敗戦の弁に立つ政治家は一身で責を負い、ついてきてくれた仲間や支援者に謝意を述べるものだ。だが「再生の道」代表の石丸伸二氏は違った。厳しい結果を突きつけられても、絶対に自分の非を認めない。挙句、「報道が悪い」とメディアに責任を押し付け、記者に“説教”まで始めたのである。 *** 【写真を見る】「どう始末してやろう」 “意地悪な笑顔”を浮かべて亡くなった市議を踏みにじる「石丸伸二氏」 余裕の笑みを携えて登場 都議会議員選挙の開票日夜9時からスタートした記者会見。議席獲得が厳しいという各社の予想が出揃う中、石丸氏は余裕の笑みを携えて現れた。 「今は結果を待つという時間なんで、正直なところリアクションの取りようがなく、 皆さんに何を聞かれるのか少し心配というか… 。 何を聞いていただいても構わないので皆さんに期待をしている次第です」 石丸伸二氏 こう短く挨拶を終え、すぐに質疑に入った。 まず国民の意識を変えられた実感はあるかと問われ、こう答えた。 「国民の意識が変わると言うのはそんなに簡単なことではないと依然として捉えています。ただ、少しずつでも確実に変化してきているな、という受け止め方です。それはどこに感じるかというと、マスメディアの皆さんの報道に現れている、と。団体としてのポリシーをそれぞれの立場で可能な限り国民に伝えてくださったのかな、と。それをもって国民の意識はきっと変化してきているだろうと思っています」 絶対に負けを認めない頑強さ 1年前の都知事選では大旋風を巻き起こしたが今回は、と聞かれると、 「昨年の都知事選で旋風と言われるのは、聞いていてこそばゆいと感じています。選挙では起こりうる現象の一つに過ぎないと自分では捉えています。その上で今回の都議選。1年前の都知事選からの流れで、旋風というとあれですが、とても大きなものが手に入った。それをうまく使おうというのが出発点で、選挙に向かうまで公募で1128人集めた。その時点でしっかり使えたなと思った。そこから先は今回で言うと42人それぞれの選挙区で活動する。これまでにない動きが生じたんだとは思っています」 今後も同様のやり方で地方選挙を戦うつもりはあるのか、という問いには、 「1月の会見ではっきり私は説明をしました。目的は広く国民の政治参加を促す。目標は都議選に候補者を擁立する、と言っているんです。きちんと手が届く範囲で目標、目的を定めて、それを確実に実施、実行してきています。その意味で、すでに再生の道としての機能を確認できたと思っています。ですので、これから先、他の選挙でも同じことが展開できると自信は持っているところではあります」 どうやら石丸氏は負けを認めたくないようだ。ここまでは記者たちの聞き方に遠慮があった。日経の記者が再生の道が党としての公約を掲げなかった点について「都民が求めていたのは具体策だったとは思わないか」と鋭い質問を投げると、スイッチが入った。 とことんメディアに責任を押し付ける 「難しい質問ですね。そう思わせている節があると思います。マスメディアの報道を中心に。そう思われませんか? 皆さんが報じているんですよ、物価高の対策どうするのって」 と逆に記者を詰め出した。石丸氏はその前の質問で、物価高対策について「都がやるには限界。インフレに対して減税で対応するのは危うい」と批判的に述べていた。日経記者が「私は(候補者の掲げる政策が)横並びになってしまって、議論が深まっていないんじゃないかと考えながら記事を書いてきました」と返すと、 「だとすると、見分けがつかないから甲乙つけられなくて選べない、という投票行動になるんじゃないですか。でも、そうなっていませんよね。ということはほとんどの有権者がそこが見れていないんですよ。なんとなくのイメージで国政政党の色で投票する。今に始まった話でなくこれまでのほとんどの地方選挙はそうで、皆さんがクラシカルに報道される通り、国政の縮小版だと国民の多くが誤解してしまっている」 「本当はそんなところから学校ではないので教える必要がない。教えたくないのですが、誰かが言い始めないと永遠に気づけない、メディアの方がもっと前から地方政治はかくあるべき、地方議会とはどういうものかと国民にしっかり理解させていたら再生の道はそもそも必要なかったんです」 「見返しなさい」と読売記者を叱りつけた なぜ俺たちのせいにされるのか…。話を聞いていた記者たちのほとんどがそう思っていたであろう。読売記者が代弁して切り込んだ。 ——現時点では擁立した候補者の大半が難しいという情勢が報じられていますが、この点は率直にどう思われますか。 「そうなんですね、という感想です」 ——そうなんですか、というのはどういうお気持ちですか。 「昨年も同じことを言ったんですが、都民の意識が可視化されるのが選挙なんで、そうなんだというふうに私も初めて知った。やってみないとわからないからやるんですね。なので、そうなんだと知ったという状態です。知ることに対して感想は必ずついて回るものではないと思うんですが、いかがでしょうか」 ——ご自身が擁立された候補者の大半が当選が難しいと報じられていることについて、擁立した立場としてはどのように感じているかとお伺いしているのですが…。 「これは前の方の記者会見で言ったんですが、当然ですが全員の当選を願っていますし、それを目指した。通れば嬉しいし通らなかったら悲しいです。それ以外の感想って生まれるものなんですか? あえて言えば。それはあくまで候補者側の目線でしかなくて、今のはそう聞かれたから返したまでです。党の代表としてははなからそういうものではないと、去年の都知事選から言っているんです。今回は都議選においても同様です。通じました?」 読売記者は引き下がらなかった。 ——もう少しわかりやすい言葉で説明していただいてもいいですか。 「じゃあ、ダイレクトに返しましょう。そんなところに党の代表としてこだわっていないんです。よろしいですか。先ほど言いました。1月の記者会見で目標として都議選に候補者を擁立するとしっかり書いてあるんです。見返しなさい」 生徒を叱りつけるような口調だった。そしてこう続けた。 「その観点で言えば党としての目標はしっかり叶えているんです。その後の選挙においてはやっている方の立場の感想は先ほど申し上げました。しかしながら、党の代表として今の現状をどう評価するかについては今申し上げた通りです」 ここで読売記者は「わかりました、ありがとうございます」と言って質問をやめた。すると石丸氏は不適な笑みを浮かべ、 「なんか少しあきらめられた感じ。もう少し粘っていただいても大丈夫ですよ」 この底知れぬ自信はいつまで持つのだろうか。 デイリー新潮編集部