課の長谷川和宏係長は「若い女性が県外に流出し、何もしなければ県人口は先細りする一方だ。若者のニーズを反映させ、結婚を希望する背中を押したい」と話す。  「鳥取方式」は他自治体にも広がり、金沢市は5月中旬、男女計約120人によるイベントを初めて開催し、43組のカップルが成立した。市が16〜24年に実施した婚活イベントでのカップル成立は計26組で、1回で9年分を超えた。  オミカレの下永田真人社長は「官製婚活は参加者の安心を得やすく、民間のノウハウが合わさることで満足度が上がる」と語る。 AI活用のマッチングシステムやアプリ、32府県が導入  AIによるマッチングシステムやアプリも増えており、こども家庭庁によると、23年度末時点で徳島、京都など32府県が導入済みだ。  24年9月から活用する東京都は、独身証明書の提出やウェブ面談で本人確認を実施。性格や価値観に関する約100の質問に対する回答を基に、AIが相性の良い相手を紹介する。5月20日時点で2万人以上から申し込みがあり、32組が成婚に至ったという。  全国に先駆けて14年に導入した愛媛県のシステムは、会員情報をデータベース化し、相性が良いと考えられる相手を提案する。県は「民間マッチングアプリが普及しても行政が運営する信頼感はある」として、今後も活用を続ける方針だ。 「非効率」と撤退の自治体も  官製婚活が始まったのは2013年度。政府が少子化問題に取り組む自治体に「地域少子化対策重点推進交付金」を支給するようになった。13年度の予算規模は30億円だったが、25年度は93億円と3倍に増え、こども家庭庁によると、39道府県が結婚支援センターを開設している。  ただ、近年は婚活支援から撤退する自治体も出ている。和歌山県は13〜23年度に婚活イベントを通じて584組のカップルを成立させたが、24年度にやめた。民間マッチングアプリの利用が進んでいるためで、現在は、第3子以降の保育料無償化など子育て支援に重点を置く。  広島県安芸高田市は、21年度にイベントなどの支援事業を打ち切った。09〜20年度の12年間で成婚は約60組で、非効率だと判断した。市の担当者は「行政が結婚を押しつけるのは、配慮に欠けるとの意見もあった」と話した。

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