収入も貯蓄も十分あって、さらには「お得な情報」をすべて実践する30代夫婦。お金のプロから見ても完璧に近いのに、本人たちはなぜか顔色が冴えません……。原因は一体どこにあるのか? 1級ファイナンシャル・プランニング技能士で、『一度始めたらどんどん貯まる 夫婦貯金 年150万円の法則』著者・磯山裕樹さんが事例をもとに解説します。 お得な情報はすべて実践、なにも言うことがない夫婦 先日、30代のご夫婦がご相談に来られ、ご主人がおっしゃいました。 「収入もそこそこあり、家計もきちんと管理して貯蓄もできているのに、なぜかいつも幸せだと思えることが少なく、日々に満足できません」 ・今回登場する夫婦の家族と家計 家族構成:30代ご夫婦と小学生の子ども2人 収入:ご主人600万円(会社員) 奥さま400万円(会社員) 貯蓄額:2500万円 ご主人、奥さまともにYouTube、ブログ、本などからお金の情報を調べて実践されています。必要な保障を見極めた保険、格安シムの携帯、NISAを活用した資産運用、iDeCoやふるさと納税での税金対策、ポイ活など、できることはなんでも実践されています。家族旅行や子どもの習い事にお金をかけても、貯蓄が毎年できており、ほとんどなにも言うことがない家計状況でした。 なかでもびっくりしたのが、会社の福利厚生制度をフル活用していたことです。ご主人のお勤めの会社は大企業だったため、福利厚生制度が充実していました。 ・健康保険の上乗せの保障がある会社独自の「付加給付」の内容を確認して、足りない部分を会社の団体保険で補う。 ・自動車保険も会社の団体保険を奥さまの車にも適用させ、割安に加入している。 ・確定拠出年金のマッチング拠出も最大限活用している。 ここまで徹底して調べて実践している夫婦は初めてでした。 すばらしい家計なのに、幸せそうに見えない すばらしい家計状況にもかかわらず、夫婦の表情は疲れている様子でした。私はこのご夫婦を見て、昔の私を思い出しました。 私もこの仕事を始めたとき、同じ状況に陥りました。 「もっと良い情報があるのではないか?」 「お得な情報を見逃したくない」 やればやるほどお金が貯まっていくので、いつもお金のことが頭の片隅にある状況です。 お金に関する本、ブログ、YouTubeを見る、お金の講演を聞きにいくなど、お金に関する学びを徹底的に追求し続けていました。子どもと遊んでいるときも、もっといい情報がないかと考えをめぐらせ、ちょっとした空き時間も携帯で情報収集をしていました。見たところでなにも変わらない家計簿アプリをいつの間にか開いていました。SNSを見て、幸せそうに生活をしている家族と自分の生活を比較し、もっと頑張らないといけないと思い込んでいました。 家計は大丈夫なのに、なぜか疲れている、幸せな感じがしなかったのです。その原因は、いつも「将来」のお金のことばかりを考え、「今」を楽しめていなかったからだと気づきました。 私は、自身の実体験をお話ししながら、私自身がこの状況を抜け出せた方法をお伝えしました。それは、「携帯を見ないようにする」ことです。今の生活に携帯は欠かせないものになっています。携帯一つあれば、情報収集できる、友人の状況も分かる、家計の状況も確認できる。たいていのことはできます。しかし、携帯のなかに幸せはありません。 「携帯を見ないようにする」ことは簡単なようで難しいです。そのため、携帯を見ないようにする「我慢」で頑張るのではなく、携帯を見ないようにする「仕組み」作りこそ大事なのです。 ご夫婦にお伝えした、携帯を見ないようにする具体的な「仕組み」については、つづく記事〈世帯年収1000万円、貯蓄2500万円「お得な情報」に振り回されている夫婦が「スマホ断ち」した意外な結果【FPが解説】〉でお伝えします。 【つづきを読む】世帯年収1000万円、貯蓄2500万円「お得な情報」に振り回されている夫婦が「スマホ断ち」した意外な結果【FPが解説】