紛争や迫害などで避難を余儀なくされた人たちを、映画を通じて支援する動きが広がっている。 　２０日の「世界難民の日」に先駆け、５月に行われたカンヌ国際映画祭で「難民映画基金」の記者会見が開かれ、創設メンバーの俳優ケイト・ブランシェットが「避難民の問題は気候変動にも匹敵する、人類が直面する大きな試練。支援の必要性は差し迫っている」と呼びかけた。 　同基金は避難民の経験がある、または、避難民の物語を描く映画制作者の活動に助成し、上映機会を提供する目的で創設された。オランダ・ロッテルダム国際映画祭のヒューバート・バルス基金の協力のもと、難民支援に取り組むユニクロなどが創設パートナーに名を連ねている。 　２０１６年から国連難民高等弁務官事務所（ＵＮＨＣＲ）親善大使を務めるブランシェットは冒頭、「それぞれの多様な経験を魅力的で、楽しめる視点から語ることで、避難民への偏見も壊したい」と力を込めた。 　会見には第１弾の支援対象者５人のうち２人が同席。ウクライナのマリナ・エル・ゴルバチ監督は「世界が引き裂かれる時」で知られる。１４年の航空機撃墜事件を背景に、ロシア国境近くの住民が親露派と反露派で分断される物語は、その後の軍事侵略を予見していると話題になった。ゴルバチ監督は「日常が脅かされている。理解しきれない、何か大きな出来事への恐れを映画制作の形で探求している」と述べた。 　紛争と気候危機による政情不安が続くソマリア出身で、オーストリアを拠点に活動するモ・ハラウェ監督は「映画制作は人生や原点を語り、母国との関係を再構築するセラピーのようなもの」と語った。 　すでに一定の実績のある監督に対し、短編の制作を支援するのが特徴だ。昨年のカンヌで特別賞を受賞した「聖なるイチジクの種」のモハマド・ラスロフ監督も対象者に含む。イラン出身のラスロフ監督は過去の作品が国の安全保障を脅かしたとして禁錮刑を受けた後、国外に脱出している。 　同基金は避難民への関心を高めるために、作品を映画界のメインストリームに乗せることも念頭に置く。ブランシェットは「才能のショーケースである映画祭は問題を議論するのにふさわしい場。作品を世界に送り出す足場を作るため、多くの支援を期待している」と語った。完成作は来年のロッテルダム国際映画祭でプレミア上映される予定。