億万長者と再婚せず「地に足のついた生活」を選択したドイツ人シングルマザー…彼女から学べる「自立した女性」のすばらしさ

おしゃれに老いる、素敵に老いる、小さくて快適な暮らしのための、スッキリする断捨離。ところでお金は? 住まいは? 親の介護は? お墓はどうしよう? 日本でしばしば話題になる「老い支度」だが、ドイツ人はどうしているのか? 合理的で節約を重んじているのか? 親子関係はどのようなものだろう? 日本とドイツにルーツを持つサンドラ・ヘフェリンが、実際のインタビューをもとに綴る実用エッセイ、 『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』 より、一部を抜粋・編集してお届けする。 『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』 連載第24回 『「やっと手に入れた自由」…「カップル社会」を生きてきたドイツ人女性が離婚して手に入れた“おひとり様”生活』より続く。 93歳の母の「ルーティーン」と億万長者との結婚未遂 ベアーテさんが前向きで活動的なのは、どうやら母親譲りのようです。93歳になる母親は、早くに夫を亡くした後、一人で5人の子どもを育て上げました。家政学を学んだ彼女は、長年、知的障害をもつ子どもたちの施設で働き、食事や入浴などのケアをしてきました。収入は少なく、亡くなった夫の遺族年金と合わせて、5人の子どもたちをどうにか食べさせる生活でした。 定年後は地元の市議会議員になり、CDU〔註:Christlich Demokratische Union     Deutschlandsの略。ドイツキリスト教民主同盟。1945年に結成されたドイツの中道右派政党〕という政党のシニア部で活動してきました。特に東西を隔てていたベルリンの壁が壊れた後、母親は頻繁に東ドイツを訪れ、現地の人のためのイベントを楽しそうに手伝っていたといいます。 「母は誰かをケアしたり、誰かの言葉を伝えることが生きがいなの。今もマンションの住民の要望をまとめて管理会社に伝える、なんて流れが出来上がっているほどよ」 記憶すること、伝えること、交渉も含めて「しゃべること」が今も得意で、物忘れも今のところ、ないようです。そんな母親のルーティーンは毎晩8時からARD(ドイツ公共放送連盟)のニュースを見ることです。 「この時間帯には絶対に電話してはいけないの。間違ってかけたりしたら『今は忙しい』と切られてしまう。母にとっては世の中で何が起きているか、世界情勢の勉強の時間」 子ども時代は決して豊かではなかったベアーテさん一家。でも、ベアーテさんは「うふふ」と笑いながら、こんなエピソードを教えてくれました。 「私が8歳の頃に父が亡くなったでしょ。なんと母は一時期、億万長者とデートしてたの。それを聞きつけた私たちきょうだい5人はみんな『ママ、あの億万長者と結婚して!』と頼んだのを覚えている。全員、本当に応援していたもの」 ところが母親は億万長者とは結婚せず、一人で子どもを育てていくことを決めました。 「今でも母の決断を、私たちは残念がってるの。きょうだいで顔を合わせるたびに、『あの時は、惜しかったよねー』と盛り上がるのよ!」 母親は地に足のついた堅実な生活を選んだのです。自分の足で、一人で歩く道を。 家族に「どっぷり」浸からない みんな自立していて、互いに良い関係を保つ。ベアーテさんは子どもたちからもその配偶者からも頼られる存在ですが、彼女は「家族」というものにどっぷり浸かるのではなく、常に好奇心旺盛で、一人を楽しみ、60代で日本でホームステイまでしてしまう。 ベアーテさんの話を聞いていると、良い意味で上昇志向が強く、私は同じ女性として気持ちがいいのです。家が貧しくおしゃれな服が買えなかった10代の頃、懸命にアルバイトをして好きな服を買ったこと。「野馬は有名だけど、それ以外は何もなかった」という地元を17歳で離れ、一人でベルリンの大学へ行ったこと。教授になりながらも公務員という地に足のついた道を選び、結婚、子育て、離婚を経験したこと……。 どれも彼女の自立心と、「もっと良くなりたい」という選択の結果であり、「欲しいもの」を自分で手に入れることで築かれたのがベアーテさんの人生なのでしょう。 インタビューは日本で行いました。ドイツにいるお母さんへのお土産には、ユニクロのヒートテックの肌着を買ったのだそう。 話が終わってから一緒に散歩をしたのですが「あら、いつもは8000歩が目標なのに、今日はもう2万歩を超えているわ」とアップルウオッチを見ながらさっそうと歩いていくベアーテさんの足取りは、驚くほど速いのでした。 気取らず生きるコツ �「△△歳だから」と考えずに「今やりたいこと」をする �「人に合わせる」のをやめて「自分のペース」で歩く 『「夫がトイレまでついてきて困る」…「友情のケア」を怠ったドイツ人男性の悲惨な老後の姿』へ続く。 【つづきを読む】「夫がトイレまでついてきて困る」…「友情のケア」を怠ったドイツ人男性の悲惨な老後の姿

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